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論文紹介 米国はアフリカにおける中国の勢力に対抗し始めた

2008年に統合軍の一つとしてアフリカ軍(AFRICOM)を設置して以来、米軍は10年以上にわたってアフリカ諸国の開発や安全保障の問題に関心を寄せてきました。 今回は、アフリカでも特にサハラ以南のアフリカ諸国において米中関係が注目されていることを取り上げ、アフリカ軍の今後の任務を展望した研究を紹介したいと思います。 論文情報 William Robert Hawkins and Brenda Jeannette Ponsford, U.S. Africa Command and Its Changing Strategic Environment,  Joint Force Quarterly , Vol. 93, No. 2(79-86), pp. 79-86. アフリカにおける中国の勢力は着実に拡大しつつある 中国の政策や戦略は、アジア太平洋の情勢との関連で理解される傾向がありますが、それは世界全体で見れば一部分でしかありません。 中国は以前からアフリカ諸国への接近を図っており、その影響力は米国のそれを上回る勢いを見せていることに注意を払うべきだと著者らは論じています。 冷戦終結後から米国はアフリカ諸国と貿易関係を拡大してきた歴史があり、2008年にはアフリカ軍が設置された際には、特に西岸諸国から多くの石油資源を輸入し、地域単位で見た貿易赤字は657億米ドルにまで膨らむほどでした。計上していました。 こうした貿易関係は2008年の米国での金融危機で一時的に減退する局面もありましたが、2011年の時点で米国向けの石油輸出の実績としてナイジェリアが289億米ドル、アンゴラは31億米ドル、チャドが31億米ドル、コンゴ民主共和国が4億3900万米ドルでした。 ところが、近年の米国ではエネルギーの国内供給を強化しており、次第に需要は先細り始めています。この状況に目を付けて動いているのが中国政府です。 習近平政権がアフリカ諸国に対して示す関心の程度は非常に高く、2018年3月に国家主席に再任してから間もなくセネガル、ルワンダ、南アフリカ、モーリシャスを訪問しています。 さらに2018年の中国・アフリカ協力フォーラム(FOCAC)の北京会議で開発の資金として600億ドルを投資することを約束するなど、習近平政権はその潤...

学説紹介 対立するインドと中国―カプランの地政学的考察―

近年において中国とインドの関係はますます複雑になっています。かつての中国の勢力とインドの勢力が競合する地域というのは、ヒマラヤ山脈をはじめとする山岳地帯に限定されていました。しかし、中国が海洋進出の動きを進めるにつれて、その活動領域をインド洋に拡張し、インドはそのことに安全保障上の懸念を抱いています。ここから情勢がどう展開するかが今後の検討課題となるでしょう。 今回は、ロバート・カプランによる地政学的分析を踏まえて、中印関係の今後の展開を考察してみたいと思います。 チベット問題をめぐる中印関係 チベット高原は、ヒマラヤ山脈とクンルン山脈に南北に挟まれた位置に広がる世界最大規模の高原である。インドの国境から最も近い位置にある中国の領土であるが、チベット人の抵抗運動が組織された際に、インドがチベット人の指導者の亡命を受け入れたこともある。 インドの国防を考えた場合、パキスタンが主要な脅威として認識されていることはよく知られています。パキスタンに比べれば、中国の脅威はインドにとってより曖昧なものであり、またヒマラヤ山脈によって両国の勢力圏が離隔されています。カプランもインドと中国の対抗意識は歴史的な裏付けを持たないと認めていますが、それでもチベット問題で対立した経緯があり、その影響を無視できないと述べています。 「インドが係争中のヒマラヤの国境をめぐって中国と限定戦争を行ったのは、半世紀ほど前のことになる。このとき戦場となったのは、標高4200メートルを超えるアルナーチャル・プラデーシュ州だった。2000人の兵士が死亡し744名が負傷した、この1962年の国境紛争戦争の発端となったのは、チベット動乱だった」(カプラン、287頁) ヒマラヤ山脈の北に広がるチベット高原は、世界最大級の広さを誇る高原です。古くから農耕や牧畜を営むチベット人が住んでおり、独自の文化、宗教を持っています。1950年に中国軍が進攻してきてから中国によって領有されましたが、チベット人の指導者の中には中国人の支配に抵抗する者も少なくありませんでした。 1959年に蜂起が起こると、中国軍は直ちに鎮圧に乗り出しましたが、チベット人の指導者であるダライ・ラマの身柄を確保することには失敗し、彼はインドに亡命しました(同上、287-8頁)。この政治亡命を受け入れたことから、...