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2014年7月25日金曜日

モーゲンソーの全体戦争論


国際関係論の研究で知られるモーゲンソーですが、その著作には全体戦争に関する記述のために一章が割かれていることはあまり注目されていません。

モーゲンソーは全体戦争(Total War)に関する研究に依拠しながら、現代の戦争が従来までの限定的な手段によるものではなく、全体的な手段を行使する形態に変化することを主張しています。

特にモーゲンソーが指摘しているのは、第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけて、戦争で使用される軍事力の規模と効率が急激に変化したという点です。
「17世紀、18世紀において、人口の1%を兵役のために徴兵することは滅多に達成することができない大事業であった。第一次世界大戦ではヨーロッパ列強は人口の14%を部隊へと充当した。第二次世界大戦では主な交戦国が戦力に補充した人口の割合はそれよりある程度は低かった。⑩%を超えたのは、恐らくアメリカ、ソビエト、ドイツだけであった。武器の機械化が非常に発展したために、このように減少した」
また軍事力の効率を向上させた要因としてモーゲンソーは武器の発達と輸送や通信の発達を挙げています。
「武器の射程が全世界にまで拡大したことは、現代の戦争の性格や、その性格と現代の世界政治との関係にとって多かれ少なかれ意味があるものであり、しかもその意味は戦争の破壊力の増大がこの武器の射程の増大と歩調を合わせてきたかどうかによって変化する」 
「およそ19世紀の半ばまでは、記録に残された史料を見る限り、陸路と海路で最も早い行進速度は時速10マイルであったが、陸路でこの速度に達することは稀であった。20世紀初頭には鉄道により陸路の行進速度は最も速い列車で時速65マイルになったが、それは市場それまで達成された速度の6倍半であった。蒸気船は海路での航行を時速36マイルにまで加速させたが、これは従来の最高速度の3倍半の速度であった」
モーゲンソーにとって戦争がこのように変化したことは、全世界を征服することが技術的に可能となったことを含意していると考えていました。

モーゲンソーの議論によれば、こうした全世界を支配するための技術的条件とは(1)中央集権的な統制による住民の社会的統合の強制、(2)反乱の動きを封じ込める物理的な実力の保有、(3)支配と共生のための手段が世界のすみずみに配備されていることです。

これら三つの条件について、「これら三つの軍事的、政治的な必須の条件は、どれ一つとして過去に達成されなかったが、それらは現代では手の届く場所にある」というのがモーゲンソーの判断です。

その判断の適否については保留するとして、モーゲンソーの全体戦争論が国際関係論と密接に結びついていることは重要な論点だと言えます。
私としてはモーゲンソーが考えた戦争と国際関係の関係は研究を必要とする論点ではないかと考えています。

KT

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