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2015年5月22日金曜日

戦闘で兵士の内面で何が起きるのか


軍事学の中でも特に軍事心理学の研究者たちは、戦闘経験が兵士の心身の健康状態にどのような影響を与えるのかを長年考察してきました。

例えば、マーシャルの研究(1947)は兵士に戦闘を回避しようとする一般的な傾向があるという仮説を打ち出したことで知られています。
彼は戦場で兵士の15%から20%しか自分の武器を使用して敵を殺傷していない可能性を示し、戦闘が兵士にとって非常に大きな身体的、心理的なストレスをもたらすことを確認しています。

つまり、戦闘は絶えず自分の危険に身を晒すだけではなく、敵を殺傷するという行為そのものに対する嫌悪感もあるため、兵士は戦闘に参加することに消極的になる傾向が生じるのです。

しかし、ここで戦闘に対する兵士の反応をめぐる議論はここで終わるわけではありません。
この戦闘ストレスに対する兵士の心理的な反応に関する研究が進むにつれて、戦闘ストレスが兵士を攻撃的にする関係も明らかになってきました。

ヴェトナム戦争における米軍の兵士たち行動を研究したシェイの研究(1995)は兵士が戦闘で狂暴な行動をとりうる理由を考察しています。

その研究によれば、常に一緒に行動するバディが負傷することを一度でも経験した兵士は、それ以後に効果的に武器を使用して敵を殺傷する行動に積極的に参加するようになります。
そのような兵士はいわば、敵を殺傷することに個人的な関心を持つようになるのです。

学問的に興味深いのは、敵との接触がない状態で、地雷や罠によって味方が死傷した場合にも兵士は強いストレスを感じるということです。この場合に兵士たちが味方を助けるためにできたことは何もありません。
そこで兵士たちはいわば次の敵と接触した場合、その機会を利用して「復讐」をしようとするのです。

このような兵士は一見すると戦闘にうまく適用しているように見えます。しかし、このような兵士はもはや軍隊の根幹である規律を十分に遵守することができる状態ではなくなっているのです。

しかも、そのような状態を一度でも経験すると精神的影響が長期間持続することも指摘されており、退役してから何年か経過した後で心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症する確率が増加するとされています。

まとめると、戦闘に対する兵士の反応はその状況によって異なってくるということです。
戦闘は重度のストレスを兵士に与えるため、兵士は一般に戦闘を嫌う傾向があります。しかし、自分のバディが目の前で殺され、また味方の手足を吹き飛ばされることを目撃した兵士は、極めて好戦的な精神状態となります。
それは必ずしも望ましいものではなく、軍隊の規律と退役後の精神衛生を損なう要因となるのです。

現在の戦争では戦地に派遣される兵士でも実際に戦闘を経験するのは10%から20%であり、すべての兵士が戦闘ストレスの問題に苦しんでいるという見方は間違っています。
それでも、PTSDで苦しんでいる退役軍人は現に存在しており、米軍ではより良い治療のために軍事心理学の研究を進めているのです。

KT

参考文献
Marshall, S. L. A. 1947. Men against Fire: The Problem of Battle Command, Norman: University of Oklahoma Press.
Shay, J. 1995. Achilles in Vietnam: Combat Trauma and the Undoing of Character, New York: Simon & Schuster.

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