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兵站システムから基地の機能を考える

基地の問題を考える際に私たちがまず思いつくのは、騒音の問題や近隣住民とのトラブル等かもしれません。 しかし、兵站学の立場から基地を考える場合には、その基地だけを取り上げることは適当ではありません。基地の価値は他の味方の基地の所在や、仮想敵国の部隊配備等によって変化するためです。 今回は、兵站の観点から基地の価値を分析する方法を説明するために、兵站システム(logistical system)という概念を紹介したいと思います。 兵站支援の概要 そもそも兵站の目的とは作戦部隊の戦闘力を維持増進するために必要な人員、武器、物資等を充足させることにあります。 このような目的のために使用される需品、整備、輸送、衛生等の職種の部隊は戦闘部隊と一般に区別され、兵站部隊と呼ばれます。 兵站システムとは、これら兵站部隊を有機的に組み合わせて運用するための組織のことであり、基本的には兵站基地(logistical base)と支援地域(support area)の二つ要素を組み合わせて構成されます。 非常に大雑把な整理をすると、兵站基地はより固定的な兵站支援の拠点であり、支援地域は作戦の進展に応じて所在が変更される流動的な兵站支援の拠点です。 しかし、兵站基地と支援地域もさらに細かく分類されます。 (1)兵站基地の分類 ・中央兵站基地:国家的観点から生産、流通にとって重要な地域に設定される兵站基地であり、兵站システムの中枢を構成。 ・方面兵站基地:方面隊(軍団レベル)がそれぞれの作戦地域において設けられる兵站基地。 ・方面前進兵站基地:方面兵站基地の分派として状況の必要に応じても受けられる兵站基地。 (2)支援地域の分類 ・前方支援地域:師団等を直接支援する方面隊の兵站部隊が展開する支援地域。 ・師団段列:師団の人事・兵站に関する業務を遂行する部隊、機関の総称。 ・部隊段列:連隊・大隊等において人事・兵站に関する業務を遂行する部隊、機関の総称。 戦略兵站・作戦兵站・戦術兵站の区分 順番に説明すると、中央兵站基地が全軍の兵站システムの中心として位置付けられます。 そこを起点として主要な戦略単位である軍団の作戦地域に置かれた兵站基地がそれぞれ設定されます。 一般に戦略兵站(strategic logistics)と呼ばれるのは、この...

クラウゼヴィッツの兵站学

戦場において危険と苦痛に立ち向かうことは、兵士として最も優れた美徳と言えるでしょうが、それは各人の空腹が満たされている場合にのみ発揮することができると言っても過言ではありません。 食料を欠かさず部隊に提供することができなければ、どれだけ多数の兵士がおり、どれだけ高価な武器が配備されていたとしても、戦争を遂行することは不可能です。 今回は、クラウゼヴィッツの著作で兵站学の観点から補給、特に兵士の食糧を給養する問題に関する考察を紹介したいと思います。 「軍の給養は、近代の戦争においては往時に比して遥かに重要な事項になった。しかもそれは二件の理由による。第一は、一般に近代の軍は、兵数において中世の軍はもとより古代の軍に比してすら著しく巨大になったということである。(中略)第二の理由は、これよりも遥かに重要でありまた近代に特有のものである、即ち近代の戦争における軍事的行動は、以前に比して遥かに緊密な内的連関を保ち、また戦争の遂行に当たる戦闘力は不断に戦闘の準備を整えているということである」(中216) 近代戦争において敵と継続的に対抗し続けるために、独立した補給体系が確立されたことは、クラウゼヴィッツにとって必然的なことだと考えられていました。 特に、フランス革命が勃発して以降の戦争で実施された兵站の方式を見てみると、フランス軍の将軍たちは軍隊の補給の一切を徴発、奪取、略奪に頼るようになっており、これが戦争を遂行する新方式になったと述べられています(中221)。 さらに詳細に当時の兵站を調べると、このような現地での物資の調達にも四種類の異なる手法が組み合わせて用いられていたことが説明されています。 ・舎営する市町村による給養 これは人口稠密地において貯蔵されている食料を軍隊に提供させる方法であり、一般に都市部よりも農村部において調達が容易であると述べられています。 クラウゼヴィッツが述べているところによると、1平方マイル当たり2000名から3000名の人口を有する地方であれば、150,000名の軍隊は1日から2日は食料の補給に支障を来すことはありません(中224)。 ・軍隊自身の徴発による給養 ここで考慮されているのは10,000名程度の師団の補給であり、それ以上の規模の部隊の給養であれば、このような方式は有効ではないとされています。と...