最近人気の記事

2015年3月22日日曜日

軍葬で故人を送るとき


国家の安全保障のために命を落とした兵士たちに対しては、国家としての最大限の敬意と謝意を表明することが求められます。地域や時代によっても相違がありますが、一般に軍隊の儀礼には必ず葬儀が含まれており、これを一般の葬儀と区別する場合には軍葬と呼びます。

今回は米軍で実施されている軍葬についてその要点を紹介したいと思います。

まず軍葬の定義についてですが、米軍では「戦時または平時において我が国民を献身的に防衛した者に対して敬意を儀礼的に表し、また国家としての謝意を最終的に示すこと」と規定されており、その責任は国防長官にあります(Torreon 2014: 1)。

基本的に軍歴を持つ人間、つまり現役の兵士だけでなく退役軍人が死去した場合には、軍葬の対象とされています。
ただし、軍葬の対象者が死去すると自動的に軍葬が実施されるというわけではなく、葬儀会社を通じて遺族が軍隊に軍葬の実施を要請しなければならず、その様式や規模などについても遺族の要望に応じてさまざまに修正されうるものとされています。

ただし、それでも軍葬として必ず遵守すべき儀礼がいくつかあります。
第一に、軍葬では必ず葬送ラッパ(taps)が演奏されなければなりません。これは1874年に陸軍で制定された楽曲であり、認定されたラッパ手によって演奏される必要があります。
参考までに、英語版のウィキペディアでは米軍の葬送ラッパが録音された音源で視聴することができます(英語版Wikipediaのページ:http://en.wikipedia.org/wiki/File:Taps_on_bugle.ogg)。

第二に、埋葬の前に棺を覆う国旗を厳密に所定の手順で折りたたまなければなりません。国旗の折りたたみ方が決まっている理由それ自体は、軍葬の要素と関係しているわけではなく、国旗そのものの特性に由来しています。

そもそも、国家のシンボルであって、軽々しく取り扱ってはならないという考え方が大前提としてあり、課業の開始時、終了時に駐屯地や基地で行われている国旗掲揚や国旗後納においても、旗衛隊が正確に一定の手順を踏んで実施しています。こうした軍隊の儀礼から考えれば、国旗を一定の手順で折りたたまなければならないことは自然なことであると分かると思います。

第三に、折りたたんだ国旗を遺族に手渡さなければなりません。
国旗を渡す者に関しては戦没者から最も近い関係にある近親者(next-of-kin)となります。渡す際にはひざまずき、受け取る人に対して折りたたんだ国旗(三角形)の正面を向けて次のように述べます。
「合衆国大統領、合衆国陸軍(戦没者の所属によって海兵隊、海軍、空軍または沿岸警備隊のいずれかに変更)、そして恐縮する国民の代表として、あなたが愛する者の高潔かつ忠実な奉仕に対する我々の感謝の印として、どうかこの旗を受け取って下さい」
場合によっては5名以上8名以下の部隊による弔銃射撃が実施されることもありますが、米軍の軍葬では必須の要素とまでは位置付けられていないようです。
また部隊の慣習や故人の階級で内容に相違があることもしばしばですので、最低限度の軍葬を実施する場合には上記の三つの要素を含ませなければならないという意味で理解して頂ければ良いと思います。

軍葬には長い歴史的背景と広い文化的相違があるのですが、ここでは米軍の事例で一応の理解が得られたのではないかと思います。
日本においてこうしたテーマのなじみが薄いことは平和の証拠だと言えるかもしれませんが、私としては軍葬に関する知識を通じて、軍隊の役割を改めて確認することができるのではないかと思います。

KT

参考文献
Torreon, Barbara Salazar. 2014. Military Funeral Honors and Military Cemeteries, Congressional Research Service Report for Congress, Washington, D.C.: U.S. Government Printing Office.

0 件のコメント:

コメントを投稿