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2014年5月7日水曜日

軍隊の計画を担う幕僚


今回は現代の司令部業務に不可欠な幕僚の業務について紹介したいと思います。

19世紀に軍隊で司令部業務の合理化が積極的に進められると、必然的に幕僚制度を整備する必要が出てきました。研究者は現代の幕僚業務の在り方の大部分が19世紀のプロイセン陸軍で確立されたと考えており、その有用性からその仕組みは世界各国で採用されるに至りました。

まとめてしまうと、指揮官の業務を補佐するために設置されるのが幕僚部です。
幕僚部を指揮するのは幕僚長で、一般的な組織論でもよくライン・スタッフを区別している理由はここに由来します。幕僚部それ自体に部隊を指揮する権限があるわけではないということです。

幕僚部には一般幕僚と特別幕僚という二つの系統の幕僚がおり、一般幕僚は次の五つに大別されます。
・G-1(人事幕僚)部隊の編成や衛生状態など人事、労務、行政に関する事項を掌握する幕僚。
・G-2(情報幕僚)敵の勢力や装備、行動に関する各種の情報資料の分析を担当する幕僚。
・G-3(作戦幕僚)部隊の運用そのものを掌握し、計画立案の業務を担当する幕僚。
・G-4(兵站幕僚)作戦行動に必要な糧食、燃料、弾薬などの補給と輸送について掌握する幕僚
・G-5(民事幕僚)地域住民や自治体、その他の民間人に関する事項を担当する幕僚。

幕僚長の指揮下で一般幕僚はそれぞれ部下を指揮して業務を処理し、作戦会議では計画立案に伴うあらゆる問題を調整する権限を持っています。

幕僚部はこうした一般幕僚に加えて必要に応じて特別幕僚を加えて作戦会議を運営し、作戦計画(Operation Plan, OPLAN)というものを策定します。
米陸軍の教範によると、作戦計画は五つの要素から構成されます。

第一に作戦計画は「状況」から始まります。状況とは作戦を実行する上で影響を及ぼす地形、天候、敵情などの詳細に関する事項が含まれます。この部分で重要なのは情報幕僚の業務であり、情報分析とそれに基づく見積りが反映されることになります。

第二に含まれるのは「任務」です。任務の内容を吟味した上で具体的な作戦の指針として言い換える作業を任務分析と言いますが、要するに誰が、いつ、どこで、なぜ作戦を実行するかを明らかにすることです。

第三に含まれるのは「実行」であり、最も基本的な作戦構想が何かを定義します。任務分析で判明した目標を達成するための方法を述べる箇所なので、一般的に地図を付して部隊の行動を具体的に図示することも行われます。

第四に示されるのが「指令の調整」であり、矛盾なく命令を与えるために各部隊への指令を個別に検討するだけでなく、実行の段階で示された構想の観点から全般的に検討します。

最後に来るのが「指揮と合図」で、指揮系統を定義し、指揮所の位置を明らかにし、作戦行動を実行に移すにあたって用いる合図を示します。

ここで重要なことは作戦の規模や複雑性を増大させる場合、幕僚業務を担う幕僚部の機能もまた増強することが必要となるということです。
近代になるまで歴史上の軍隊は幕僚部を置かずに戦闘を行っていましたが、それは戦場の規模や複雑さが限られたものであったためです。

しかし、戦場が拡大し、運用する装備が複雑化すると幕僚部の機能が作戦の成否に関わってくるようになるということです。
昨年12月、安倍政権で防衛省は日本は統合機動防衛力という作戦構想を打ち出しました。
しかし、この構想を実現するためには、前線の部隊だけでなく、統合幕僚監部(特に運用部が中枢機能を担当しているのですが)の業務にも十分な注意を向けることが必要となってきます。

かつての日本の大本営には十分な統合作戦を指揮する態勢がなかったことも含め、私たちは自衛隊の統合運用を人員や装備だけでなく、幕僚という要素からも検討することが重要であると私は考えています。

KT

参考文献
U.S. Department of the army. 1984. Field Manual 101-5: Staff Organization and Operations, Washington, D.C.: Government Printing Office.

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