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文献紹介 クセノフォンの騎兵戦術

古来より軍隊はさまざまな種類の部隊で組織されてきましたが、特に騎兵は近世までの戦場で重要な役割を果たしてきました。 騎兵の戦術について考察することが、直ちに現代の戦術に役立つわけではないのですが、戦術の基本原則の妥当性を検討する上で有意義な部分も少なくなく、歴史的関心から見ても興味深いテーマだと思われます。 今回は、こうした観点から、 クセノフォン の著作から古代の騎兵戦術に関する考察を紹介したいと思います。 文献情報 クセノポーン『騎兵隊長・馬術』田中秀央、吉田一次訳、生活社、1944年 このような騎兵戦術に関する考察がクセノフォンによってまとめられた背景には、紀元前365年にアテナイとテーバイの戦争が予期されるに至ったことが関係しています。 アテナイ軍で騎兵隊長の地位にあったクセノフォンであり、騎兵に対して強い研究心を持っていました。また、研究者によるとこの著作の執筆した時に2人の息子を兵役のためにアテナイに送り出した時期とも重なっているそうで、騎兵に関する研究成果をまとめて次世代に継承する必要を感じていたのかもしれません。 現代の観点からクセノフォンが考える戦術の特徴を考察すると、欺瞞の重要性が繰り返し強調されている点に気が付きます。 これは戦場における騎兵部隊の特性から、敵に物理的打撃を加える前に心理的衝撃を与えること、つまり奇襲を成功させることが戦果を上げるために重要であったことを反映したものと考えられます。 もちろん、クセノフォンは戦場における騎兵の戦術だけを議論したわけではなく、その管理の問題についても言及しており、特に古代アテナイで騎兵部隊がどのように運営されていたのかについて記してもいます。 クセノフォンはまずアテナイの法令に基づく定数1,000名の騎兵部隊を維持するためには、適切に新兵を配属するだけでなく、軍務に適格な軍馬を選抜することも重要であると述べています。 (旧字体の箇所など原文に手を加えて引用している箇所があります) 「騎兵隊の人員を満たすと同時に、馬が激務に耐え得るよう十分な糧秣を与えることに注意せねばならない。激務に耐え得ぬ馬は追いかけることも、逃げることもできないからである。従順ならざる馬は味方を益するよりは敵を助けることの方が多いから、馬を従順ならしめることが肝要である。乗馬する時蹴...