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メモ エチオピアの軍事情勢を読み解く『ミリタリー・バランス』のデータを紹介する

2020年11月5日、エチオピアのアビィ・アハメド首相はエチオピア軍の兵力によってティグレ人民解放戦線に対する武力攻撃を強化しました。ティグレ人民解放戦線はエチオピアで反政府活動を展開してきた武装組織であり、BBCの報道によれば推定勢力は25万ですが、その詳細は不明です。

エチオピア軍は11月26日にティグレ州の州都メックエルに対する攻撃を開始し、29日の時点でこれを占領したようです(BBC, Ethiopia's Tigray crisis: PM claims capture of regional capital Mekelle、2020年11月29日アクセス確認)。今後、ティグレ人民解放戦線はゲリラ戦に移行するものと見られています。この記事では、エチオピア軍の能力に関する『ミリタリー・バランス』のデータを簡単に要約し、今後の情勢判断の参考資料としたいと思います。

エチオピアという国は東アフリカで最も重要な地域勢力ですが、経済的能力は発展途上にあり、国内総生産(GDP)は米ドル換算(US$1=EB28.94)で2019年で912億ドル、一人当たりに換算すると953ドルです。同じく東アフリカのケニアのGDPは986億ドルですが、ケニアの一人当たりのGDPは1,998ドルなので、労働生産性ではかなり後れを取っています。経済成長率は7.4%と報告されていますが、インフレ率が14.6%とかなり高い水準にあることも懸念材料として指摘されるでしょう。

国内の防衛産業基盤は小さく、国内での生産は小火器生産や一部の装甲車のライセンス生産に限定されています。保有する装備の大部分が冷戦時代にソ連から提供されたものであり、2005年から2015年にかけて実施された軍事的近代化の試みも実態として、ハンガリー、ウクライナ、アメリカが手放した余剰の装備を取得するだけに終わっています。

しかし、東アフリカ諸国との比較で評価するならば、やはりエチオピアの軍事的能力は優れていると言えます。エチオピアはソマリア暫定連邦政府に軍事援助を提供し、ソマリア南部に拠点を置くイスラム系武装勢力アル・シャバブに対抗しており、またスーダンやマリにおける国連の平和維持活動に兵力を提供し、地域の安全保障にとって重要な役割を果たしてきました。1993年にエチオピアから独立を果たしたエリトリアと領土問題が生じ、1998年に武力紛争になりましたが(エチオピア・エリトリア戦争)、2000年に包括的和平合意が成立し、2018年にはエチオピアとエリトリアとの間では外交関係が結ばれています。

全軍の総員138,000名であり、陸軍の人員は135,000名です。エチオピア軍には地域ごとに北方軍、西方軍、中央軍、東方軍という4個の軍が置かれています。

  • 北方軍(機械化師団1個、歩兵師団4個)
  • 西方軍(機械化師団1個、歩兵師団3個)
  • 中央軍(機械化師団1個、歩兵師団5個)
  • 東方軍(機械化師団1個、歩兵師団5個)

これらの部隊とは別に機動運用が可能な兵力として、特殊作戦部隊も編成されているようです。ちなみに、11月にエチオピア軍が作戦を開始するきっかけとなったティグレ人民解放戦線の攻撃は北方軍の軍事施設に対する攻撃であったと政府は発表しています。

エチオピア軍が保有する主要装備の構成は以下の通りです。

空軍の人員は3,000名であり、作戦行動が可能な航空機の数は21機であり、内訳は以下の通りです。

  • 戦闘機:11機(Su-27:8機/Su-27UB:3機)
  • 戦闘攻撃機:8機(MiG-23ML/UB
  • 攻撃機:2機以上(Su-25/UB
  • 攻撃ヘリコプター:18機

現地では空爆も実施されていることが報告されており、エチオピア空軍の戦闘攻撃機や攻撃機が作戦に使用されていると見られます。

エチオピアの国内においては民族間の利害に起因する対立が根深くあり、特に北部のティグレ族を中心とするティグレ人民解放戦線の反政府活動が深刻です。『ミリタリー・バランス』のデータによれば、エチオピアの総人口は111,483,031人で、民族構成は以下の通りです。

  • オロモ族34.4%
  • アムハラ族27%
  • ソマリ族6.2%
  • ティグレ族6.1%
  • シダマ族4%
  • グラゲ族2.5%
  • その他19.2%
資料では民族別の人口の記載がないので、総人口に対するティグレ族の構成比から逆算すると、0.061×111,483,031=6,800,464.89、つまり680万程度であると見積もることができます。もしティグレ人民解放戦線の勢力が報道されているように25万名だと想定すると、ティグレ族の人口の27.2%を動員している計算になります。おそらく厳密な意味での戦闘員の比率は小さいと考えられますが、これだけの動員力を持っているのであれば、ゲリラ戦の形態で長期戦を仕掛けてくる可能性が十分に考えられます。

参考文献

  • Chapter Nine: Sub-Saharan Africa, The Military Balance, 120:1, 444-514, DOI: 10.1080/04597222.2020.1707971