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連載記事 はじめての安全保障学(2):戦争はどのような事象なのか

安全保障学の研究において戦争は最も重要な問題であり、その原因や影響を明らかにするために、さまざまな研究が行われています。 今回の連載記事「はじめての安全保障学」では、 第1回「安全保障学とは」 に続いて戦争に関する研究成果を取り上げたいと思います。 戦争という問題をより具体的に考えるための一助としていただくことがその目的です。 戦争は少なくとも1年に1度のペースで発生している 1815年から2002年までに起きた戦争を包括的に調査した研究があります(Gleditsch 2004)。 これは独自の集計法で戦争のデータを整理集約した研究であり、戦争がどのような頻度で起きているのかを大まかに知る上で非常に有益な内容です。 この研究成果では、1816年から2002年までの186年間にわたって、少なくとも1年に1度のペースで戦争が勃発していることが報告されました。 この数字はウプサラ紛争データ・プログラムが提供する武力紛争データセットに依拠しており、これは1年間で一定の戦死者が出ていることを武力紛争かどうかの判断基準にしているため、戦死者がほとんど出ていないケースについては除外されていることに留意しなければなりません。 より厳密に言えば、一定数の戦闘で犠牲者を出す戦争が1年に少なくとも1度は起きているという意味であり、相当の烈度を伴った戦争だけを数えていることになります。もし戦争の定義を広げるならば、より多くの戦争が毎年世界各地で発生していると言えるでしょう。 ちなみに、この調査対象の期間で対外戦争は140件確認できますが、内戦は175件確認されており、前者は75%、後者は94%の確率で発生しています。また時代が現在に近づくにつれて内戦が対外戦争よりも多く発生する傾向にあるとも指摘されています。 もちろん、地域や時代によって発生率にはかなりの変化があることも判明しており、それに関する研究も出ています。 軍事バランスが戦争のリスクを大きく左右する 安全保障学の理論的研究には軍事技術が勢力均衡に及ぼす影響を考慮するものがあり、例えばクエスターや、ジャーヴィスの理論がその代表的なものとして挙げられます(Quester 1977; Jervis 1978)。 大国に限定された実証的研究ではありますが、1800年から1997年までの軍事情勢...

連載記事 はじめての安全保障学(1):安全保障学とは

「はじめての安全保障学」は安全保障学を学びたい読者が知っておくべき基本基礎をまとめた連載記事です。記事の末尾には参考文献の他、文献案内も付しているので参考にしてください。 今回の記事では「安全保障学とは」と題し、安全保障学の範囲やその研究の経緯を知らない方に向けて解説したいと思います。 安全保障学とは何か 最も単純な定義として、安全保障学(security study)は戦争と平和を研究する学問だといえます。しかし、それは必ずしも軍事に関することだけに限定されません。 一般的に見れば、政治学、特に国際政治学の下位領域に位置付けられており、確かにその中で国家の防衛は中心的な課題として位置づけられています。 ただ、安全保障を実現する手段は多岐に渡っています。そこには政治的、経済的、社会的、軍事的、外交的、法律的、技術的手段などが含まれています。 そのため、安全保障学は国際政治学を基礎に置いていますが、軍隊の作戦行動を分析する場合もあれば、国際貿易の状況、社会に浸透するテロリスト集団、あるいは同盟条約の内容、科学技術の動向などを分析する場合もあります。 安全保障学を学ぼうとすれば、政治学を基礎にしつつも、多方面にわたって学際的に調査研究することが求められるでしょう。 このように現代の安全保障学の研究領域が拡大されている理由を知るためには、その歴史的経緯についても知ることが必要です。 戦略の研究から始まった安全保障学 政治学、国際政治学の一領域として安全保障学が成立した背景には、第二次世界大戦終結後の米ソ冷戦で核戦略に関する調査研究が求められたことがありました。 イギリスの研究者 ローレンス・フリードマン(Lowrence Freedman) は1950年代から1960年代にかけて安全保障学が「黄金期」を迎えたと称していますが、それは多数の文民の研究者が戦争、戦略の研究に取り組むようになり、彼らが政府機関の中でも重要な役割を果たすようになったことを意味しています(Freedman 1998: 51)。 初期の安全保障学では特に核戦略、核抑止の問題に関する調査研究が重視される傾向にあり、その研究成果の中には核戦争を遂行するための戦略の研究も含まれていました。 これは決して机上の空論ではなく、特に冷戦初期の米国では核兵器の大量使...