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変化する戦闘様相と諸兵科連合大隊の必要

諸兵科連合(combined arms maneuver)とは、任務を遂行するために、兵科・職種の区別を超えて味方の戦闘力を斉一的、同時的、総合的に発揮することをいいます。現在の自衛隊では諸職種連合と呼ばれますが、指揮、近接戦闘、火力戦闘、対空戦闘、戦闘支援、後方支援の機能を兼備して、各職種の部隊の能力を有機的に総合発揮することであると考えられています。 今回は、諸兵科連合部隊の理解を深めるため、米陸軍における諸兵科連合大隊(Combined Arms Battalion)の編成と運用について説明したいと思います。 諸兵科連合大隊の編成 諸兵科連合大隊の組織的特徴について米陸軍の教範では次のように述べられています。 「諸兵科連合大隊の指揮官は通常、大隊の任務を遂行するため、隷下の中隊を機甲部隊と歩兵部隊を混成した戦闘団として編制する。この中隊戦闘団は戦車、ブラッドレー戦闘車、歩兵、支援部隊を含む隷下部隊の相乗効果を増大させる効率性を持った組織である。これらの部隊は幅広い種類の能力を保持するが、多数の脆弱性を持ってもいる。諸兵科連合部隊として中隊戦闘団の効率的運用は戦闘団の隷下部隊の戦力を増大させ、その一方で各々の限界を最小限にするものである」(ATP 3-90.5: 1-9) つまり、諸兵科連合大隊の指揮官は大隊長という地位にもかかわらず、それぞれの兵科の専門的領域を超えて複数の兵科の利害得失を組み合わせるという能力がなければなりません。米陸軍の諸兵科連合大隊の指揮官の場合、歩兵と戦車を連携させる方法について高度な運用が求められるのです。 諸兵科連合大隊の任務組織は極めて柔軟性が重視されており、大隊本部の下で機械化歩兵中隊と戦車中隊が置かれているため、任務に応じて柔軟に必要な戦闘力を発揮できるように考慮されています。 諸兵科連合大隊における歩兵中隊の編成。 中隊本部に機械化歩兵小隊3個で構成されている。(Ibid.: 1-10) 諸兵科連合大隊における戦車中隊の編成。 中隊本部に戦車小隊3個で編成されている。(Ibid.) 諸兵科連合大隊における本部中隊の編成。 大隊の斥候小隊、迫撃砲小隊、衛生小隊、通信班、狙撃班は本部中隊の下に置かれている。 (Ibid.: 1-11) 諸兵科連合大隊で特徴なのは、通常なら歩兵部...

フラーの機甲戦思想と戦車の戦略的重要性

研究者は第一次世界大戦に実戦投入された戦車が、その後の戦争の歴史を大きく変えるだけの影響を持っていたことを(程度の差はありますが)広く認めています。しかし、この影響はしばしば戦術的レベルしか理解されていません。 今回は、戦車が戦略的レベルでどれほどの影響を及ぼしたのかを考察した フラー (J. F. C. Fuller)の学説を紹介し、それを説明したいと思います。 機甲戦の可能性を予見したフラー J.F.C. フラー(1878-1966) 第一次世界大戦でイギリス軍の実験的な戦車部隊の運用研究で重要な成果を残したものの、戦後の予算縮小や戦車に批判的な立場を取る勢力との対立に直面したことなどから、次第に戦車から遠ざけられて退役した。機甲戦に関する学説は現在でも世界的に知られている。 フラーは、近代以降における軍事学の研究に貢献したイギリスの軍人であり、戦車の運用研究に寄与したことで知られています。 彼は第一次世界大戦で新設された戦車軍団で本格的な戦術研究に着手し、史上初の機甲戦とも呼ばれる1917年のカンブレーの戦いにも参加しています。その後、幕僚大学校で教官となった後に1930年に退役し、軍事学の著作を数多く発表しました。 フラーの学説の特徴は戦車が次世代の戦争を考える上で見過ごすことができない重要な武器体系であることを予見し、まだ戦車の技術的発達が十分でなかった頃から機甲戦の意義を主張していたことにあります。 彼の学説では確かに戦場における戦車の戦術的運用が中心的な課題とされていますが、しかし戦争における戦車の戦略的運用についても大きな関心を寄せてもいました。 「戦術は戦場で兵士を動かす技術であり、それは使用する武器と輸送手段によって変化する。新しい武器や改良された武器または移動方法は戦争術において適切な変化を必要とするものであり、現代においては戦車の導入が戦争術における抜本的な変革を求めている」(Fuller 1936) ここでも戦車は単に塹壕戦の問題を解決する一手段ではなく、戦争の歴史において一つの画期と見なすべきであると考えていたことが分かります。フラーは戦車を広い戦争史の文脈に位置付けて理解していたのであり、その導入によって戦術だけでなく戦争術全般が変化する可能性を指摘していました。 戦車...

