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論文紹介 市街戦でも榴弾砲は活用できる

砲兵はその強力な火砲の威力を随時、随所に発揮し、歩兵や戦車の攻撃前進を支援することができます。 しかし、砲兵火力は市街地に立てこもる敵が相手になると、さまざまな建物で弾道が妨げられ、その威力を発揮しにくいという問題もあります。 今回は、そんな砲兵部隊が市街戦で火力を発揮するため、どのような射撃方法を採るべきかを考察した砲兵科下士官の論文を紹介したいと思います。 論文情報 Coyle, Patrick J. "Indirect Fire in MOUT," Infantry , Vol. 72, No. 2(March-April 1982), pp. 11-13. 市街地に数多く生じる死角の問題 市街地は部隊行動にとって狭隘なだけでなく、無線通信が通じにくいことも多く、部隊は容易に現在地を見失います。これら事情によって砲兵部隊は市街地でさまざまな戦術問題に直面することになります。 高層建築物で掩護された目標に対してどのように射撃を行うのかもその一つといえます。 この論文で著者が取り上げているのは、市街地に特有の高層建築物で掩護された射撃目標、いわば砲兵にとって死角に潜む目標を榴弾砲で撃破する方法です。 「これら弾道学的な諸問題の基本とは、都市部における目標に対して射撃を行う間接照準射撃装備〔火砲〕の限界である。この問題は火砲から放たれた砲弾の落角(angle of fall)と建築物の高さが組み合わさることで生じる。この組み合わせが間接照準射撃にさまざまな大きさの死角をもたらし、そこに適当な数の砲弾を到達させることができなくなる」(Coyle 1982: 11) 落角とは射撃用語の一種であり、弾道の原点から延びる延長線と砲弾が落下する際に描く線とが交わる角度をいいます。地面に対する砲弾弾道の入射角とイメージしてもよいでしょう。 いくら強力な榴弾砲といえども、射撃の目標となる敵陣地や敵部隊が建築物で掩護されていれば、命中させることは物理的に不可能です。 これは高層建築の密度が高まる都市中枢において特に深刻な問題であり、この地区に突入する歩兵部隊は必要な火力支援を要請できないということになってしまいます。 しかし、著者はそのことを理由に砲兵火力の利用をあきらめるのではなく、市街戦に特有の砲兵火力の利用方...

兵士の眼から見た都市の地形

戦術学では戦場の地理的特徴に関する分析のことを地形分析(Terrain Analysis)と言います。 地形分析では、その戦場の地形が平地なのか、山地なのか、植生で視界や射界は狭いのか、広いのか、道路はどの方向に向かっているのか、河川には架橋されているのか、などの事項を検討し、任務遂行との関係から評価しなければなりません。 今回は、軍事地理学の観点から、都市が戦場となった場合にその地形としての特性がどのようなものとして映るのかを説明してみたいと思います。 都市の特徴とその多様な形態 都市にはその地域の特性を反映してさまざまな形態がありますが、共通する特徴として都心部と周辺部で建物の種類や密度が異なること、それと関連して人口の集中度が異なることが挙げられます。 都心部から外方へ移動するほど、そこに分布する建物の密度は低下し、建物の高さも低くなっていきます。建物はそれぞれ防御陣地として利用することができるため、都市の中央に向けて前進するほど敵を捜索するために要する時間は長くなり、また警戒に要する労力も大きくなっていきます。 一般的な都市の構成要素を大まかに図示した写真。 郊外の工場地帯(outlying industrial area)、高層住宅地(High Rise Areas)、 周辺部(core periphery)、商業地帯(commercial ribbon)、都心部(city core)、不規則に拡散した住宅地(residential sprawl)といった要素が分布している。 (FM3-06.11: 2-1)より引用。 しかし、全ての都市が都心部を持つというわけでもありません。古代から近世までに建設された都市は都心部でも建物の密度や建物の全長があまり変化しない場合もあるためです。四周に防壁をめぐらせて、市街に建物を密集させることにより、市街地へと進入してきた敵の前進速度を低下させる効果を狙った設計であり、都心全域において建物の密度が非常に高い場合があります。 城壁によって四周を取り囲まれ、高密度に建物が配置された都市の一例。 車両が進入できる道路が極めて限られている場合が多く、下車戦闘を強いられる地形が少なくない。 (Ibid.: 2-4)より引用。 さまざまな都市の形態があることが理解できると、一般に市街戦と言っても...

市街戦における歩兵小隊の攻撃について

現代の安全保障環境では二つの理由から市街戦がその重要性をますます高めています。第一の理由は人口の増加と都市化の進行によって市街地の面積が増加する傾向にあることであり、第二の理由は経済発展に伴って不正規戦争、ゲリラ戦争、テロリズムの有効性が増大していることです。 今回は、市街戦における歩兵小隊・分隊の基礎的な運用について取り上げ、特に攻撃に関する問題を中心に説明したいと思います。 市街戦での建物に対する攻撃の実施要領 あらゆる作戦はその活動の形態から攻勢作戦と防勢作戦に分かれますが、市街戦の部隊行動にも同様に攻撃と防御があります。 市街戦で実施する攻撃も、その他の地形の場合と基本的な要領は変わりませんが、市街戦で攻撃の目標となるのは建物であるため、それに応じた攻撃の手順を考えなければなりません。 攻撃する建物の周囲を取り囲み、外部から敵の増援が進入できなくした状態の一例。 左右両翼の小隊と戦車が敵を警戒するため建物を挟む道路に対する射線を確保。 この状況で残る歩兵小隊が建物に対する強襲を実施することが可能となる。 (FM 3-21.8: 7-38) まず市街戦における歩兵小隊の攻撃は必ず他の小隊の支援を受けて実施しなければなりません。ある建物に対して攻撃する際にも、その建物に隣接する建物や道路から敵の増援が出現すれば、そのまま部隊がその建物から移動することができなくなってしまう恐れがあるためです。 そのため、先に挙げた図のように、攻撃の際にも支援に当たる小隊と、強襲に当たる小隊で役割を分担することが重要となるのです。 建物への突入と突破口の確保 建物に対する突入の部隊行動を分析すると、突破の攻撃機動の方式と強い類似性が認められます。敵の陣地で弱点となっている地点を見極め、そこに火力を集中し、一挙に敵の陣地に進入して突破口を拡張しながら前進するのです。 しかし、最初に突入する地点が狭いと有効な援護射撃ができないため、どのような装備で最初の突破口を形成するかを適切に選択する必要があります(Ibid.: 7-39)。手榴弾などは閉所に対する突入で最もよく使用される武器の一種です。 さらに建物の攻撃を考えると、地上階から突入を行う場合(bottom entry)と屋上から行う場合(top entry)があります。 前者の場合、既...