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徴兵制と志願制、どちらを採用すべきか

軍事力を構成する有形無形の資源を調達する方法を選択することは、軍事行政の基本問題の一つです。 今回は、人的資源を獲得する上で重要な兵役制度に注目し、これを徴兵制と志願制に区分した上で、それぞれにどのようなメリットとデメリットがあるのかを説明してみたいと思います。 まず徴兵制の特徴は人的資源を安定的に獲得する機能に優れた兵役であるということです。 これは戦争が極めて長期化している状況において重要な意味を持っています。前線で発生する人的損失を回復する能力が国家として優れていれば、長期間にわたって持久戦を遂行することが可能です。 しかし、若年労働者を徴兵することによって、労働市場での供給が縮小し、企業は生産力を拡充する際に必要な新規人材を獲得するための費用が増大してしまいます。これは経済成長を阻害する要因として作用します。 さらに徴兵制の大きな問題となるのは、登録、選抜、訓練など徴兵業務に関連する管理費用が肥大化する傾向があることです。これは、武器や装備の近代化に投下できる軍事予算が相対的に減少してしまうことを意味しています(Fisher 1969; Oi 1967)。 そうなると、軍隊の組織構造として一人あたりに投下できる武器や装備の量または質を低下させなければなりません(Hansen and Weisbrod; Fisher 1969)。 したがって、徴兵制が望ましいかどうかは、その国家が採用する軍事教義の内容によって異なると思われます。 ここでは、大規模な陸上戦力により長大な戦線を長期間にわたって維持し、かつ人海戦術のような戦闘の方式をとるのであれば、徴兵制は重要な選択肢である、とだけ述べておきます。 次に志願制の特徴に移ると、この制度では各労働者が自己の選択として兵役に就くものであるため、管理業務に要する費用の肥大化を抑制する効果があります。 軍隊が戦闘を遂行する上で武器や装備に依拠する比率を高めることになれば、次々と大量の新兵に短期的な教育訓練を実施していくよりも、少数の新兵により専門的な教育訓練を実施し、また可能な限り昇進させようとする傾向がもたらされます。 そのため、志願制は人数が少数であったとしても、高度な専門技術を持つ部隊を強化したい場合には有用な兵役制度であるということが言えます。 しかし、志願制の問題は、軍...

文献紹介 戦時経済の問題とは何か

兵站はしばしば軍事兵站のことだけを指して用いられますが、近代以降の戦争においてこの理解は間違っています。 なぜなら、近代戦争は自然とその国家の経済力を総合発揮することが必要とされるため、国民経済の総体を広い意味で兵站の一部として管理する場面が多く出てくるためです。 このような経済システムは研究者からしばしば戦時経済または戦争経済と呼ばれています。 今回は、戦時経済の問題について考えるための参考として、第二次世界大戦時に執筆されたドイツの戦時経済に関する著作を紹介したいと思います。 文献情報 Oesterheld, Alfred. 1940. Die deutsche Kriegswirtschaft, Leipzig: Felix Meiner Verlag.(邦訳、エスターヘルト『独逸の戦争経済』独逸文化研究会訳、日光書院、1940年) この著作は戦時経済の研究書というよりも概説書と位置付けるべきもので、解説されている事柄は生活物品から鉱業資源、金融商品にまで多岐に渡ります。 個々の記述は要約的なものですが、戦時経済の全体像がよく整理されています。 まず戦時経済への転換ついて見てみると、第二次世界大戦が勃発した当時、ドイツ政府は直ちに労働力の再編成のため数十万名にも上る男女の職場移動を実施しました(前掲、2-3頁)。 このような大規模かつ急激な転職を可能にしたのは、平時からドイツで実施されていた非熟練労働者に対する職業訓練計画でした。 非熟練労働者に新開発された産業技術を事前に指導しておく訓練を実施しておくことで、戦時経済に転換した後に製造や運輸などの作業場で迅速に適用できるように準備することができました(前掲3頁)。 ベルリン市の状況を見ても、独ソ戦が始まる1940年までに、およそ50万名の男女が企業の内部または外部における研修を受けており、ドイツが戦時経済での労働力の運用に柔軟性を準備していたことが分かります(前掲、4頁)。 また企業の側に注目すると、戦時経済への転換した際に激増する受注に対処する必要がありました。 この問題についてもドイツでは平時からの措置が講じられていました。 防衛産業だけでなく多数の一般企業に軍需生産に関連する仕事を発注しておくことで、潜在的な防衛生産体制を構築する努力をしていたのです。...