国際戦略研究所(IISS)の研究員であるHenry BoydとBastian Giegerichは、8月13日に発表した論説「 欧州における米軍のプレゼンス:世界的な成功のための態勢は地域の絆を危険に晒す(US military presence in Europe: posturing for global success, risking regional ties) 」で在ドイツ米軍の兵力削減が決定されたことの影響を考察しています。 Henry Boyd and Bastian Giegerich, US military presence in Europe: posturing for global success, risking regional ties, Military Balance Blog, IISS, 2020/8/13 7月29日、米国はドイツに駐留する米軍の兵力を削減する計画を承認したことを発表したのですが、著者らはドナルド・トランプ大統領とマーク・エスパー国防長官とでその計画を承認した理由がまったく異なっていることを指摘しています。 トランプ大統領はこの米軍の兵力削減を一種の制裁として説明しており、ドイツが国防予算を低水準に抑制していることを罰するためだとしています。しかし、エスパー国防長官はこれが戦略的に必要な措置であるとしています。このような混乱したメッセージを出すことは、欧州における米国への信用を損ね、同盟を危険に晒すことに繋がると述べられています。 基本的に米国の国家安全保障の専門家や実務家は、エスパー国防長官の説明を採用しています。例えば、欧州地域を担当する 欧州軍(EUCOM) の指揮をとる司令官トッド・ウォルターズ空軍大将の説明によれば、ロシアに対する抑止力を確保する上で必要な兵力は残しておきつつも、米軍の兵力態勢を世界規模で見直すことが軍事的に必要だったため、今回の削減計画の決定に至ったとされています。 さらに国家安全保障担当大統領補佐官のロバート・オブライエンは6月の時点で中国に対抗するための兵力を確保するために、このような計画が必要だったとはっきり述べています。どのような理由であれ、これが北大西洋条約機構の能力を低下させる恐れがあることは否定できないでしょう。著者らが懸念しているのは、その影響がどのように...
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