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2015年10月10日土曜日

戦車小隊の隊形とその戦術的な特徴


陸上戦闘だけで考えるのであれば、戦車は最も強力な武器体系に位置付けられます。
戦車は戦闘で必要な火力、機動、防護という機能をバランスよく兼ね備えており、もし戦場でこれを発見したならば最優先で対処すべき脅威として指導されます。
今回は、戦術の観点から戦車小隊の隊形について紹介したいと思います。

まず戦術とは一般に戦闘で任務を遂行するために部隊を運用するための科学または技術のことを意味しており、味方の部隊が敵の部隊に対して有利な態勢を占めるための機動を指示することもこれに含まれます。
次に戦車小隊(tank platoon)について述べると、これは戦車部隊の基本的な単位であり、車両4両によって編成され、各車両に車長、砲手、装填手、操縦手の4名が搭乗するのが一般的な編成です。

戦車小隊の戦術において基本となる隊形にはいくつかの分類がありますが、米軍の教範で紹介されている戦車小隊の隊形には次の種類があります(以下の解説はATP3-20.15: 3-14を参照)。

縦隊(column)は部隊行動の統制が容易であり、側面に対する射撃にも適しているが、正面では十分に火力を発揮することができないので、敵の部隊と接触する恐れが少ない場所で、経路が狭まった狭隘な地形を通過する時に使用すべき隊形です。













千鳥縦隊(staggered column)縦隊の特性を残しつつ、正面と側面に対して火力を発揮することができる隊形であり、特に敵の部隊と接触する恐れがある地域で迅速にその場所を通過する必要がある時に使用します。













突撃隊形(wedge)正面に対して最大限の火力を発揮できると同時に、側面に対しても良好な火力を使用することが可能な隊形であり、若干の起伏がある地形や広漠とした地形で敵の部隊に対する突撃に適しています。













V字隊形(vee)は正面に対する射撃にはあまり適しておらず、部隊の統制と防護を優先した隊形です。狭隘な地形で視界や機動が妨げられている場合、前方を進む車両を後方の車両が視界に入れて警戒しながら前進する際に使用できます。













円形隊形(colt)は戦車小隊が他の小隊から独立して行動する場合、防御体制を準備するために使用され、小隊長が登場する戦車を基準として各車両が異なる方向に対して視界・射界を確保し、車両が別々の方向に対して直ちに発進することができる位置、方向で停止します。












四角隊形(herringbone)は小隊の応急防御に使用されますが、すぐに前進が再開できるように車両の方向は警戒の方向と一致させません。ちなみに戦場機動とは別に行進途上の戦車が休止する場合に取る隊形でもあります。












左斜行隊形(echelon left)正面と一方の側面に対して最大限の火力を発揮することができる隊形ですが、他方の側面に対する小隊の射撃が妨げられるという特性もあります。















右斜行隊形(echelon right)先の左翼斜行隊形の説明を参照。















横隊隊形(line)前方に対して最も小隊の火力を発揮しやすい隊形であり、敵の陣地のような場所を攻撃する際にはこの隊形が使用されますが、隊形を維持して機動することが最も難しいという特性もあります。








これらの隊形の解説からも分かるように、戦車小隊の戦術にとって小隊の火力をどの方向に対して指向するのか、小隊の機動をどの程度まで統制するかが重要なポイントとなります。

隊形における各車両の位置は常に厳密に保持されなければいけないわけではなく、地形や各車両の操縦手の技量によって柔軟に選択されるものです。
ただし、各車両は相対的な位置関係については可能な限り維持しなければならないと考えられています。

米軍の教範を読むと「隊形はあらゆる瞬間において各車両が特定の距離を保つような厳密さを求めるものではない。その隊形においてそれぞれの戦車の配置は地形によって、またはその戦車の操縦手が先行する戦車との関係で機動を保つ技量によって決まる。個々の戦車は常にある隊形において同一の相対的な位置関係を占めるべきである。すべての戦車に搭載された武装の照準は中隊の隊形における小隊の配置に基づいて最大限の警戒が可能となるように修正しなければならない」と定められています(ATP3-20.15: 3-12)。

戦車という車両は普通の車両とは比較にならないほど視界が狭いため、互いの位置を目視で確認することはほとんど不可能です。
つまり、戦車小隊が隊形を維持して正確に機動できるようになるためには、長期にわたる訓練期間を要するということを意味します。

戦車小隊の隊形については別の場所でも説明されていることですが、2012年度の米陸軍の教範を踏まえて書かれた解説が見当たらなかったので紹介してみました。
隊形のことなど些細な事だと思われるかもしれませんが、適切な隊形はあらゆる部隊行動の基本であり、優れた戦術の礎です。
もし戦車小隊の機動演習を見学する機会があれば、小隊長が地形に応じてどのような隊形を選択しているのか、隊形の変更とその保持がどれほど良好なのかに注目すると、一層戦車に対する理解が深まると思います。

参考文献
U.S. Department of the Army. 2012. ATP 3-20.15: Tank Platoon, Washington, D.C.: U.S. Government Printing Office.

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