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論文紹介 サイバー戦のゲームを制作すべし

サイバー安全保障がこれほど大きな問題となっているにもかかわらず、十分な要員を確保することができず困っている国は日本だけではありません。米国では要員確保に取り組む第一歩として、その教育訓練に関する調査研究が進められています。 今回は、サイバー戦に備えるために必要な人員を訓練するためのゲームを提供することが政府として必要であることを提案した論文を紹介したいと思います。 文献情報 Christopher Herr, and Dennis Allen. 2014. Video Games as a Training Tool to Prepare the Next Generation of Cyber Warriors , Pittsburgh: Software Engineering Institute, Carnegie Mellon University. 米軍におけるゲーム開発の歴史 ゲームを教育目的で利用するという取り組みは目新しいものではありません。 さまざまな分野でゲームが優れた訓練用の教材となり得ることは実証されており、小学校や中学校の生徒に対する学科教育でも大きな成果を上げています。座学のような一方的な情報の伝達ではなく、学習者の自発的な参加が促されることが学習効果を高めると考えられています。 米軍でゲームが軍事訓練のために最初に導入されたのは1962年のこととされており、当時国防総省が出資してマサチューセッツ工科大学が開発した『宇宙戦争(Spacewar)』というゲームでしたが、まだ当時は二次元の空間に艦艇を展開し、ミサイルで交戦するという単純なゲームでした(Herr and Allen 2014: 8)。 戦闘モデルが三次元の空間にまで発展させたゲームは1970年代に開発された『戦闘地域(Battlezone)』であり、これは一人称視点でプレイヤーが戦車の砲手となるゲームであり、米軍はこのゲームを当時開発中だったM2ブラッドレー歩兵戦闘車の訓練用シミュレータに採用しました(Ibid.)。 こうした事業に基づく知見を踏まえて米軍では独自にシミュレーション・ネットワークの構築を始めます。 1982年には数百のシミュレーターをSIMNETと呼ばれるネットワークで結ぶことにより、複数人が戦闘機や戦車を仮想の空間で同...

論文紹介 サイバー安全保障を考える

現代の戦争においては、サイバー空間が戦場の一部と化しています。 サイバー空間で行われる作戦行動はサイバー戦とも呼ばれますが、歴史的にその任務に当たってきたのは通信部隊が主体でした。 しかし、近年ではサイバー戦で駆使される技術や戦術がますます複雑化、高度化しつつあり、もはや問題は通信科の部隊だけに止まらなくなっています。 今回は、サイバー安全保障の重要性について軍隊の他の職種も注意を払う必要を指摘した論文を紹介したいと思います。 論文情報 Roeder, D. Bruce. 2014. "CyberSecurity: It Isn't Just for Signal Officers Anymore," Military Review ,  May-June, pp. 38-42. 著者によれば、これまでサイバー安全保障という重要な課題が通信科の士官だけで対処されてきましたが、もはやサイバー安全保障の現状は通信科だけの問題ではなくなっており、さらに悪いことに、そのことに他の職種の士官たちが気が付いていません。 サイバー安全保障の第一線に立たされている通信科の士官たちが現在直面している脅威は、犯罪者による攻撃、イデオローグによる攻撃、そして国家による攻撃に区分されます(p. 39)。 犯罪者は野心を持って主として法執行機関に対するサイバー攻撃を試みます。イデオローグはウィキリークスやアノニマスのように、政治的な動機に基づいて政府機関に対するサイバー攻撃を計画します。 これらのグループに比べれば、第三の国家によるサイバー攻撃はより複雑な動機によって企図されます。安全保障、経済、その他の国益に資するため、彼らは敵とする国家に対してサイバー攻撃を行うためです。 現在、こうした脅威に対処するため、米軍では戦略軍(strategic Command)の隷下にサイバー軍(United States Cyber Command, USCYBERCOM)が編成されており、陸海空軍と海兵隊にもそれぞれサイバー戦のための部隊が編成されているのですが、著者は組織体制において大きな問題点があると指摘しています。 それは、戦闘を遂行することを想定した一元的で階層的な指揮系統によって運営されるため、意思決定のために時間を必要とし、し...