攻撃だけが戦車の仕事ではない

戦車という装備は、その速度を発揮して敵に迅速な攻撃を行う場合にこそ適しており、防御に回るとその能力を十分に発揮できないという考え方は、結局のところは間違っているのですが、普通の人からすれば説得力がないともいえません。 戦車の優位が優れた路外での運動性能にあることは事実ですし、そもそも陣地防御を行う場合に戦車がどのような要領で敵と交戦しているのかをイメージしずらいところがあるからかもしれません。 これまでにも戦術研究の観点から戦車小隊の運用方法に関して何回か取り上げていますが( 戦車小隊の戦術とその隊形 、 敵の戦車を側面から射つためには )、今回は陣地防御における戦車の戦術に関して説明します。戦車が陣地防御においても適切に運用すれば大きな戦果を上げることができるということを知って頂くきっかけとなればと思います。 陣地防御における戦車小隊の基本動作 戦闘陣地に展開した戦車小隊の各車両の射線は敵が接近の際に使用する経路を把握しておくだけでなく、小隊長においては車両ごとにどの目標を射撃するのかを予め指示しておくことで与えられた火力を最大限に敵に対して発揮できる。 (FM17-15: 105) 防御の本質は敵の攻撃を破砕することにあるため、必然的に防御に回る戦車小隊の車両はそれぞれ陣地で敵を待ち受ける態勢となります。 ただし、敵との交戦が始まると各車両は当初の陣地に止まり続けて戦うのではなく、事前に指定しておいた戦闘陣地へと移動を続けながら各要点で敵に射撃を加え続けるのです。 戦車小隊は通常だと4両で編成されていますが、こうした陣地転換の際には2両ずつ交互に敵を制圧しつつ移動を行うことで安全を確保することは、攻撃の交互躍進の要領の応用となります。 戦闘陣地でハル・ダウンとタレット・ダウンを使い分ける しかし、戦車が陣地に配置されているからといって安心するわけにはいきません。戦闘陣地で戦車が射撃している際には、ハル・ダウン(Hull-down)という姿勢で射撃を行っています。 ハル・ダウンは戦車が射撃のために上部の砲塔部分を稜線から乗り出して暴露させているため、敵の射撃を受ける危険があります。もしハル・ダウンの位置に車両を前進させるとしても、その位置を占める時間を最小限にするように各車長、小隊長は留意する必要があります。 戦闘陣地で...

