国家を指導する立場にある政治家にとって最も重要な仕事は、その国家の安全を確保することであり、引いては国民の生命と財産を守ることに他なりません。 そのために国家の能力を適切に開発または運用するための一貫性を持った政策を打ち出す必要が出てくるのですが、国内の政治情勢によってはこれは容易くできないこともしばしばです。 今回は、安全保障上の脅威が目前に迫っているにもかかわらず、国家として対応するために必要な政策決定を下せない状況を考察したシュウェラーの研究を取り上げ、その要点を紹介したいと思います。 文献情報 Randall L. Schweller. 2006. Unanswered Threats: Political Constraints on the Balance of Power , Princeton: Princeton University Press. アンダーバランシングとは何か 国際政治の理論、特に勢力均衡(balance of power)理論では、ある国家が自らに及ぶ脅威を認めると、軍備を拡張し、同盟を強化する等の処置を講じ、バランシング(balancing)を図るものであると考えられています。 著者も「勢力均衡理論では、全ての国家が同じような抽出された能力を保持し、集約された国家の資源が実際の国力や対外的影響力と同等であるものと想定されていた」と従来の学説を説明しています(Schweller 2006: 13)。 しかし、著者は同時に政治の現実はこの理論の通りには動いていないと指摘します。 これは国家は脅威に対抗する上で十分な資源を持っていても、それを適切に運用できない場合が見られるということです。 このように勢力均衡理論に反する事象を著者は「アンダーバランシング(underbalancing)」と呼んでいます。(ちなみに脅威の程度に比して過剰な防衛反応を取ることをオーバーバランシング(overbalancing)とも呼んでいます) アンダーバランシングはなぜ生じるのか、という疑問について著者は次のように応答しています。 「対外的環境における類似の変化に対し、国家がそれぞれ異なる仕方で反応する要因とは、第一に関係する政治的、社会的主体の選好であり、第二に彼らの行動を制約し、また行動を促進するよう...
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