スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

ラベル(海運)が付いた投稿を表示しています

学説紹介 中国に対するアメリカの遠距離海上封鎖:戦略上の実現性を考える

アメリカ軍の立場から中国軍への対応を考えた場合、海上封鎖は有力な案の一つだと考えられています。海上封鎖であれば、中国本土を攻撃することで戦争がエスカレートする危険を抑制しつつ、経済的打撃を与えることが可能だからです。 海上封鎖といっても、沿岸部に接近して実施する方法や、距離を置いて実施する方法があります。今回は沿岸部から距離を保って実施する遠距離の海上封鎖の実現性を考えるため、研究者のフリードバーグ(Aaron L. Friedberg)の議論を紹介してみたいと思います。 遠距離海上封鎖の成否は外交に強く依存する フリードバーグは中国に対してアメリカが遠距離海上封鎖を実行する場合、南シナ海とインド洋を結ぶチョークポイントが焦点になると指摘しています。 「遠距離海上封鎖の最もシンプルなバリエーションでは、南シナ海の南玄関であるマラッカ海峡、もしくはその東方のインドネシア群島を抜けるロンボク海峡、またはスンダ海峡において、大型タンカーを停船、拿捕し、行先変更させることが焦点となるだろう」(邦訳、フリードバーグ、138頁) これほど広範囲にわたってチョークポイントを封鎖するためには、周辺の同盟国・友好国との連携が欠かせません。 フリードバーグは連携の相手として日本、オーストラリア、フィリピンの国名を挙げており、またシンガポールとインドネシアと共同で作戦を遂行する可能性も示唆しています(同上、198頁)。 ただ、アメリカの戦略に協力しない国が出てくれば、その国が封鎖の抜け穴になる危険があることも考慮しなければなりません。チョークポイントで船舶を臨検し、最終仕向地が中国でないと特定できても、中立国の港湾で中国へ向かう船舶に積み替えれば、封鎖を破って中国へ積荷を運び入れる可能性があります(同上、141頁)。 遠距離海上封鎖で同盟国の不安を払拭できるか 遠距離海上封鎖を実行する場合に予想されるもう一つの問題があります。それは遠距離海上封鎖によって、アメリカの軍事力に依存する東アジアの同盟国・友好国の安全保障が損なわれる可能性があるという問題です。 「遠距離海上封鎖は海洋安全保障の強化に関する議論の衣をまとうことで、軍の態勢変更を伴わずに準備でき、あるいは中国本土攻撃のための計画へあからさまな参加を求められることもないので、このような...

学説紹介 マハンが語る植民地建設の戦略的理由:ケープタウン、セントヘレナ島、モーリシャスの事例から

歴史上、海洋国家と呼ばれる勢力は植民地を確保することに多大な努力を払ってきました。ポルトガル、スペイン、オランダ、フランス、イギリスなどの国々は、いずれも海洋に勢力を拡大するにつれて海外に植民地を獲得してきた歴史があります。 一般的にそうした植民地は経済的利潤のために建設されたと考えられていますが、時として本国とほとんど往来することができないほど遠くの産業的価値が乏しい小さな島嶼にさえ植民地が建設された事例もあります。 アメリカの海軍軍人、著述家の アルフレッド・セイヤー・マハン (Alfred T. Mahan)は、海軍戦略に関する著作を数多く残した人物であり、植民地の意義を軍事的に考察したことでも知られています。今回は彼の海軍戦略の学説を踏まえ、植民地が戦略の観点からどのような機能を果たしているのかを説明してみたいと思います。 「通商は安全な海港に依存する」 アルフレッド・セイヤー・マハン、米国の軍人、著述家、歴史家。『海上権力史論』をはじめ、海軍戦略に関する著作を多数執筆している。 マハンの戦略思想の特徴は、海軍それ自体を独立した組織として考えるのではなく、海洋産業、特に海運と不可分の関係にある組織と見なす点にあります。この立場は「狭義の海軍は、商船が存在してはじめてその必要が生じ、商船の消滅とともに海軍も消滅する」という言葉でよく示されています(マハン、43頁)。 もちろん、侵略的政策をとる国が純粋に軍事上の必要のためだけに艦隊を建設する可能性はあることをマハンは認めていますが、基本的に海軍の艦艇は船舶を保護することが目的としており、そのことによって海上交通路を確保するのです(同上)。 つまり、海軍の戦略は、その国の商船がどの航路を往来しているかによって左右されてきます。もし内航船ばかりなら、海軍の任務や活動すべき範囲もそれに応じて縮小しますが、外国との海上貿易が増加し、外航船を保護する必要が出てくると、海軍もまた外洋に進出せざるを得なくなります。ここで港湾が必要となってきます。 「商船や軍艦が自国の海岸から外に出ていくようになると、やがて平和な通商や避難、補給のために、艦船が頼ることのできる地点が必要だと感ずるようになる。今日では、外国の港ではあっても友好的な港は世界中いたるところにある。また平和が続く間はそれらの港...