2020年9月27日に発生したアゼルバイジャンとアルメニアのナゴルノ・カラバフ紛争については、現在進行中の事象であり、どのような結果に終わるのかを現時点で予測することは難しい状況です。
ここでは、国際戦略研究所(IISS)の刊行物である『ミリタリー・バランス』を参照し、アゼルバイジャン軍とアルメニア軍の能力に関するデータを簡単にまとめておきます。情勢判断の参考として頂ければと思います。
アゼルバイジャン(2019年~2020年)
- GDP:472億米ドル
- 一人当たりGDP:4689米ドル
- 成長率:2.7%
- インフレ率2.8%
- 国防予算17.9億米ドル
- 総人口10,128,225人
- 現役66,950人(陸軍56,850、海軍2,200、空軍7,900、準軍隊15,000)
- 予備役300,000人
- 戦車439両、歩兵戦闘車216両、装甲兵員輸送車568両
- 火砲598門
- 航空機36機(戦闘機15機、攻撃機21機を含む)
- 攻撃ヘリコプター26機を含む
- 無人機16機
外交・国防政策の総合評価
- アゼルバイジャン軍の主な任務はアルメニアとのナゴルノ・カラバフ紛争を見据えた領土防衛。
- アゼルバイジャンは北大西洋条約機構(NATO)との関係を重視し、2019年に個別パートナーシップ行動計画(Individual Partnership Action Plan)に参加。この計画はNATOと政治的関係を深めようとする国に対して提供されるプログラム。
- 防衛協力協定を発展させ、ベラルーシ、セルビア、英国、米国との接近関係を深める動きあり。ロシアとの防衛協力では、装備の調達と技術の支援を重視。
- 徴兵制を採用。即応態勢の完成度は部隊により異なる。多国間演習に参加実績があり、二国間訓練でトルコ軍と訓練を実施。
- アフガニスタンでNATOの支援任務に参加実績があるが、遠征の能力はほとんど皆無。
- ソ連時代に調達した装備の老朽化が問題となっており、空軍は整備能力に問題あり。
- 最近の調達実績ではロシア製の防空システム、火砲、装甲車などあり。
- 防衛産業能力は小規模だが成長中。主要な装備品は外国に依存しているが、海外市場への輸出を始める動きもあり。
ナゴルノ・カラバフ紛争で使用することが可能とされる戦力の規模や構成については情報源によってかなり幅があるようですが、200両から300両の戦車をはじめ、同程度の装甲車、火砲などを投入し、人員の規模としては18,000から20,000と推定されています。
これに対してアルメニアの国力諸元は以下の通りです。
- アルメニア(2019年~2020年)
- GDP:134億米ドル
- 一人当たりのGDP:4528米ドル
- 成長率:6%
- インフレ率:1.7%
- 国防予算:6億4400万米ドル
- 総人口:3,030,288人
- 現役:44,800人(陸軍41,850、空軍1,100、防空軍1,850)、準軍隊4,300人
- 予備役:推定210,000人
- 戦車109両、歩兵戦闘車231両、装甲兵員輸送車130両
- 火砲232門
- 短距離弾道ミサイル16基
- 攻撃機14、戦闘機なし
- 攻撃ヘリコプター7機
- 駐留外国軍:ロシア軍3,300人
外交・国防政策の総合評価
- アゼルバイジャンの脅威を受け、アルメニア軍の主要任務は領土防衛。
- 2018年から24年の計画で軍隊の近代化を開始、サイバー戦・情報戦の能力強化を図る。
- 旧ソ連の構成共和国が締結した集団安全保障条約(CSTO)
- に加盟。装備の調達、技術的な支援、人材育成でロシアと防衛協力関係を維持。軍事ドクトリンもロシアの影響が強い。
- 近年ではNATOの個別パートナーシップ行動計画にも取り組み、西側との関係も重視。
- 徴兵制が維持されてるものの、専門性を向上させる取り組みを辞し。アフガニスタン、コソボ、レバノンでNATO・国連の任務に参加し、経験を積む。
- CSTOの定期演習に参加。ロシアとの二国間訓練にも参加。
- 老朽化した航空機の整備が空軍では問題となっている。
- 国内で防衛装備品を開発する能力はある程度保有しているが、主要な装備はロシアに依存。
アゼルバイジャン軍とアルメニア軍が保有する装備の内訳などに関しては省略しています。詳細については『ミリタリー・バランス』を参照してください。
武内和人(Twitterアカウント)
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参考文献
- Chapter Five: Russia and Eurasia. (2020). The Military Balance, 120(1), 166–219.
