19世紀、イギリス議会ウェストミンスターの様子 戦争の勝敗を決めるのは武力だけではありません。 人口、地理、経済などさまざまな要因が戦争の結果を左右すると考えられており、政治体制もまたそうした一因と考えられています。 今回は、民主主義という政治体制が戦争の遂行において有利に働くのか、不利に働くのかを実証的に研究した論文を取り上げ、その成果の一部を紹介したいと思います。 文献情報 Bennett, D. S., and Stam, A. C. 1998. "The Declining Advantages of Democracy: A Combined Model of War Outcomes and Duration," Journal of Conflict Resolution , 42(3): 344-366. 民主主義で戦争指導ができるのか リンカーン大統領の就任演説時の写真 民主主義国家では権力掌握と政策決定のために多数派の支持基盤を獲得することが政治家に求められます。 平時においては、常に多数派の利害を考慮させることで、政治家の行動を統制しやすくなるため、国民全体にとって民主主義は望ましい統治制度だと考えることができます。 しかし、戦争状態という国家的非常事態において民主主義が望ましいと言えるのかどうかは議論が分かれるところです。 なぜなら、政治家の戦争指導が選挙や世論に絶えず左右されていては、その政権の政策や戦略に一貫性と整合性を保つことが難しくなる場合が出てくるためです。 こうした戦時の民主主義が持つ政治的不安定性は過去の研究においても指摘してきたことだと著者も述べています(Bennett and Stam 1998: 346)。 つまり、民主主義国家の政治指導者は選挙という懲罰のメカニズムに敏感に反応しなければならないので、そうした意味では権威主義的、独裁的な政治体制の国家の方が戦争指導の一貫性という意味では優位に立てる可能性があると考えられるでしょう(Ibid.)。 しかし、この議論はこれだけでは終わりません。 というのも、戦争の歴史を振り返ると、独裁的な国家は確かに民主主義国家よりも戦争を容易に開戦する傾向が強いのですが、勝利を収める確率を見ると、それは民主...
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