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論文紹介 オフショア・コントロール(Offshore Control)とは何か、日本の視点から

中国が 接近阻止/領域拒否 の能力を強化していることを受けて、 エアシー・バトル という構想で米国はこれに対抗すべきという議論が研究者の間で議論されたことは、以前の記事で説明した通りです。 しかし、最近の戦略論争ではエアシー・バトルの構想に対して批判的立場を取る研究者も少なくなく、近年の米国国内の政治情勢が国防予算の増額を妨げている以上、より現実的な戦略を策定する必要があるという論調が見られます。 今回は、このエアシー・バトルの代替案となる戦略としてオフショア・コントロール(Offshore Control)の実効性を主張した研究の要点を紹介したいと思います。 文献情報 Hammes, Thomas X. 2012. "Offshore Control: A Proposed Strategy for an Unlikely Conflict," Strategic Forum , National Defense University, SF No. 278, (June), pp. 1- 16. http://www.dtic.mil/dtic/tr/fulltext/u2/a577602.pdf (Accessed, 2016 Feb. 4) 中国が核保有国である事実は見過ごせない エアシー・バトルとオフショア・コントロールの違いとして興味深いのは、オフショア・コントロールが米中間で核のエスカレーションが発生する危険をより重視している点です。 中国は核保有国であり、弾道ミサイル攻撃を行う能力があるのですから、政治的決断が下されれば通常兵器による戦争を核兵器による戦争へと移行させることが理論上は可能です。 したがって、米国が対中戦略を考える際には、以下のような想定を置くことが必要であると著者は論じています。 前提(1)中国の側が紛争を開始する。 前提(2)中国との紛争は長期化する。 前提(3)米中の大規模紛争は世界経済に甚大な損害を与える。 前提(4)米国は中国の核使用に関する意思決定過程を理解していない。 前提(5)宇宙及びサイバー空間では第一撃が大きな優位性をもたらす(Hammes 2012: 3-4)。 これらの想定を踏まえれば、米国が中国を全面的に攻撃するような戦略は実行不可能です。 ...

今さら聞けない中国軍の接近阻止/領域拒否(A2/AD)

最近の日本の安全保障に関する研究者、自衛官の間では、中国軍が「積極防衛」という基本方針に従って、「接近阻止/領域拒否」(英語でA2/ADと略されることもあります)の能力を強化しており、このことが北東アジア地域における米国の抑止力を低下させる恐れがあるという状況判断が、議論の前提として広く共有されつつあります。 しかしながら、このような議論は依然として国民の間で共有されているとは言い難い状況が続いていると思います。 その背景には米国での議論を日本に持ち込む際に「A2/AD」というペンタゴン用語、つまり国防の関係者以外には理解し難い用語が十分に日本国内で理解されておらず、また理解を広げる取り組みが専門家の側でまだまだ不足している事情が関係していると思います。 今回は、改めて中国軍が重視する接近阻止/領域拒否が何を目指すものであり、それが日本や米国にどのような影響を及ぼすものであるのかを基礎から説明したいと思います。 接近阻止/領域拒否の基本的な考え方 この記事ではMcDevittの研究に沿って説明してみたいと思います。 そもそも接近阻止・領域拒否(Anti-Access/Area Denial)という用語が米国国防総省の公文書で最初に使用されたのは2001年度四カ年防衛評価(Quadrennial Defense Review)であり、当時この用語は台湾有事で米軍が介入してくることを防止するための中国軍の取り組みを特徴付けるために用いられていました(McDevitt 2011: 191)。 接近阻止/領域拒否の基本的な考え方はそれほど複雑なものではありません。 要するに中国軍が作戦を開始した際に、その作戦地域に米軍が部隊を送り込んでくる事態を防ぐため、努めて遠方で米軍の部隊を撃破し、中国軍の作戦地域には進出させないという構想です(Ibid.)。 このような構想を中国軍が実現することができれば、軍事力で圧倒的に優勢な米軍が北東アジア情勢に介入してくることを妨げることができるため、中国はこの地域で対外政策をより遂行しやすくなると期待されます。 接近阻止/領域拒否は一つの概念として議論されることも少なくありませんが、McDevittの研究によると、異なる意味を持っている用語です。 つまり接近阻止は沖縄の嘉手納基地に配備された米空軍の戦闘...