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2014年11月5日水曜日

戦争で表面化する同盟国間の軋轢


二カ国以上が共同して実施する作戦のことを連合作戦と言います。
連合作戦には他の作戦とは異なる原則がいくつかありますが、一般に同盟国の間での利害の不一致によって上手く遂行することが困難であることが知られています。

今回は、平時においては一見すると上手くいっている同盟国でも、戦時になればたちまち軋轢が生まれて連携が失われることを説明したいと思います。

この分野の研究では数理的モデルが非常に発達しているのですが、ここでは数学を一切用いずに二つの問題を直感的に考察してみたいと思います。

一般に同盟国とは脅威を共有しているのだから、防衛活動で得られる利益も競合的ではないと考えられています。
しかし、防衛活動に伴う負担を考えてみるとどうなるでしょうか。

大国と小国が同盟関係を締結している場合、負担する防衛費は大国のほうが大きくなります。
つまり、大国は小国の安全保障に必要な負担を肩代わりする関係となります。
基本的に財政支出で占める防衛費の割合が増大すると、民間で出回る資金が減少して投資が抑制される関係にあります。

つまり、大国は小国よりも防衛費の面で大きな負担を引き受けているだけでなく、経済成長の可能性をも犠牲にしているということが言えます。
例えば北大西洋条約機構のような大国と中小国の連合体で構成された同盟については、こうした傾向が確認されています(Olson and Zeckhauser 1966)。

同一の脅威に直面する同盟国の間でも、非対称な利害があるということが分かります。

このような同盟国間の国益の不一致という考えをさらに発展させると、戦時では特に軍事的理由から同盟国で国益の相違が明確になることも分かります。

ある研究では軍隊の基本的な機能を三つに区分しています。
・抑止の効果
・防衛と損害の最小化
・それ以外の各国に特有の目標の達成

ここで重要なのは上の二つの効果です。抑止は平時における軍隊の効果であり、防衛は戦時における軍隊の効果です。これまでの同盟の議論は平時を前提にしていましたが、ここでは戦時を前提に考えてみます。

戦争が勃発すると戦力を配分する地域について同盟国の間で重視する地域が異なってきます。
例えば、第一次世界大戦でオーストリアはセルビアに対する攻撃のためにロシアの脅威を非常に重視していましたが、同盟国のドイツはロシアの脅威に対処する前にフランスの脅威を排除することが戦争計画として優先事項とされていたのです。

ここで生じているのは同盟国の間での部隊の取り合いであり、これは戦時にならなければ表面化しない事態です(van Ypersele de Strihou 1967)。

このような研究成果は日本の安全保障にとって何を意味しているのでしょうか。

私たちは同盟についての直感的な考え方から日米同盟が日本の思惑通りに機能し、アメリカが裏切ることはありえないと考えてしまいがちです。

しかし、同盟理論の研究者たちが指摘しているのは同盟とはそのような性質のものではないということです。

アメリカが日本のために部隊を派遣することがあったとしても、作戦の方針が消極的であったり、部隊の規模が小さすぎるような事態も予期しなければなりません。
今後のアメリカの国内情勢の推移によっては、この種の見通しがさらに強化されることさえありえます。

したがって、日本が独自に防衛戦略を研究しておくことは依然として重要なことだと言えるのです。

KT

参考文献
Olson, M., and Zeckhauser, R. 1966. "An Economic Theory of Alliances," Review of Economics and Statistics, 48(3): 266-279.
van Ypersele de Strihou, J. 1967. "Sharing the Defence Burden Among Western Allies," Review of Economics and Statistics, 49(4): 527-536.

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