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2015年2月22日日曜日

精鋭の証明


ある国の軍隊の強さは印象論的な方法で説明されることが多いと思いますが、先行研究ではより定量的な取扱い方で説明することも検討されています。

戦闘理論における戦闘効率値(Combat Effectiveness Values, CEV)は、部隊の質の高さを表す指標の一つであり、デュピュイ(Trevor N. Dupuy)の代表的な研究では次のように定義されています。(赤軍と青軍の二つの部隊が交戦する場合の定義です)
赤軍の戦闘効率値=(赤軍の戦果/青軍の戦果)/(赤軍の戦闘力/青軍の戦闘力)
ここでは戦闘力質的要素は考慮しておらず、純粋な規模を表しています。また、戦果についても敵に対して与えた人的損害等から判定されているものです。

この定式で軍事力の効率を測定すると、どのようなことが分かるのでしょうか。

デュプイはこの定式を用いて第二次世界大戦における米軍、英軍、ドイツ軍の戦闘を分析したところ、次のような結果を得ています。


ここでは第二次世界大戦で戦った主要な師団の戦闘回数と、その師団の戦闘効率値の平均値がまとめられています。

これらの部隊の戦闘効率値を分析すると多くの知見が得られます。
例えば、国家別にまとめて平均すると、ドイツ軍が全般的にアメリカ軍、イギリス軍よりも効率的に戦うことが多かったことが分かります。

二次大戦におけるドイツ軍、イギリス軍、アメリカ軍の主力師団の平均戦闘効率値。
ドイツ軍は1.1、イギリス軍は0.76、アメリカ軍は0.84となっている。
ここで高いレベルの戦闘力を示していた部隊のトップ3がいずれもドイツ軍の部隊であることであることは、ドイツが効率的な軍事力を構築する能力に優れていたことを示しています。

米軍の部隊で最優秀だったのは第5位の第88師団、英軍で最優秀だったのは第11位の第46師団でしたが、全般として見ると英米軍の部隊はドイツ軍の部隊ほど質的側面で優れていたとは認められません。

もう一つ指摘するべきは、戦闘の経験の豊富さが必ずしも高い戦闘効率と結び付いているとは言えない点です。
ドイツ軍の第3装甲擲弾兵師団は17回の戦闘を経験していますが、平均した戦闘効率値は1.17とドイツ軍の他の主要な師団と比べて高くなっているわけではありません。
米軍の第88師団は戦闘の回数は4回ですが、戦闘効率から見れば極めて優れた成果を上げています。

興味深いことに、米軍とドイツ軍の双方の記録で第88師団は特別に高い戦闘力を持つ師団だと判定されています。第88師団は1942年に新設された部隊の一つでしたが、同時期に新設された他の部隊はそれほどの戦果を上げていません。
そのため、戦後に行われた分析では第88師団の師団長だったスローン(John Emmit Sloan)少将の指揮統率によるところが大であった、と考えられています(Dupuy 1987: 118-121)。

この分析が正しいのであれば、スローン少将の功績とは、自らの師団の戦闘効率を米軍の平均値0.84から1.14にまで向上させたことである、と言うことができるでしょう。

KT

参考文献
Dupuy, Trevor N. 1987. Understanding War: History and Theory of Combat, New York: Paragon House Publishers.
Dupuy, Trevor N. 1993(1977). A Genius For War: The German Army And General Staff, 1807–1945, New Jersey: HERO Books.

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