今日の陸軍の戦術の研究では、師団、旅団などの部隊の戦術だけでなく、より小規模な部隊の戦術も研究されるようになっています。
このような研究動向は海軍の戦術にもあり、海戦における戦術行動より小さな戦術行動が分析の対象になっています。
今回は、海軍の戦略・戦術の研究で世界的に知られたアメリカ海軍大学校の教授ミラン・ヴェゴ(Milan N. Vego)の著作を取り上げ、現代の海軍戦術を分析する上で基本となる4つの概念、攻撃、打撃、交戦、戦闘の意味の違いに関する彼の考察を紹介したいと思います。
それらの行動は複数の艦艇・航空機(以下、プラットフォーム)で実施される場合もあれば、完全に単独で実施される場合もあるため、これらを一つの枠組みで分析することには問題があります。
多種多様な海軍の戦術行動を分類整理するためには、戦闘(海戦)よりも小さな規模の戦術行動を区分することが必要であり、ヴェゴは攻撃、打撃、交戦、戦闘という4種類のカテゴリーを設けることを唱えています。
この攻撃という概念が次に述べる打撃を考える際にも基本となります。
ここで述べている打撃で想定されるのは彼我の海上部隊、航空部隊がミサイルで敵を攻撃する状況であり、その攻撃をどのような位置から、あるいはどのような時機に実施するかが重要な検討課題となります。
というのも、打撃と一言で言っても、そこにはさまざまなパターンが存在しており、長射程の攻撃を加えることで敵の防御を崩し、そのあとでより短射程の攻撃で目標を順次撃破していく打撃もあれば、奇襲効果を高めるために複数方向からの攻撃を同時に実施する打撃もある、と述べられています(Ibid.: 130)。
その議論によれば、交戦とは複数の攻撃と打撃を組み合わせた戦術行動として考えられており、それは特定の戦闘計画によらずに実施される可能性がある短期的な行動だと位置づけられています。
このことから、交戦は次に述べる戦闘を構成する要素であり、また戦闘の下位概念であることが分かります。
つまり、戦闘における海上部隊の戦術行動は、原則的には上位の作戦に従って計画的に進められるものと理解できるでしょう。
ただ、ヴェゴは状況によっては計画にはない戦術行動が求められる場合もあることを指摘しています(Ibid.)。
このように戦闘の範囲を述べているのは、敵部隊から奇襲を受けた場合や、不意に遭遇した場合の海戦を想定しているためでしょう。
このような概念的な区別を理解しておけば、その上位に位置付けられる交戦、戦闘における戦術行動を研究する際にも役に立つでしょうし、作戦レベル、戦略レベルの研究に進む際にも、それぞれの部隊行動をどのようなレベルで捉えるべきなのかを適切に判断できるでしょう。
ちなみに、今回の記事で取り上げたヴェゴは、海軍の方面で「作戦的思考(operational thinking)」の重要性を唱えたことで知られています。
彼が作戦レベルにおいて海上部隊の運用をどのように分析すべきと考えていたのかを知れば、さらに理解が深まると思います。
KT
このような研究動向は海軍の戦術にもあり、海戦における戦術行動より小さな戦術行動が分析の対象になっています。
今回は、海軍の戦略・戦術の研究で世界的に知られたアメリカ海軍大学校の教授ミラン・ヴェゴ(Milan N. Vego)の著作を取り上げ、現代の海軍戦術を分析する上で基本となる4つの概念、攻撃、打撃、交戦、戦闘の意味の違いに関する彼の考察を紹介したいと思います。
海軍戦術の基本となる攻撃(attack)の範囲
ヴェゴの説明によれば、海軍の戦術行動の範囲には敵と接触する前に実施する哨戒から戦闘に至るまで多岐に渡る行動が含まれます。それらの行動は複数の艦艇・航空機(以下、プラットフォーム)で実施される場合もあれば、完全に単独で実施される場合もあるため、これらを一つの枠組みで分析することには問題があります。
多種多様な海軍の戦術行動を分類整理するためには、戦闘(海戦)よりも小さな規模の戦術行動を区分することが必要であり、ヴェゴは攻撃、打撃、交戦、戦闘という4種類のカテゴリーを設けることを唱えています。
「海上部隊と航空部隊の戦術的運用に関する主な方式とは、攻撃(attack)、打撃(strike)、交戦(engagement)、戦闘(battle)である。
攻撃とは小規模な戦術的目標を達成するために、単一または複数のプラットフォームによって実施される戦術的な機動と射撃を組み合わせたものである。…(中略)…攻撃は水上艦艇、潜水艦、航空機によって発射されるミサイル、魚雷、ASW装備、爆弾などによって実施される。通常、交戦あるいは海戦の一部を構成しているが、独立して実施されることもあり得る」(Vego 2013: 129)ここで述べられている攻撃とは、使用するプラットフォームや武器の種類によって容易に分類できるような単純な戦術行動であり、分析で最も基礎的な単位になります。
