現代の日本のグローバルな経済活動を基礎から支えているのは海運であり、その重要性は今後も拡大すると予想されます。 船舶により輸送される物資が増大し続ける一方で、この輸送を安全に維持する必要もますます強まっています。特に日本が太平洋からインド洋にまで跨る長大な海上交通路に依存していること、中国が海洋進出の動きを強めていることが、その必要性を一層大きなものとしています。 今回は、この問題を考える参考として、1960年代にソ連が海軍を急速に増強し始めた時期にイギリスで書かれた論文を紹介したいと思います。 文献情報 Schofield, B. B. 1969. "Collective Security and the Defense of Shipping." Proceedings Magazine , Vol. 95/3/793. 海洋国家であるイギリスにとって海上交通路の安全を確保することは最も重要な安全保障上の課題とされてきました。 これは核戦争の危険が認識されるようになった冷戦期においても基本的に変わることはありませんでした。 しかし、1960年代からソ連海軍による海洋進出の動きが活発化すると、イギリスの知識人や軍人たちは改めて海上交通路の保全という戦略問題を検討し始めます。この論文の著者である元英海軍提督のスコフィールドもその一人でした。 著者は海洋国家が直面する限定戦争は、つまり核が使用されない戦争を想定すれば、大きく干渉戦争と隠密戦争の二種類に区別されると指摘しています。 干渉戦争とは、イギリスが海を隔てたヨーロッパ大陸の沿岸部に地上部隊を海上輸送で直接送り込むか、少なくとも沖合から間接的に大陸の政治・軍事情勢に影響を及ぼすことを目指すものです。 しかし、もう一つの隠密戦争(gray war)はより海上に重点が置かれた戦争の一形態です。 それは海上交通路を利用する側とそれを阻止する側の断続的な海上での交戦であり、このような戦争でイギリスは政治的、地理的理由から防衛者の立場にあります。 したがって、イギリスはソ連と隠密戦争となった場合には、自国の海上交通路を守るための戦闘艦艇を建造しなければなりません。 しかし、イギリスの海上交通路は全世界に広がっており、それら全てをソ連の潜水艦から保護するだけの戦力を...
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