政治地理学の研究者たちは国家の中でも政治的、経済的な中枢として機能する地域があり、それを「中核地域(core area)」と呼んできました。 中核地域の特徴として挙げられるのは高い人口密度、多くの天然資源、充実した交通手段、高度な資本集積などです。 これらの特徴から中核地域は純粋に地理学の観点から重要であるだけでなく、戦争において最重要の攻撃目標としての価値があると判断されます。 とはいえ、中核地域は少し漠然とした概念であり、その重要性を示唆するものの、何をもって中核地域と見なすべきかは研究者によって意見が異なります。 今回は1960年代から80年代までの政治地理学のいくつかの文献を参考にした上で、中核地域の定義とその解釈を巡る論争を紹介したいと思います。 学説1 中核地域とは国家の歴史的起源である 地理学者のパウンズとボールは国家の中核地域について歴史的な観点から考えなければならないという立場をとっていました。 彼らの説によると、中核地域は形成されてから間もない国家が最初に領有している領域のことに他なりません。例えばフランスの歴史でいえばパリが中核地域となり、イギリスの歴史でいえばロンドンが中核地域を構成するということになります(Pounds and Ball 1964)。 さらにパウンズらは中核地域はその国家がその後にどれだけ拡張可能であるかを強く規定していると主張しています。例えば、もしその国家が初期に保有する中核地域の生産力が他の国家のそれよりも優れており、そのために余剰生産物をより多く供給することができるとすれば、それだけその国家は軍備をより素早く整備し、自国を防衛し、さらには他国を征服しやすくなると考えられます(Ibid.)。 つまり、その国家が大国へと飛躍するか、中小国のままで終わるかは最初にその国家が有する核心地域の優劣によって大部分が決定されてしまうと考えられるのです。 学説2 中核地域は国家の歴史的起源とは限らない しかし、パウンズらの議論を批判的に考えると、中核地域が自然環境によって制約される度合いを過大評価している可能性があるようにも思われます。 ヘクターなどの研究者は、パウンズらの議論を受けて、スペイン、ポルトガル、フランス、イギリスの中核地域に関する調査研究を実施しており、それらの中核地域では強力な統...
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