最近人気の記事

2016年6月4日土曜日

戦技研究 狙いを付ける前に正しい見出しを

以前の記事でも射撃術については取り上げ、それが姿勢、照準、撃発等に区別できることや、射撃姿勢にさまざまな種類があることを説明しましたが(「正しい銃の射ち方を理解するために」をご参照下さい)、今回は小銃射撃における照準(aiming)の要領や注意事項について米軍の教範を参考にしながら解説します。

交戦中の兵士がどのような技術を駆使して戦っているのかを理解する一助になればと思います。

照準で何が問題となるのか
小銃によって形状や配置はさまざまですが、小銃にはその射角と方向角を調整するための照準具(sight)が備わっています。(一般には照準器と呼ばれる場合もありますが、ここでは照準具で統一します)

小銃の照準具は基本的に大きく分けて二つの部分から構成されており、射手が小銃にほお付けした際に目の前にすぐ位置するのが照門部(rear sight)であり、銃口付近にあるのが照星部(front sight)です。
簡単に言えば、照準では照星の先端(以下、照星頂(front sightpost))を照門(rear sight aperture)の中心に見出し、かつ照星頂を照準点に一致させることである、と言えるでしょう。
射撃の際に射手は小銃の照門を覗き、その奥に照星を見ることになる。
照準の第一歩はこの照門の中央に正しく照星頂を見出すことであり、次に照準点を照星頂(照星の頂点)と重ねることである。(FM3-22.9: 4-19)
一般に私たちは照準と聞くと、射つ対象に向かって銃口を向けることだとイメージしますが、それは照準というプロセスの一部分に過ぎません。正しく狙うためには、正しい見出しが必要となるためです。
見出しとは、銃を構えた際に、射手の視界の中で照門の中心点と照星頂を重ねることをいいます。
見出しが射撃においてどれほど重要であるかという点について米軍の教範では次のように述べられています。
「武器は目標に狙いを付けなければならない。そのため、兵士は照星頂の端を照門の中心で保持する。照星と照門との一直線上にある誤差は弾丸が0.5メートル進むごとに増幅される。例えば、25メートルの射距離で小銃の見出しが不良であれば、その誤差は50倍にもなる。もし1インチ(2.54センチメートル)の10分の1見出しを誤れば、それは300メートル先で5フィート(152.4センチメートル)の誤差を生むことになる」(FM 3-22.9: 4-19)
要するに射距離が大きくなるほど照準誤差が弾着の偏差量に与える影響は増幅されるということです。見出し不良の射手だと、照星頂と射撃する的の中心を完璧に一致させても、集弾させることができなくなってしまいます。

一様ではない照準具の種類と照準の条件
さらに銃によって照準具の形状に相違があるため、異なる照準具で射撃する際には練習が必要となります。
米軍のM-16は穴照門を採用しており、照門の中心に照星頂を持ってくるように指示されていますが、AK-47の照門は谷照門という形となっています。谷照門にはさらにV型、U型、凹型などいくつかの種類があり、射手はその銃の照準具に応じた見出しを行わなければなりません。
(ちなみに、谷照門は射手が視界を広く保持できる利点が特徴であり、そのため英語ではopen rear sightと呼ばれます。穴照門にはaperture sightとpeep sightという二つの呼び方があります)

また、実際に自分の眼で照準具をのぞき込むとよく分かる事象ですが、その時の光の向きや強さ、さらには射手の体調等の条件によっても照準具の見え方は異なるということがあります。
いずれも見出しの誤差を増大させる危険がある要因であり、照準具に太陽光が照射されると、その光の入射角に対して照星頂が僅かに膨張して見える事象はその典型的な例です。
また日中とは反対に夜間における射撃の照準では周辺視を活用する等の注意が必要になります。

また照準を長時間にわたって続けていると、射手に疲労が蓄積するということも照準の問題としてあります。
射手の技量が低いと、照準を終えて撃発に移るまでの間にどうしても時間がかかってしまいます。しかし、照準にあまりに長い時間をかけてしまうと、それだけ射手の眼にかかる疲労も増大しやすくなり、視界がかすむ、焦点がぼやける、といった症状が表れることがあります。
当初は正しい見出しができていたとしても、射撃の過程で正しい狙いに意識が集中し、照準点に焦点が置かれて、正しい見出しが崩れてくるという事象も結果として射撃の結果に大きな影響を及ぼしてきます。

むすびにかえて
小銃射撃は多くの人にとって馴染みがないものですが、こうした照準の詳細を知って頂くと、スポーツでよく言われるところの精神性が深く関係してくることが分かると思います。
照準において射手はミリメートル以下の精度を出すために全神経を集中させ、自分の視界に移る照門の中心点に照星頂を完璧に一致させ、かつその先に射撃の目標を見据えていなければなりません。

一般的な小銃(M-16やAK-47)の射程は500メートル等と言われますが、この射距離で敵の散兵を射つとなれば、500メートル先の目標を射つと見出しの誤差は1000倍に増幅される計算です。これは照準における2.5ミリメートルの誤差が、照準点から着弾点が2500ミリメートル=2.5メートルも離れることを意味します。
どれだけ技術革新によって銃が進歩しても、その銃が本来の性能を発揮できるかどうかは、射手の能力によるのです。

KT

参考文献
U.S. Department of the Army. 2008. Field Manual 3-22.9, Rifle Marksmanship M16-/M4-Series Weapons, Washington, D.C.: Governmental Printing Office.

0 件のコメント:

コメントを投稿