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2015年11月16日月曜日

戦車の戦術でも重要な射撃と運動

戦車は一見すると頑丈な装甲を備えているため、敵の弾幕を気にせずに自在に戦場を機動できるようにも思われるかもしれません。
しかし、実際には地形を利用せず、味方車両の援護もなしに戦場を動き回ることは非常に危険な行為です。
今回は、戦車小隊の観点から戦車の運動にどのような種類があるのかを示し、射撃と運動の原則が戦車の戦術にも適用可能であることを紹介したいと思います。
(戦車の運用については戦車小隊の隊形を取り上げた以前の記事も併せてご参照下さい)

戦車小隊の運用に関して解説した米陸軍の教範では、戦車の運動で注意すべき事項について以下の通り述べられています。

・空際線に乗り出してはならない。
・開けた場所は素早く通過すること。
・援護された交戦中の位置から敵に向かって直進してはならない。
・敵と不利な態勢で戦うよりも険しい地形を通過するほうが容易であるため、敵の射手が待ち構えている危険な場所を避けて行動すること。
・敵を制圧または妨害するために、煙幕の使用、直接照準、間接照準による射撃などの対抗措置を積極的にとること。
・地雷原や障害、敵を誘い込むのに適した危険な地域を特定すること(ATP 3-20.15: 3-15)。

これらの着眼は、いずれも敵の射界に不用意に侵入することを避けることの重要性を示唆するものです。
しかし、状況によっては敵の射界をあえて前進しなければならない場合も出てきます。そのため教範では小隊の車両がお互いに掩護しながら交互に躍進する運動方法についても説明されています。

敵の脅威が予想される地域を前進する場合、戦車小隊の車両を2両ごとに分けて交互に前進させ、先行する車両は後からついてくる車両を支援するために射撃姿勢をとります。
この間に後続の車両も前進し、先行していた車両を追い越して前方で射撃の態勢をとります。
このようにすれば敵に対して無防備になることなく前進することができます。
交互の躍進による戦車小隊の前進運動の方法。
第一に右の二両が正面の丘まで前進し、次に左の二両も正面の丘へ前進する。
これを交互に繰り返すことで小隊の車両が敵の脅威に無防備になる危険を最小限にすることができる。
(ATP3-20.15: 3-17)
このような技術は射撃と運動(fire and movement)の派生形として位置付けることができます。
興味深いのは、射撃と運動はしばしば歩兵小隊・分隊の運用という観点から説明されることが多いにもかかわらず、戦車小隊の運用という観点から同じ考え方を応用することができるということです。

以前に歩兵分隊・小隊の運用に関する記事でも説明したことですが、射撃と運動とは味方の一方の部隊が援護している間に、他方の部隊が機動する技術のことを言います。
いわば、敵の砲手が味方の車両に照準を合わせて撃発する作業をこちらの射撃で断続的に妨害し、味方の車両が一時的に敵の射界を移動することを可能にするのです。
状況によっても異なりますが、直接照準による射撃では一般に目標を照準するのに5秒から6秒の時間を要するため、各車両の運転手は素早く遮蔽物まで前進できるよう時間見積に注意しなければなりません。また、敵の砲手にこちらの動きが先読みされることがないように各車両の経路選択にも工夫が求められます。

結論として、戦車はその装甲に頼るだけでなく、巧みな運動によって自らを防護しなければなりません。そのためには歩兵部隊でも用いられている射撃と運動という技術を応用することが重要となるのです。

KT

参考文献
U.S. Department of the Army. 2012. Army Techniques and Procedures, 3-20.15: Tank Platoon, Washington, D.C.: U.S. Governmental Printing Office.

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