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学説紹介 黒海でNATOはロシアに劣勢である:ルーマニアとブルガリアの海上戦力の限界

現在、米国は北大西洋条約機構(NATO)の加盟国を率い、ロシアの勢力に対抗しようとしていますが、それを妨げている要因が二つあります。
一つは加盟国の戦略上の意図がそれぞれ異なっていることによるNATOの結束力の問題であり、もう一つはNATOの能力に地域や分野によって偏りがあることです。

今回は、NATOの加盟国でも特にルーマニアとブルガリアの海上戦力について調査した研究成果の一部を紹介します。

黒海方面でロシアの勢力がNATOを脅かしている

ロシアにとって黒海の海上優勢を獲得することは、東地中海へのアクセスを確保することに寄与する。ルーマニア、ブルガリアはいずれも2004年にNATOに加盟しており、トルコも1952年にNATOに加盟している。しかし、近年のトルコの外交はロシアに接近する姿勢をとっており、米国の懸念材料になっている。
2014年に勃発したウクライナ紛争以降、黒海におけるロシアの勢力は大幅に拡大しました。

この紛争でロシアがクリミア半島を実効支配下に置いたことの影響は特に大きく、ロシア軍がここに地対艦ミサイルを配備したことによって、ロシア軍は黒海のおよそ3分の1の海域を勢力圏に組み入れたという報告もあります(Young 2019: 24)。
さらにロシアは黒海艦隊を増強しており、キロ級潜水艦6隻、アドミラル・グリゴロヴィチ級フリゲート6隻を配備しています(Ibid.)。

一方、NATOの加盟国であり、かつ黒海の沿岸部を領有するルーマニア、ブルガリアはこれらの勢力に対抗する能力が欠けています。
まず、ルーマニア軍とブルガリア軍はいずれも潜水艦を運用できておらず、また対潜哨戒機も不足しています(Ibid.)。

したがって、この地域でNATOが優位になるためには域外から海上戦力を来援させなければなりません。
ところが1936年に締結されたモントルー条約(Montreux Convention Regarding the Regime of the Straits)でボスポラス海峡からダーダネルス海峡にかけて軍艦の航行が制限されているため、米国が展開できる海上部隊は限定されます(Ibid.)。

結局、NATOが黒海における海上優勢を回復しようとするのであれば、ルーマニア海軍とブルガリア海軍を増強しなければなりません。

ルーマニア海軍とブルガリア海軍の能力と課題

米国の位置から見て黒海は最も遠くに位置するだけでなく、ロシアの勢力下にあって接近しにくい海域である。米国がロシアに対してバランシングを仕掛ける場合、黒海に面するブルガリアとルーマニアは能力の面で協力できない可能性があることを著者は指摘している。
冷戦が終結してから、ルーマニアは西側からの軍事的援助を受けて海軍の近代化に取り組んできました。
2004年にNATOに加盟したルーマニアがイギリスから2隻の22型フリゲートを調達したことは、黒海の軍事バランスを変える可能性を持っていましたが、このフリゲートには対艦ミサイルや対空ミサイルが搭載されておらず、見せかけの戦力にすぎませんでした(Ibid.: 25)。

2016年にルーマニア政府はこの22型フリゲートの近代化改修を宣言しましたが、これを実施するための予算を確保することは難しい状況です(Ibid.: 26)。
そのため、現在のルーマニア海軍は別の手段で洋上監視の能力を強化することに取り組んでおり、2018年に国防大臣は2018年から2024年までに3隻の潜水艦と4隻の水上艦艇を整備する計画を明らかにしています(Ibid.)。

ブルガリア海軍の能力も依然として貧弱な状態にあります。ブルガリア海軍は2005年から近代化に着手し、数次に分けて艦艇の整備に取り組んできました(Ibid.)。
最初の一歩としてベルギー海軍のウィーリンゲン級フリゲートを調達し、これを2008年に2隻に増やしました(Ibid.)。2009年にはついに3隻体制を確立します(Ibid.)。

資料の上でブルガリア海軍のこれらフリゲートには対空ミサイルであるRIM-7シースパロー、対艦ミサイルMM-38が搭載されていますが、これらの武装はあまりにも高価であるために、ブルガリア海軍はめったにこれらの性能を試すための訓練を行っていないことが問題点として指摘されています(Ibid.)。

全体としてみれば、ブルガリア海軍の整備計画は艦艇を揃えることだけを考慮したもので、実質的な戦闘力の発揮が軽視されていると言わざるを得ません(Ibid.: 27)。
ブルガリア海軍の戦闘力の低さについては、2011年にリビアでの作戦に参加するため国防総省が現地に戦力を派遣しようとしたが、たった1隻を展開するために2週間もかかる有様でした(Ibid.)。

むすびにかえて

ロシアの脅威への対応は必ずしも十分な状況ではなく、特に海上防衛力の分野におけるルーマニアとブルガリアの体制は不十分です。
両国の海上戦力の近代化が急がれる局面ですが、いずれも経済的能力が限られており、外部からの援助がなければ海軍の増強は難しいでしょう。

NATOにとってこの地域の軍事情勢は非常に厳しいものだと言わなければなりません。
しかし、ロシアの影響力がさらに広がってトルコ、ギリシャにまで及ぶことを防ぐには、それが局地的なものであったとしても、ブルガリア、ルーマニアに海上優勢を獲得させる必要があるでしょう。

KT

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参考文献

  • Thomas-Durell Young, 2019. NATO's Selective Sea Blindness: Assessing the Alliance's New Navies, Naval War College Review, Vol. 72, No. 3, pp. 13-28.