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2015年12月12日土曜日

市街戦における歩兵小隊の攻撃について

現代の安全保障環境では二つの理由から市街戦がその重要性をますます高めています。第一の理由は人口の増加と都市化の進行によって市街地の面積が増加する傾向にあることであり、第二の理由は経済発展に伴って不正規戦争、ゲリラ戦争、テロリズムの有効性が増大していることです。

今回は、市街戦における歩兵小隊・分隊の基礎的な運用について取り上げ、特に攻撃に関する問題を中心に説明したいと思います。

市街戦での建物に対する攻撃の実施要領
あらゆる作戦はその活動の形態から攻勢作戦と防勢作戦に分かれますが、市街戦の部隊行動にも同様に攻撃と防御があります。
市街戦で実施する攻撃も、その他の地形の場合と基本的な要領は変わりませんが、市街戦で攻撃の目標となるのは建物であるため、それに応じた攻撃の手順を考えなければなりません。
攻撃する建物の周囲を取り囲み、外部から敵の増援が進入できなくした状態の一例。
左右両翼の小隊と戦車が敵を警戒するため建物を挟む道路に対する射線を確保。
この状況で残る歩兵小隊が建物に対する強襲を実施することが可能となる。
(FM 3-21.8: 7-38)
まず市街戦における歩兵小隊の攻撃は必ず他の小隊の支援を受けて実施しなければなりません。ある建物に対して攻撃する際にも、その建物に隣接する建物や道路から敵の増援が出現すれば、そのまま部隊がその建物から移動することができなくなってしまう恐れがあるためです。
そのため、先に挙げた図のように、攻撃の際にも支援に当たる小隊と、強襲に当たる小隊で役割を分担することが重要となるのです。

建物への突入と突破口の確保
建物に対する突入の部隊行動を分析すると、突破の攻撃機動の方式と強い類似性が認められます。敵の陣地で弱点となっている地点を見極め、そこに火力を集中し、一挙に敵の陣地に進入して突破口を拡張しながら前進するのです。
しかし、最初に突入する地点が狭いと有効な援護射撃ができないため、どのような装備で最初の突破口を形成するかを適切に選択する必要があります(Ibid.: 7-39)。手榴弾などは閉所に対する突入で最もよく使用される武器の一種です。

さらに建物の攻撃を考えると、地上階から突入を行う場合(bottom entry)と屋上から行う場合(top entry)があります。
前者の場合、既存の扉や窓ではなく、壁を爆破して突入する方が敵の意表を突くことができるために望ましいとされています(Ibid.: 7-39)。
後者の場合、屋上や屋根に対して接近できることが前提条件となりますが、より効果的に建物を攻略することができます。屋内に入る際には階段を下に見下ろすことができますし、敵を建物の外へと圧迫誘導し、建物の周囲を取り囲んでいる他の小隊に撃破させることも可能となるためです(Ibid.: 7-39)。

部屋の確保と通路の移動
部屋に突入する際の部隊行動の要図。
1番は進入と同時に直ちに左右どちらかに移動し、2番の射線を確保する。
2番は1番の反対の方向へと移動し、3番の進入を誘導する。
3番は入口の付近から少なくとも1メートル以上移動し、その間に1番と2番は壁沿いに部屋の奥へと移動する。
最後に4番が部屋に突入して3番と反対の方向に沿って1メートル以上移動し、1番と2番は部屋の最深部まで移動する。
(FM 3-21.8: 7-42)
ある部屋に突入する際には4名で実施し、上に示した図の通りの部隊行動をとります。こうした教練を有効に実施するためには各自がそれぞれの役割を熟知していなければならず、班長は部隊としての行動を統制しなければなりません。
また部屋を確保した際に非常に重要なこととして、必ずその部屋から他の建物の屋上や屋根に移動できるかどうかを確認することが挙げられます。敵がその部屋から脱出していないかどうかを確認するためです。また一度確保した部屋についてはその旨を標示しておき、他の味方にも分かるようにしておくことも重要です。
屋内で通路を移動する際の隊形。
菱形隊形(左)とV字隊形(右)
(FM 3-21.8: 7-43)
建物の内部で部屋から部屋へと移動する際には、狭い通路でも射手が有効な射撃ができるように指揮官が隊形を選択しなければなりません。
また通路で移動する際に重要な要領も以下の二種類があります。
通路の連結部を通過する際の基本的な要領。
1番と3番が警戒に当たり、その間に2番と4番が通過する。
(FM 3-21.8: 7-44)
狭いT字路で左右に曲がる際の要領。
左右の両方に対する警戒した後、隊形を菱形に切り替えている。
(FM 3-21.8: 7-46)
通路で移動する場合でも敵に対して優勢な火力を指向するという原則的な考え方は変わりません。しかし、狭い通路で全ての射手が射線を確保することは難しいため、どの場所に誰が位置して援護射撃をすべきなのかを判断することが必要です。
階段を移動する際の部隊行動の要領。
1番が階段の外側、2番が内側から踊り場を警戒し、3番は最初の地点で上階の方向を警戒する。
(FM 3-21.8: 7-47)
また建物の内部で危険性が特に大きい場所に階段があります。特に下階から上階へと移動する際にはどうしても大きな死角が生まれるため、射撃と運動の基本に基づき、交互に躍進しながら警戒することがどうしても必要となります。
また階段は室内で罠や障害が仕掛けられることが特に多い地点でもあるため、指揮官は階段に部隊を進入させる前に地形をよく観察することを欠かしてはなりません。注意しなければならないのは階段に突入する場合には部屋に突入する場合とは異なり4名よりも3名の方が望ましいとされていることです(Ibid.: 7-47)。

結びにかえて
屋内における交戦の要領は極めて複雑であり、常に教練通りといかないのが普通です。
米軍の教範でも「屋内での交戦のために考案された特別な教練があるが、強襲全般は作戦であり、教練ではない。計画立案の間、分隊レベルの指揮官は自らが担任する部屋の窓(隙間、穴、銃眼)を見つけなければならない」と述べられています(FM 3-21.8: 7-38)。
特に建物に対する攻撃が一旦始まると、その後の戦闘の推移は兵士一人ひとりの地形判断と戦術能力に頼るところが極めて大きいと言えます。

KT

参考文献
U.S. Department of the Army. 2007. Field Manual 3-21.8: The Infantry Rifle Platoon and Squad, Washington, D.C.: U.S. Department of the Army.

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