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2015年12月30日水曜日

攻撃ヘリコプターの編成と運用

現代の陸上作戦で戦闘力を発揮するためには歩兵や機甲などの兵科を組み合わせ、高度な戦闘力を発揮する諸兵科連合が重要となっています。その中でもヘリコプターが重要な任務を遂行するようになっています。

今回は、米陸軍において攻撃ヘリコプターがどのような役割を担っているのかを概観してみたいと思います。

攻撃ヘリコプター部隊の編成
米陸軍では攻撃ヘリコプターは攻撃偵察大隊(attack reconnaissance battalion)で運用されており、これは戦闘航空旅団の下に2個編成され、攻撃ヘリコプターであるAH-64Dだけで編成される場合と、観測ヘリコプターであるOH-58Dだけで編成される場合、そして両者を1個ずつ組み合わせて編成する場合があります。
米陸軍における攻撃偵察大隊の標準的な編成。
上がAH-24を配備した場合の編成であり、下がOH-30の場合の編成である。
(FM 3-04.126: 1-6)
AH-64Dを配備した攻撃偵察大隊について説明すると、まず1個の本部管理中隊(Headquarters and Headquarters Company, HHC)、1個の前方支援中隊(Forward Support Company, FSC)、そして3個の攻撃偵察中隊(Attack Reconnaissance Companies, ARC)、1個の航空整備中隊から構成されます。それぞれの攻撃偵察中隊には8機のAH-64Dが配備されることになるため、合計で24機のAH-64Dが配備されることになります(FM 3-04.126: 1-5)。
攻撃偵察中隊(ARC)・攻撃偵察隊(ART)の編成表。
攻撃偵察中隊(上)は2個の攻撃偵察小隊から編成され、AH-64Dが4機ずつ配備。
攻撃偵察隊(下)も2個の攻撃偵察小隊から編成され、5機ずつOH-58Dが配備。
(FM 3-4.126: 1-8)
以上で攻撃偵察大隊から攻撃偵察中隊、そして攻撃偵察小隊に至る編成の概要が分かったと思いますので、次に個々の攻撃ヘリコプターの運用に関して見ていきたいと思います。

攻撃ヘリコプターの運用について
攻撃ヘリコプターは純粋に技術的観点から見れば航空機の一種ですので、陸上で戦う陸軍に攻撃ヘリコプター部隊が編成されていることが不合理に思われる方もいるかもしれませんし、それはもっともなことです。
この事情を理解するためには、攻撃ヘリコプターは一般にイメージされるよりも、はるかに低い高度で運用されることがあることを念頭に置かなければなりません。
攻撃ヘリコプターが隆起攻撃(bump attack)している図。
地形に沿って空中機動ができるヘリコプターの特性を利用した運用と言える。
(FM 3-4.126: 3-70)
実際の交戦では攻撃ヘリコプターの武装は機関砲、ロケット、対戦車ミサイルなどを用いて敵の戦車や装甲車などの地上目標を射つ場面が多く、必然的に低高度以下の高度で活動することになります。その場合、段丘や稜線に身をひそめて行動するというような地形地物に適応した機動が必要となります。

つまり、複数の攻撃ヘリコプターで組む編隊についても、地形に容易に適用できるように柔軟なものでなければなりません。
編隊を組んで飛行する際に各機がとる間隔の目安。
尾翼から右方へ45度の方向に対し、回転翼の大きさで判断する。
回転翼の直径に対して2倍の位置、3から5倍の位置、6から10倍の位置、それ以上の位置に区分。
一般に各機の間隔を大きくとるほど部隊としての脆弱性は小さくなる。
(FM 3-4.126: 3-4)
編隊を組んで飛行する場合に各機が占める位置関係についても、原則となる考え方がありますが、その一つに長機(lead)に対して僚機(wingman)は死角となる真後ろ位置することを避けなければならないというものがあります。また敵と接触する恐れがある地域を移動する場合には、各機の間隔を大きくとって、脆弱性を最小限度に抑制しなければなりません。
編隊を組む際には長機に対して僚機は一定の距離を保持しなければならない。
つまり長機の視界を遮らず、かつ敵との交戦において直ちに射撃可能な位置を占める。
上の図でleadが長機、wingmanは僚機、maneuver areaは僚機が占め得る位置。
(FM 3-4.126: 3-5)
このような長機と僚機の交戦における連携にもたくさんのパターンがありますが、ここでは同時攻撃と連続攻撃について説明しておきます。
攻撃ヘリコプターは強力な火力を備えているものの、一カ所にとどまると敵の射撃目標となりやすいので、昔の騎兵隊のように一撃すれば敵の反撃を受ける前に離脱し、少し離れて態勢を整えた後には次の一撃を加えるという戦い方をとります。
左が長機と僚機の同時攻撃を加える際に実施する機動、
右が長機と僚機が連続攻撃を加える際に実施する機動の図解。
同時攻撃の場合、攻撃の間隔が長くなるが、火力を集中することが容易となる。
反対に連続攻撃の場合、次の攻撃までの間隔が短くなる。
(FM 3-4.126: 3-65)
同時攻撃(simultaneous attack)の特性は長機と僚機が同時に攻撃を加える点であり、次の攻撃にまで時間がかかる一方で、僚機が長機の援護射撃をすることができます。そのため、より正確に目標を撃破する必要がある場合には同時攻撃を実施することが適切でしょう。
しかし同時攻撃だと次の攻撃までに時間がかかるため、敵の部隊が態勢を立て直したり、または別の場所へと退避しようとする可能性があります。そのため連続攻撃(continuous attack)では長機と僚機がかわるがわる攻撃を行う場合があります。
なお、連続攻撃は同時攻撃よりも技術的に難しいだけでなく、敵の脅威が大きい場合、また敵を撃破するために必要な火力が比較的大きい場合には選択すべきではないことに注意する必要もあります。

KT

参考文献
U.S. Department of the Army. 2007. Field Manual 3-04.126: Attack Reconnaissance Helicopter Operations. Washington, D.C.: U.S. Governmental Printing Office.

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