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中間層が減少するほど、政治家は急進化する

今回の大統領選挙についてですが、私は次のような質問を繰り返し受ける機会がありました。 「イデオロギー的に極端で、過激とも受け取れる候補者が、どうして多くの有権者の支持を集めているのでしょうか」 政治学者にとって、この疑問はそれほど難しいものではありません。社会の中で格差が広がり、中間層が減少するほど、極端な立場をとる政治家が支持されやすくなるという事象は、アリストテレスの時代から政治学者にとってなじみ深いものです。 今回は、2016年の大統領選で過激な主張を打ち出した候補が躍進してきた理由を政治学の観点から簡単に説明してみたいと思います。 政治の要諦は異なる階層の利害のバランスをとることである そもそも政治とは、国家を運営する技術であり、国民が社会的に分裂する事態を防止することも当然その技術に含まれています。 国内の分裂を防ぐ上で、政治家が知っておくべき基本的なテクニックとして、資産を多く持つ上流階級と、資産をあまり持たない下流階級の利害を適切に調整するというものがあります。 古代ギリシアの哲学者であり、政治学者でもあったアリストテレスは、次のようなことを政治の基本的な原則として述べたことがあります。 上流階級の発言権が強くなりやすい寡頭制においては下流階級の利益を重視する政策を行い、反対に下流階級の発言権が強化されやすい民主制においては、上流階級の利益を重視する政策を採用することが重要ということです。 これは一つの国内で階級が発生したとしても、両者の利害のバランスを図り、国内に格差が生じて来ることを防止するための処置です。 (詳細は「 講義録 アリストテレスが語る、政治の逆説的論理 」を参照) 中間層の増加するほど、穏健派が優勢となり、政情も安定する アリストテレスは上流と下流の階級の利害はどうしても対立的なものであり、どちらかの階級が国政を支配するような事態になれば、政策は他方の階級を抑圧し、政情が不安定になりやすくなると考えていました。ここで重要となるのが中間層の存在です。 中間層は上流階級と下流階級のどちらの立場からも距離を置き、穏健な政策を支持することができるため、国家の安定化にとって望ましい役割を果たすことが期待されるのです。 「よい政治が行われ得る国家というのは、そこにおいては中間的な部分が多数であって、で...

プラトンは戦争の原因をいかに説明しているのか

世界で最も有名な哲学者であるプラトン(前427年-前347年)は哲学者(知を愛する者)こそが権力者とならなければ、国家は不正から逃れることができないと論じたことで知られています。 当時、プラトンがいた都市国家アテナイの政治体制は民主制でしたが、プラトンは民主制が個々人の私益のために暴走する傾向を持ち、また矛盾と混乱に満ちているとして批判的立場をとっていました。それゆえ、国家を適切に指導する能力を持つ哲学者でなければ権力を掌握するべきではないと考えていたのです。 このようなプラトンの政治哲学はよく知られていますが、今回はプラトンの政治哲学を踏まえた上で、彼が戦争の原因をいかに説明していたのかを紹介してみたいと思います。 アテナイの政治情勢と哲人政治の必要性 当時のアテナイでは民会と呼ばれる市民集会の議決によって政策が策定されていました。民会に出席する議員はアテナイ人を両親に持つ30歳以上の成人男性でなければならず、自由市民としての身分を持ち、また有事においては兵士として従軍する義務を負わなければなりませんでした。 したがって、常備軍は編成されておらず、官僚制に関しても市民がくじ引きで任期ごとに分担しているという状態でした。 言い換えれば、当時のアテナイ市民は兼業として政務に従事しており、政治権力に対するアクセスが容易でした。このことが市民同士の権力闘争を加速させており、プラトンは強い問題意識を持っていたのです。 権力闘争によって国家の結束が損なわれる危険性を除去し、人々が財産や名誉等の短期的な利益ではなく、知恵や謙虚さ、公正さといった重要な美徳に沿って善い人生を送るためには、哲学者(つまり徳の重要性を理解している知識人)が国王の地位に就き、その合理的な判断の下に人々の思想と行動を統制することが重要である、とプラトンは考えました。 しかし、王と言ってもその哲学者は世襲制であってはならないとプラトンは主張しています。 その結果、プラトンの政治哲学では、男女分け隔てなく、あくまでも実力主義に基づいて国民を知的能力に優れた最適者、戦闘能力に優れた守護者、そしてその他の民衆に区分する国家の理想的モデルが提案されています。 現代の研究では、このようなプラトンの政治思想を民主主義の批判に基づく全体主義の擁護として解釈する見方もありますが、その...