論文紹介 主力戦車M1エイブラムズの意義と限界

アメリカ軍の主力戦車M1エイブラムズは数多の戦場で戦果を上げた世界的に有名な戦車です。1981年の採用からすでに35年もの歳月にわたって世界各地でアメリカ軍の作戦を支えてきました。 確かな評価を得ているM1ですが、近年のアメリカ軍の研究では対中戦略に重点化するならば、エイブラムズの数を減らすことも選択肢の一つではという考え方が真剣に議論されるようになっています。 今回は、このような議論に対して批判的な立場をとる研究者がM1の能力を考察した論文を紹介したいと思います。 文献情報 Wahlman, Alec, and Brian M. Drinkwine. 2014. "The M1 Abrams: Today and Tomorrow," Military Review , (November-December) pp. 11-20. http://usacac.army.mil/CAC2/MilitaryReview/Archives/English/MilitaryReview_20141231_art006.pdf 現在、アメリカ軍では予算の削減を受けて戦車の削減を進めようとしています。著者は戦車の削減それ自体に反対するわけではないと前置きした上で、M1がどのような能力を持つ戦車であり、それがどのような戦術的な重要性を持っているのかを改めて検討するべきであると主張しています。 戦車は必要とされているのか 著者は議論を始めるに当たって、二つの疑問があると述べました。第一に、我々は主力戦車をいまだ必要とするのか。第二に、M1は将来的にその目的の達成に寄与するのか。以上の二点です(Wahlman and Drinkwine 2014: 12)。 確かにM1は当初、冷戦期のヨーロッパにおいてソビエト軍の機甲部隊と交戦することを想定して設計されており、アメリカは現在のところそのような大規模な機甲戦を想定する状況にはありません。しかし、戦車はその優れた防護性をアフガニスタンでの作戦に活用しており、2011年で同地に派遣されたM1が配備された機甲中隊は1名の負傷者だけを出して任務を完遂しています。これはストライカー装輪装甲車が配備された部隊の損害と比べると19分の1でしかありません(Ibid.: 13)。 この事例からも、...

敵の戦車を側面から射つためには

戦車は一般に車体の正面が装甲で防護されていますが、側面の防護は比較的脆弱という特性があります。 つまり、敵の戦車を撃破するには、正面ではなくその側背を狙う方がはるかに効率的であり、また我が方の戦車が撃破されないためには、各車両の側面が敵に暴露していないかどうか気を付けなければなりません。 今回は、味方の戦車の側面を守りながら、敵の戦車の側面を狙うために、どのような小隊射撃の方法が存在するのかを紹介し、それらが戦術的にどのような重要性を持つのかを簡単に説明したいと思います。 まず、戦車小隊射撃の基本として正面射撃(frontage fire)があります。 これは前方から横隊で接近してくる敵の戦車に対して、我が小隊も横隊に展開させ、各車両ごとに正面の目標を射撃させる方法です。 正面射撃。 敵の戦車に対して我が戦車小隊がそれぞれ正面の目標を射撃している。 実線の矢印は最初の射撃で点線の矢印は次の射撃を表している。 (ATP 3-20.15: 7-10) もし敵の戦車が味方の戦車よりも多数である場合には、側面の目標から中央の目標へ、また中央の目標から側面の目標へと順番に射撃を実施しますが、適切な優先順位は地形や敵情によって異なるため、指揮官の判断が求められます。 正面射撃は最も単純な射撃パターンであるため、各車両が目標を確認しやすく、指揮官も小隊の射撃を統制しやすいという利点があります。 しかし、この方法だと目標車両の正面を狙うことになるため、味方の主砲の威力が敵の正面装甲を貫通できなければなりませんし、敵の戦車から射撃を受けるという危険も考慮しなければなりません。 こうした問題を解決するために編み出されたのが交差射撃、そして縦深射撃です。 交差射撃。 味方の戦車は敵の戦車から射撃を受けることがない場所に位置する。 そこから各車両が照準可能な敵の戦車の側面を射つ。 (ATP 3-20.15: 7-11) 交差射撃(cross fire)は正面射撃に伴う危険を最小限にするための射撃方法です。 これは横隊で接近する敵の戦車の正面に味方の戦車を配置させますが、地形を利用して正面から敵の射撃を受けることがないようにしておきます。 これでは味方の戦車も敵の戦車を射つことができないように見えますが、交差射撃は各車両が自分の正面...

