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2015年11月13日金曜日

兵站システムから基地の機能を考える

基地の問題を考える際に私たちがまず思いつくのは、騒音の問題や近隣住民とのトラブル等かもしれません。
しかし、兵站学の立場から基地を考える場合には、その基地だけを取り上げることは適当ではありません。基地の価値は他の味方の基地の所在や、仮想敵国の部隊配備等によって変化するためです。

今回は、兵站の観点から基地の価値を分析する方法を説明するために、兵站システム(logistical system)という概念を紹介したいと思います。

兵站支援の概要
そもそも兵站の目的とは作戦部隊の戦闘力を維持増進するために必要な人員、武器、物資等を充足させることにあります。
このような目的のために使用される需品、整備、輸送、衛生等の職種の部隊は戦闘部隊と一般に区別され、兵站部隊と呼ばれます。

兵站システムとは、これら兵站部隊を有機的に組み合わせて運用するための組織のことであり、基本的には兵站基地(logistical base)と支援地域(support area)の二つ要素を組み合わせて構成されます。
非常に大雑把な整理をすると、兵站基地はより固定的な兵站支援の拠点であり、支援地域は作戦の進展に応じて所在が変更される流動的な兵站支援の拠点です。

しかし、兵站基地と支援地域もさらに細かく分類されます。

(1)兵站基地の分類
・中央兵站基地:国家的観点から生産、流通にとって重要な地域に設定される兵站基地であり、兵站システムの中枢を構成。
・方面兵站基地:方面隊(軍団レベル)がそれぞれの作戦地域において設けられる兵站基地。
・方面前進兵站基地:方面兵站基地の分派として状況の必要に応じても受けられる兵站基地。

(2)支援地域の分類
・前方支援地域:師団等を直接支援する方面隊の兵站部隊が展開する支援地域。
・師団段列:師団の人事・兵站に関する業務を遂行する部隊、機関の総称。
・部隊段列:連隊・大隊等において人事・兵站に関する業務を遂行する部隊、機関の総称。

戦略兵站・作戦兵站・戦術兵站の区分
順番に説明すると、中央兵站基地が全軍の兵站システムの中心として位置付けられます。
そこを起点として主要な戦略単位である軍団の作戦地域に置かれた兵站基地がそれぞれ設定されます。
一般に戦略兵站(strategic logistics)と呼ばれるのは、この中央兵站基地から方面兵站基地までの兵站です。
ただし、軍団の方面兵站基地をさらに前方に置くためには状況に応じて方面前進兵站基地を設定する場合もあります。

以上が兵站システムに占める戦略兵站の範囲となりますが、方面兵站基地からさらに戦闘地域に近づくと次は作戦兵站(operational logistics)の範囲となります。
作戦兵站で最も包括的な活動を行うのは方面兵站基地に置かれた軍団の兵站部隊であり、これは師団または旅団の行動を支援することを任務としています。

さらに戦闘地域に近づくと師団を構成する後方支援連隊等の師団段列が配置される支援地域が設定されます。これは戦闘地域と後方地域のちょうど中間付近に位置しており、この辺りまでが作戦兵站として呼ばれている範囲となります。

師団段列からさらに戦闘地域に前進すると、連隊、大隊ごとの段列が展開する支援地域が置かれます。この支援地域は最も戦場に近い場所に置かれることになるため、戦術上の要請によって絶えず移動を強いられます。
作戦兵站と戦術兵站(tactical logistics)の区別はあまり明確ではありませんが、戦術兵站は第一線に位置する兵士たちに人員、武器、糧食、弾薬、燃料、薬品を届ける最後の兵站であり、兵站システムの末端に当たります。

これをまとめると兵站システムは次のような概念図として表すことができます。
兵站システムの全体を著した概念図。
左から右に移ると後方地域(communication zone)から戦闘地域(combat zone)に接近する。
CONUS Baseが中央兵站基地、Theater Baseが方面基地を著す。
そこからさらに戦闘地域に進むと線で区切った個所で前方支援地域、師団段列、部隊段列が置かれる。
(457-8)より引用。
基地は兵站システムの要
このような兵站システムの特性を理解すれば、兵站における基地の役割は常に他の基地との相互関係の中で割り当てられるものであることが分かります。
もし部隊を展開させる予定の作戦地域の付近に兵站基地が存在していないならば、兵站基地と支援地域が遠くに引き離されるだけでなく、兵站基地を起点として展開可能な部隊の規模も制限されてきます。
このような兵站支援の限界は、その後の作戦行動において多大な影響を及ぼすことになります。

日本の安全保障にとって基地の問題は軍事的観点だけで論じきれるわけではありませんが、あらゆる軍事行動の起点となる基地がどのような兵站システムにおいても重要な役割を果たしていることについて理解を深める必要は繰り返し確認することが重要です。
戦闘部隊それ自体が戦闘力を生み出すわけではなく、兵站部隊との連携によってはじめて本来の戦闘力を発揮することが可能となるのです。

KT

参考文献
U.S. Department of Defense. 1997. Joint Doctrine Encyclopedia, Washington, D.C.: U.S. Governmental Printing Office.
真邉正行『防衛用語辞典』国書刊行会、2000年

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