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2017年12月8日金曜日

学説紹介 戦場で小隊長は何をしているのか―歩兵小隊の組織構造と小隊長の役割について―

時代や地域を超えて、歩兵部隊は常に陸軍の中核的戦力であり続けてきました。
歩兵は文字通り最前線において徒歩で近接戦闘などを遂行する兵科であり、主たる武器は小銃、機関銃、迫撃砲です。

今回は、そんな歩兵小隊がどのように編成されているのかについて、米軍の教範を参考にしながら、戦術の観点から解説してみたいと思います。

そもそも歩兵小隊とは何か

標準的な陸軍の編制として、小隊は分隊の上位、中隊の下位に位置付けられる部隊です。
部隊の規模もさまざまですが、30名から50名程度で編成される場合が多いようです。

現在の米軍の教範では、その組織について次のように説明されています。
「歩兵小隊は、3個の歩兵分隊、武器分隊、小隊本部によって編成される。小隊本部は小隊隷下の分隊及び随伴する部隊を指揮統制し、火力支援システムと後方支援システムとの連絡調整を行う。すべての歩兵小隊は戦闘において教義として定められた同じ基本原則を用いるが、それらの原則を応用する方法については、任務を割り当てた部隊によって異なる」(FM 1.11-1.12)
米軍では歩兵分隊の規模が9名とされ、小銃、自動小銃、擲弾などの装備を使用する人員で編成されるのですが、武器分隊(Weapon Squad)だけは機関銃、対戦車誘導弾といった装備を運用する人員がおり、必要に応じて通常の歩兵分隊を支援できるようになっています。さらに小隊本部には小隊長をサポートする小隊陸曹、小隊無線手がいます。
歩兵小隊は小隊本部(PLT HQ)、3個の歩兵分隊、武器分隊(WPN SQD)で構成されている。
小隊本部には小隊長、小隊陸曹、無線通信手が、武器分隊には機関銃班、対戦車班がある。(FM 31-8: 1.12)を参照。
以上が歩兵小隊の大まかな組織構造であり、状況にもよりますが、攻撃の時には100メートルの正面にわたって分隊を展開し、防御の時にはその2倍の正面を担当する場合もあります。
こうした数値を踏まえると、小隊という部隊の規模は交戦の際に全体を一目で見通すことができる、ぎりぎりの規模だと言えるかもしれません。
したがって、小隊長の仕事として求められるのは、現場で状況の変化に素早く反応し、必要な指揮をとることであると理解することができます。

小隊長は何をすればいいのか

さて、この小隊で小隊長が具体的に処理している仕事は何なのでしょうか。
当然、小隊を指揮しているのですから、任務の遂行に必要な命令を達し、その実施状況を監督することが基本ですが、それだけでは言い尽くせないほど様々な業務があります。

ここでは教範で小隊長の仕事がどのように規定されているのかを見てみましょう。
・上級司令部の任務を支援するように小隊を指揮する。小隊長は与えられた任務と、上級指揮官の意図、構想に基づいて行動をとる。
・分隊を機動させる。
・分隊の活動を協同させる。
・小隊の次の行動について見通しを立てる。
・支援のための装備を要請し、それを統制する。
・分隊と小隊が利用可能な指揮統制システムを運用する。
・全方向に対する警戒を実施する。
・重要な武器の配置を統制する。
・正確かつ時期に適った報告書を上級部隊に提出する。
・任務の遂行に最も必要とされる場所に赴く。
・分隊に明確な任務、目標を割り当てる。
・二段階上級の部隊(中隊、大隊)が意図している事柄を理解する(Ibid.: 1.12-1.13)。
小隊長が処理すべき仕事の内容が多岐に渡ることが分かります。
歩兵分隊、武器分隊が運用している武器の特性を十分に理解していることは当然のことですが、それらを使って、いつ、どこに、どれだけの火力を集中するべきなのか、そのために分隊をどこに配置し、どのように移動させるべきなのか、そして刻々と変化する状況で自分がどこにいればよいのか、こうした判断が求められることになります。
小隊長に任されるのは、将校として階級が最も下の少尉ですが、将校になったばかりの若者にこれほど複雑な仕事を立派にこなすことは非常に難しいことです。

そのため教範では、小隊長はこれらの業務を遂行するに当たり、小隊に関するあらゆる問題を小隊陸曹と相談するように述べられています(Ibid.: 1.12)。
小隊陸曹は歩兵小隊、歩兵分隊の戦術問題の専門家として小隊長に必要な助言を与える役割もあり、小隊長が指揮を執れなくなった場合には、その指揮権を引き継ぐ場合も想定されているためです(Ibid.: 1.13)。

むすびにかえて

陸軍の歴史を振り返ると、小隊が戦術上の単位として重要性を帯びるようになったのは、第一次世界大戦からのことだとされています。(文献紹介 どのように歩兵小隊の戦術は変わってきたのか
長い戦争の歴史から見れば、比較的最近のことだと言えますが、もはや現代の陸上作戦を遂行するためには、よく訓練された歩兵小隊が欠かせなくなっています。

ちなみに近年では小火器の射程や威力の向上、通信手段の発達などの影響で、歩兵分隊の役割が増大するという議論もあるのですが、やはり大規模な戦闘に対応する上で歩兵小隊の意義は依然として大きなものがあると言えるでしょう。

KT

関連項目

文献紹介 どのように歩兵小隊の戦術は変わってきたのか

参考文献

U.S. Department of the Army. 2007. Field Manual 3-21.8: The Infantry Rifle Platoon and Squad, Washington, D.C.: U.S. Department of the Army.