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2018年3月26日月曜日

お知らせ 「軍事学を学ぶ 2018年4月号:中国軍のA2/ADをめぐる研究の最前線」

新しく配信する電子雑誌『軍事学を学ぶ 2018年4月号:中国軍のA2/ADをめぐる研究の最前線』の予約受付をAmazonのページ開始いたしました。

今号では「中国軍のA2/ADをめぐる研究の最前線」というテーマで最新の軍事学の研究動向を調査し、新たな論争の展開を示す学術論文の紹介記事3本と、演習問題1本の合わせて4本の記事でお届けしています。コンテンツの内容はいずれも本ブログには掲載していない書下ろしのものです。

配信日時とコンテンツの概要
『軍事学を学ぶ 2018年4月号:中国軍のA2/ADをめぐる研究の最前線』は4月7日土曜日に配信される予定です。下記リンクで詳細をお確かめ下さい。
ご承知の方も多いかと思いますが、A2/ADは中国軍の戦略を説明するために研究者の間で広く使われている用語であり、A2は接近阻止(Approach Denial)を、ADは領域拒否(Area Denial)を表しています。

A2/ADの狙いは弾道ミサイルや人工衛星といった手段を駆使し、西太平洋にまで及ぶ広い空間を中国軍の勢力下に置くことで、東アジアの紛争から米軍の勢力を締め出し、少なくとも弱体化させることを意図した作戦構想です。詳細については以前の記事でも解説しています。(今さら聞けない中国軍の接近阻止/領域拒否(A2/AD)

この中国軍の脅威に対抗するため、米国においては2010年前後からエアシー・バトル(現在は名称変更)をはじめとするさまざまな作戦構想が検討されるようになり、その議論の動向については対中戦略に関心を寄せる日本の研究者も注目してきたところです。
このブログでもエアシー・バトルに関連した研究をいくつか紹介しています。(事例研究 米軍の「突入作戦のための統合構想(JCEO)」とは論文紹介 エアシー・バトル(AirSea Battle)とは何か、なぜ日本が関係するのか

今回の記事で取り上げている論文は、いずれも従来のA2/ADの研究を再検討する必要性について指摘したものであり、今後の論争に新しい方向性を与える可能性があるものです。

はじめの論文紹介「中国軍と米軍の勢力は拮抗する」で取り上げたビドルとエルリッチの研究論文では、中国軍のA2/ADとそれに対抗する米軍のエアシー・バトルのいずれの構想にも技術的な限界があり、東アジアにおける米中間の軍事力は均衡状態になるという予測が示されています。
A2/ADのような作戦が実際の技術的制約の下で実行可能かどうかについて検討されており、米軍のエアシー・バトルについても批判的な考察が述べられています。

次の論文紹介「中国軍の海洋進出に対抗できるのか」にて紹介した論文でも、東アジアで軍事的な均衡が維持されるとの予測が示されていますが、先ほどの研究と違うのは、米軍ではなく、台湾軍、自衛隊、ベトナム軍、インドネシア軍、マレーシア軍の勢力の重要性を指摘しているところです。
米軍が中国軍の海洋進出に直接対抗することは必要ではないという積極的阻止との戦略が提唱されており、米国の戦略論争の動向を考える上でも注目すべき議論です。

最後の論文紹介「接近阻止の理解を問い直す」で取り上げた米海軍大学校の研究者が発表した論文では、接近阻止に対する過去の研究者の理解の仕方そのものが批判されています。
現代の中国に限らず、過去の軍事史で見られる接近阻止戦略の特徴を一般的に研究すると、非軍事的手段の運用が大きな役割を果たしてきたことが分かります。
それにもかかわらず、米国における接近阻止の議論はあまりにも軍事的側面ばかりに注目しており、バランスを欠いた対策が米国政府によってとられていることに対して懸念が示されています。

最後の演習問題のコーナーでは、古代の戦争史からマケドニア国王であるアレクサンドロスがペルシアを遠征する際に採用した政策と戦略について考えています。
単に歴史上のアレクサンドロスとダレイオスが戦争でどのような駆け引きを繰り広げていたのかを学ぶだけでなく、自分がアレクサンドロスの立場に立った場合にどのような決定をしたのかを考えて頂くきっかけになればと思います。

むすびにかえて

軍事学の研究情報誌というコンセプトはこれまでに聞いたことがないもので、当方としても初めての試みとなりますが、軍事学の最先端でどのような議論が行われているのかを日本で手軽に知ることができるようになれば、一定の社会的意義があると判断した次第です。

次号の刊行時期に関しては未定ですが、21世紀の戦争形態と陸上作戦の今後というテーマで論文紹介の記事を準備し、演習問題も作成中です。また詳細が決まり次第、告知させて頂きたいと思います。

引き続き軍事学の普及促進に繋がる活動を続けていきたいと考えております。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

KT