政治家にとって権力を保持すること以上に重要なことなど存在するのでしょうか。 もし一旦権力を奪われれば、自分が望む政策を実行することも、自分を支持する人々を味方に繋ぎとめることも、政敵の合法的、非合法的な攻撃から身を護ることもできなくなります。 政治家にとって権力は重要な目標であるからこそ、古来より政治学者は権力を掌握する方法やそれを奪取する方法について考察してきたのです。 今回は、この問題を考えるために、政治家がその地位を守り通すための手法に関する政治哲学者ニッコロ・マキアヴェリの考察を紹介したいと思います。 味方を増やし、敵を封じ込める 1492年、グラナダは2年間にわたる攻囲を受けた末にスペインに降伏した。 左で騎乗した人物がグラナダ国王ボアブディル、中央で騎乗しているのがフェルディナント五世。 国家を統治する政治家の職務の基本は政策の立案、執行および評価であり、国民一般はその事業の成果によって利益を得ることが期待されます。 そのため、マキアヴェリも良い政策を遂行し、その事業で成果を上げることができれば、その政治家は名声を高め、支持を盤石なものにできると考えていました。 ただし、良い政策を行っていればそれでよいというわけではなく、マキアヴェリはその政策によって自分の政敵の動きを封じることが重要であることも示唆しています。 マキアヴェリはスペイン国王のフェルナンド五世(1452-1516)が当初はわずかな勢力しか持たないにもかかわらず、強大な権力を獲得できた理由について次のように説明しています。 フェルナンド五世はシチリア、カスティーリャの統治権を獲得すると、当時イベリア半島南部を領有していたイスラム王朝のグラナダ王国との戦争に踏み切りました。 英仏百年戦争で軍務の経験を積んでいたフェルナンド五世が戦争によって長年の国土回復を実現する見通しを持っていましたが、それだけでなくスペイン国内でしばしば国王に歯向かってくる地方貴族の注意を対外戦争へと向ける効果があったのです。 「当初はゆっくりと、そして疑念から邪魔が入らないようにフェルナンドは攻撃を続け、カスティーリャの封建領主の気持ちをそちらへと向けさせておいた。その戦争に気を取られて、彼らが反乱を起こすことなどを思いつかないようにしたのである。そして、その間にフェルディナ...
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