論文紹介 対ソ戦略とヘリコプターの機動力

第二次世界大戦後の陸上作戦においてヘリコプターが果たしてきた役割は非常に大きなものがあります。 ヘリコプターの技術は1937年にドイツで開発に成功しましたが、実戦で本格的な使用を始めたのはベトナム戦争を戦っていたアメリカでした。 ベトナム戦争の経験からヘリコプターが地上戦で有用であることが明らかになると、ヨーロッパ各国では来るべきソ連軍との戦争でヘリコプターを活用できないか検討が進められることになります。 今回は、1970年代初頭にヘリコプターがソ連軍との地上戦で果たすであろう役割に関する論文「ヘリコプターと地上戦:ベトナム戦争での経験から」を紹介します。 文献情報 Trueman, H. P. 1971. "The Helicopter and Land Warfare: Applying the Vietnam Experience." Moulton, J. L. ed. Brassey's Annual, The Armed Forces Yearbook . 著者はイギリス軍の軍人であり、ベトナム戦争で活躍したヘリコプターの能力をイギリス陸軍としてより活用するためには、どのような作戦構想が考えられるのかという問題に関心がありました。 とはいっても、ベトナムとヨーロッパではそもそも作戦の環境が異なる点があることについて著者は留意する必要があるとも考えていました。 「ベトナムにおいてヘリコプターが果たした役割の大部分が、ヨーロッパの環境だと適用できないことは極めて明らかである。しかし、逆説的に言えば、ヘリコプターの活動が制限されることによって、味方の前線に加えられる(ソ連軍の)脅威の一部が緩和され得るかもしれない。(ヨーロッパとベトナムの)最も顕著な相違点として、ベトナムでは空中に敵な脅威が存在しなかったのに反して、ヨーロッパでは極めて強力なその脅威が存在することを予想しなければならないことである」 ベトナム戦争で北ベトナム軍の航空勢力が問題にならなかったという評価をしている点については著者は事実を誤認しているかのような印象を受けます。 しかし、北ベトナム軍と比較すればソ連軍との戦争ではより強力な飛行隊の脅威を受けることになることは確かであり、著者は西側各国の操縦士たちが非常に高い水準の技能を身に...

戦車の戦術でも重要な射撃と運動

戦車は一見すると頑丈な装甲を備えているため、敵の弾幕を気にせずに自在に戦場を機動できるようにも思われるかもしれません。 しかし、実際には地形を利用せず、味方車両の援護もなしに戦場を動き回ることは非常に危険な行為です。 今回は、戦車小隊の観点から戦車の運動にどのような種類があるのかを示し、射撃と運動の原則が戦車の戦術にも適用可能であることを紹介したいと思います。 (戦車の運用については戦車小隊の隊形を取り上げた 以前の記事 も併せてご参照下さい) 戦車小隊の運用に関して解説した米陸軍の教範では、戦車の運動で注意すべき事項について以下の通り述べられています。 ・空際線に乗り出してはならない。 ・開けた場所は素早く通過すること。 ・援護された交戦中の位置から敵に向かって直進してはならない。 ・敵と不利な態勢で戦うよりも険しい地形を通過するほうが容易であるため、敵の射手が待ち構えている危険な場所を避けて行動すること。 ・敵を制圧または妨害するために、煙幕の使用、直接照準、間接照準による射撃などの対抗措置を積極的にとること。 ・地雷原や障害、敵を誘い込むのに適した危険な地域を特定すること(ATP 3-20.15: 3-15)。 これらの着眼は、いずれも敵の射界に不用意に侵入することを避けることの重要性を示唆するものです。 しかし、状況によっては敵の射界をあえて前進しなければならない場合も出てきます。そのため教範では小隊の車両がお互いに掩護しながら交互に躍進する運動方法についても説明されています。 敵の脅威が予想される地域を前進する場合、戦車小隊の車両を2両ごとに分けて交互に前進させ、先行する車両は後からついてくる車両を支援するために射撃姿勢をとります。 この間に後続の車両も前進し、先行していた車両を追い越して前方で射撃の態勢をとります。 このようにすれば敵に対して無防備になることなく前進することができます。 交互の躍進による戦車小隊の前進運動の方法。 第一に右の二両が正面の丘まで前進し、次に左の二両も正面の丘へ前進する。 これを交互に繰り返すことで小隊の車両が敵の脅威に無防備になる危険を最小限にすることができる。 (ATP3-20.15: 3-17) このような技術は射撃と運動(fire and movemen...