この攻撃という概念が次に述べる打撃を考える際にも基本となります。
主要な戦術行動に位置付けられる打撃(strike)
4種類のカテゴリーの中でヴェゴが攻撃の上位に位置付けている戦術行動、あるいはそれを包括すると見なされている戦術行動が打撃です。ここで述べている打撃で想定されるのは彼我の海上部隊、航空部隊がミサイルで敵を攻撃する状況であり、その攻撃をどのような位置から、あるいはどのような時機に実施するかが重要な検討課題となります。
「打撃とは戦術的目標を達成するために海上部隊が用いる最も重要な方式だろう。それは対艦・巡航ミサイルと精密誘導兵器('smart' bombs)に代表される、射程の延伸、誘導の精密化、威力の向上によってもたらされてきた。海上打撃(naval strike)とは、戦術上の目標を達成するために、あるいは時として作戦上の目標を達成するために、時間的、空間的に同調しながら単一あるいは複数のプラットフォームにより実施される同時的、順序的攻撃によって構成される」(Ibid.: 129-30)ヴェゴの議論を詳しく調べると、彼が打撃を海軍戦術の中心的な問題として理解していたことが読み取れます。
というのも、打撃と一言で言っても、そこにはさまざまなパターンが存在しており、長射程の攻撃を加えることで敵の防御を崩し、そのあとでより短射程の攻撃で目標を順次撃破していく打撃もあれば、奇襲効果を高めるために複数方向からの攻撃を同時に実施する打撃もある、と述べられています(Ibid.: 130)。
交戦(engagement)と戦闘(battle)の範囲について
伝統的な海軍戦術で研究されてきのは、上述した攻撃や打撃よりも広範囲かつ大規模な戦術行動でしたが、ヴェゴの研究でも、それらが海軍戦術の研究対象として残されています。その議論によれば、交戦とは複数の攻撃と打撃を組み合わせた戦術行動として考えられており、それは特定の戦闘計画によらずに実施される可能性がある短期的な行動だと位置づけられています。
「交戦とは、単一あるいは複数の武装によって実施される相互に連携をとった打撃と攻撃から構成されており、通常であれば海戦において主要な戦術的目標を達成するために実施される。実務的観点から見て、交戦は敵部隊の主力を撃滅あるいは無力化するために立案される」(Ibid.: 131)著者はこの交戦に関する説明の補足として1回の海戦よりも長く継続しないと述べています(Ibid.)。
このことから、交戦は次に述べる戦闘を構成する要素であり、また戦闘の下位概念であることが分かります。
「戦闘(海戦)とは、複数の武装によって時間的、空間的同調が図られた相互に関連する交戦、打撃、攻撃から構成されるものであり、所定の作戦地域において大規模な戦術的目的(時としては作戦的目標)を達成するために実施される。通常、これは一人の司令官によって立案、準備、実施される」(Ibid.)この戦闘が海軍の戦術行動としては最大の単位であり、さらに上位にある作戦行動と直接関係を持っている概念です。
つまり、戦闘における海上部隊の戦術行動は、原則的には上位の作戦に従って計画的に進められるものと理解できるでしょう。
ただ、ヴェゴは状況によっては計画にはない戦術行動が求められる場合もあることを指摘しています(Ibid.)。
このように戦闘の範囲を述べているのは、敵部隊から奇襲を受けた場合や、不意に遭遇した場合の海戦を想定しているためでしょう。
むすびにかえて
現代の海軍戦術の基本概念についてヴェゴが述べた4つの概念を紹介してきましたが、海軍戦術の文脈で曖昧に使われることがある打撃や攻撃という用語の定義や他の概念との関連を明確にする点で意義があったと思います。このような概念的な区別を理解しておけば、その上位に位置付けられる交戦、戦闘における戦術行動を研究する際にも役に立つでしょうし、作戦レベル、戦略レベルの研究に進む際にも、それぞれの部隊行動をどのようなレベルで捉えるべきなのかを適切に判断できるでしょう。
ちなみに、今回の記事で取り上げたヴェゴは、海軍の方面で「作戦的思考(operational thinking)」の重要性を唱えたことで知られています。
彼が作戦レベルにおいて海上部隊の運用をどのように分析すべきと考えていたのかを知れば、さらに理解が深まると思います。
KT
参考文献
- Vego, Milan N. 2013(1999). Naval Strategy and Operations in Narrow Seas. London: Routledge.