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2015年6月23日火曜日

論文紹介 国家はオオカミ、ジャッカル、子羊、ライオンに分類される


最近の国際関係論の研究では、国家の対外政策の選択を説明するために、国内の政治体制が重要であることが注目されるようになっています。

もし国力、特に軍備の強化を実行可能な強固な政治体制が構築されていれば、脅威を及ぼす相手国に直面しても抵抗する姿勢を打ち出す方針を採用するでしょう。しかし、そうでなければ、可能な限り相手の敵対行為を刺激することを回避しようとするはずです。
つまり、その国家の国内事情によって、達成しようとする国益には変化が生じるものと考えられるのです。

今回は、このような国際関係における国家の政策目的の相違について考察したシュウェラーの論文を紹介したいと思います。

文献情報
Schweller, Randall L. 1994. "Bandwagoning for Profit: Bringing the Revisionist State Back In," International Security, 19(1): 72-107.

目次
1.脅威均衡理論とその批判
2.勢力均衡理論における追従
3.報酬のための追従
4.なぜ国家は追従するのか
5.新しい同盟理論:利益均衡
6.結論

シュウェラーは国家が追及する利益を大きく二種類に区分します。つまり、国家は現状を維持する場合に得られる利益と現状を変更する場合に得られる利益があり、後者から前者を差し引いた利益がその国家の利益(つまり現状打破の利益-現状維持の利益=その国家の利益)となるのです。
次に、シュウェラーは現状打破の利益が現状維持の利益を小さく上回る場合と大きく上回る場合を区分しています。
前者の場合だとその国家の現状打破は限定的目的を達成するために実施されるため、自分自身から積極的に軍事行動を起こすよりも、状況の変化に便乗して利益を獲得しようとします。

このような国家をその行動の特性からシュウェラーはジャッカルと呼んでいます。ジャッカルは決して進んで自分から攻撃を仕掛けて危険を引き受けることはしません。ジャッカルは強者に追従することを第一に行動し、隙を見て自分の獲物を確保しようとする特徴があります。

現状維持の利益が現状維持よりもはるかに大きいならば、そのような国家は積極的に危険を冒して攻撃的な行動を選択すると考えられます。
シュウェラーはこのような政策を選択する国家をオオカミと形容しています。
オオカミは自国の国力、軍事力を強化するために多額の資金を投じることも躊躇しません。自国よりも強い国家に対しては慎重になりますが、弱小国に対する姿勢は完全に攻撃的です。

さらに、現状維持の利益が現状打破の利益よりも大きい場合について見てみます。
現状維持の利益が相対的に小さいものであるならば、シュウェラーはそのような国家を子羊と形容しています。つまり、子羊は自国の権益を防衛するためわずかな費用しか支払わず、強者に対して追従することで安全を確保している国家です。このような国家が脅威に直面すると宥和を図る傾向があることも指摘されています。

最後に、現状維持の利益がはるかに現状打破よりも大きい国家は軍事力の増強により大きな費用を支払う体制を持っている特徴があります。シュウェラーはこのような国家をライオンと呼んでいます。
ライオンはすでに所有している権益の安全を確保するために修正主義的な行動を阻止しようとする傾向があります。つまり、オオカミの攻撃を阻止する意思と能力を備えた国家と言えます。

動物になぞらえて国家の利益を分類する点は置いておくとして、シュウェラーの分類方法は国際政治における国家の利益を系統的に分類する方法は非常に興味深いものです。
もし日本の事例で考えれば子羊に、米国はライオンに、中国はオオカミになるのでしょう。そうした各国の利益の相違が行動パターンの相違として現れていると説明すれば、より国際情勢を理解しやすくなると思います。

KT

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