戦車小隊の隊形とその戦術的な特徴

陸上戦闘だけで考えるのであれば、戦車は最も強力な武器体系に位置付けられます。 戦車は戦闘で必要な火力、機動、防護という機能をバランスよく兼ね備えており、もし戦場でこれを発見したならば最優先で対処すべき脅威として指導されます。 今回は、戦術の観点から戦車小隊の隊形について紹介したいと思います。 まず戦術とは一般に戦闘で任務を遂行するために部隊を運用するための科学または技術のことを意味しており、味方の部隊が敵の部隊に対して有利な態勢を占めるための機動を指示することもこれに含まれます。 次に戦車小隊(tank platoon)について述べると、これは戦車部隊の基本的な単位であり、車両4両によって編成され、各車両に車長、砲手、装填手、操縦手の4名が搭乗するのが一般的な編成です。 戦車小隊の戦術において基本となる隊形にはいくつかの分類がありますが、米軍の教範で紹介されている戦車小隊の隊形には次の種類があります(以下の解説はATP3-20.15: 3-14を参照)。 縦隊(column)は部隊行動の統制が容易であり、側面に対する射撃にも適しているが、正面では十分に火力を発揮することができないので、敵の部隊と接触する恐れが少ない場所で、経路が狭まった狭隘な地形を通過する時に使用すべき隊形です。 千鳥縦隊(staggered column)縦隊の特性を残しつつ、正面と側面に対して火力を発揮することができる隊形であり、特に敵の部隊と接触する恐れがある地域で迅速にその場所を通過する必要がある時に使用します。 突撃隊形(wedge)正面に対して最大限の火力を発揮できると同時に、側面に対しても良好な火力を使用することが可能な隊形であり、若干の起伏がある地形や広漠とした地形で敵の部隊に対する突撃に適しています。 V字隊形(vee)は正面に対する射撃にはあまり適しておらず、部隊の統制と防護を優先した隊形です。狭隘な地形で視界や機動が妨げられている場合、前方を進む車両を後方の車両が視界に入れて警戒しながら前進する際に使用できます。 円形隊形(colt)は戦車小隊が他の小隊から独立して行動する場合、防御体制を準備するために使用され、小隊長が登場する...

論文紹介 軍事技術それ自体は解決策ではない

あらゆる軍事技術はまず戦場でその効果を発揮しますが、必ずそれは戦略的な影響をももたらします。 したがって、軍事技術を理解するためには、戦術と戦略を深く理解することが必要となります。 今回は1970年代に登場したミサイルの技術が西側陣営の防衛力を高めるのではなく、かえって危険にしている側面があると指摘した研究を紹介したいと思います。 文献情報 Kennedy, R. 1978. Precision ATGM's and NATO Defense , Carlisle: Strategic Studies Institute U.S. Army War College. 1970年代、精密誘導の技術が向上すると、西側では対戦車ミサイルを活用することで歩兵でも簡単に戦車を撃破することができるという楽観的な見方がありました。 それ以前の陸上戦闘では、一般に機甲師団が高い攻撃能力を持つという前提から、陸軍の中核的存在として位置づけられており、実際にソ連軍は西側よりも多くの機甲戦力を保持していました。 しかし、対戦車ミサイルがNATOの部隊に配備されたことによって西側の防御能力はWPの攻撃能力に優越する可能性があると西側の専門家の間で考えられていたのです。 しかし、この研究で著者が指摘しているのは、機甲師団の戦闘効率が対戦車ミサイルにより低下すると、ソ連の軍事戦略における核戦力への依存度がより増大するという点でした。 「対戦車誘導弾技術が陸上戦術に革命をもたらし、戦車による攻撃を潜在的に放棄することが議論されるようになった今日、ソ連としては対戦車防御を突破する手段として初期から考えていた核兵器に依存する戦略に復帰することに強い誘惑を感じただろう」 これは多くの専門家にとって意外な指摘でした。 専門家たちは問題をWPの中核である機甲師団の攻撃を対戦車ミサイルによって阻止することだけに限定していました。 そのため、ソ連の軍事戦略の全体像が見過ごされ、核戦力によって機甲戦力を補完する可能性を十分に考慮に入れていませんでした。 著者は、ソ連が核戦力を重視する軍事戦略に回帰した場合に予想されるシナリオを次のように考察しています。 「ソ連の専門家が書いているように、核攻撃を予想するとき防御者はその部隊を分散しておかなければならな...