最近人気の記事

2016年1月21日木曜日

いかに自爆攻撃は行われるか

つい最近、イスタンブールやジャカルタで自爆攻撃があったことが報道されたのを機会に、改めて自爆攻撃の威力とその恐ろしさが認識されています。
自爆攻撃(suicide attack)とは攻撃者にとって攻撃それ自体が死を意味するためにそう呼ばれていますが、攻撃者が爆弾を爆発地点にまで運搬し、可能な限り多数の損害を与えるか、もしくは特定の対象を暗殺するために実施される攻撃方法です。

今回は、この自爆攻撃の実施要領とその対処法について米陸軍の教範に基づいて説明し、それがいかに実施されるのかを理解する一助にしたいと思います。

自爆攻撃の目標
まず、戦術としての自爆攻撃の特徴はその単純性であり、攻撃の完了と同時に退却する必要もなく、またその実施に当たって部隊の行動や訓練を必要としません。
米軍の教範によれば、自爆攻撃で唯一必要なことは、その兵士が攻撃の際に不安を感じることなく自爆できるように行動することです(FM 3-21.10: G-10)。
米軍で紹介されている自爆攻撃に使用する爆弾の一例。
体の前に装着するもの以外にも背負って装着する形態もあるため形は一様ではない。
これまでの研究によれば、自爆攻撃の対象とされやすい目標には非常に多くの種類があります。
一般的に想定される攻撃目標としては、部隊、車両、基地、警衛、斥候、連絡要員、軍隊に協力的な住民、在外公館や国際機関の人員、車両、施設、政府の要人、市場や店舗などの民間人などが挙げられます(Ibid.)。
したがって、不特定多数の人間が接近し得る場所はすべて潜在的な自爆攻撃の目標となり得ることになります。

人体に爆弾を固定した自爆攻撃者の特徴
自爆攻撃の手口には大きく分けて人体に爆弾を固定する方法と車両に爆弾を搭載する方法がありますが、ここでは前者の方法に絞って説明します。
前者の方法による自爆攻撃は性別、年齢を問わず誰であっても実施することができるという点が重要です。児童、老人、少女など一般に警戒されにくい人間によって実施されることが少なくありません。自爆攻撃の危険を事前に察知することは非常に難しいことではありますが、以下の特徴によって識別できる場合もあると教範では述べられています。

・攻撃者は攻撃目標の環境に溶け込もうとし、目立つ行動で注目を集めないように配慮する。
・攻撃者は努めて普通で平凡な服装を着用しているか、サイズが大きく服装を着用しており、不自然に重いコートやジャケットを着用する場合もある。
・攻撃者は公衆の面前で祈りを捧げる行動をとることにより、信仰心を見せることがある。
・攻撃者がアラブ人の男性の場合、頭髪や髭をきれいに剃っている場合がある。
・攻撃者はその行動が神経質となり、本能的に周囲をよく警戒する。
・手荷物をしっかりと持ち運び、体から離そうとせず、抱きこむようにしている場合もある(Ibid.: G-11)。

自爆攻撃の要領とその対策の限界
残念ながら、自爆攻撃を完璧に封じ込める確実な方法というものは編み出されていません。
警戒に当たる兵士や警察官は、自爆攻撃者とおぼしき人物の行動に対しては即座に対応する必要が出てきます。
米軍の教範によれば、自爆攻撃者と見られる不審者が突然こちらに走り出し、警告に従わないならば直ちに射殺して自爆を阻止するという対応要領になります。
また、射殺に成功して爆発を防止できたと思っても、その人物が持つ爆弾が時限式や遠隔操作の起爆装置を備えつけられており、時差で爆発させる場合があります。これも現場に応援で駆けつけた部隊や爆弾処理班を確実に殺害することを狙った自爆攻撃の一種です(Ibid.)。
一般市民を目標とする場合、自爆攻撃者を一般市民が発見できたとしても、それに独力で対応することは極めて困難なのが実情です。ある集会所や公共施設に自爆攻撃者を複数名投入し、群衆を可能な限り多く巻き込むという場合もあるためです。

結局のところ、自爆攻撃者の脅威に対しては不特定多数の人間が接近できないように障害を構成し、手荷物の検査や車両、人員の移動を監視し、安全地域を設定することが基本となります。アメリカ軍では進入禁止の地域には地雷を敷設し、さらに道路上に検問を置くことによって、自爆攻撃者が接近できないようにしています(Ibid.: 15-6)。しかし、これは市民が密集する場所に対する自爆攻撃を防ぐものではないのです。

まとめとして
自爆攻撃それ自体を完全に封じ込める手段は存在しませんが、自爆攻撃のプロフェッショナルというものも存在しません。自爆攻撃者には特徴的な行動が見られ、それを隠匿することは決して簡単なことではありません。
自爆攻撃が常套手段となってしまっている現代においては、このような脅威が存在することを前提にした上で、情報収集、武器取締、出入国管理、雑踏警備などの対策を組み合わせた包括的措置が強化されるべきだと思います。現場で警戒に当たる兵士や警察官の能力、装備、権限についても抜本的に検討することが重要だと思います。

KT

参考文献
U.S. Department of the Army. 2006. Field Manual 3-21.10: The Infantry Rifle Company, Washington, D.C.: U.S. Department of the Army.

0 件のコメント:

コメントを投稿