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2016年2月12日金曜日

ホプキンソン-クランツ相似則で考えるTNTの殺傷範囲

武器、特に核兵器に関するデータを読んでいると、その威力の単位としてトリニトロトルエン(以下、TNT)換算の方法が頻繁に使用されていることに気付きます。
問題は、ほとんどの人がTNTの威力を具体的に知らないということです。せっかくデータを持っていても、それがどの程度の殺傷能力を発揮するのか解釈することができないのです。

今回は、弾薬管理の現場でも保安距離の計算のために使用されているホプキンソン-クランツ相似則を紹介し、それを用いて簡単な殺傷範囲の計算式を説明したいと思います。

ホプキンソン-クランツ相似則とは何か
ホプキンソン-クランツ相似則(Hopkinson-Cranz Scaling Law)は、爆発のエネルギーと爆心からの距離、爆発によって生じる圧力の間には次のような関係が成り立つという法則です。(危険物を取り扱う資格試験の参考書等では「ホプキンソンの法則」と呼ばれることもあります)
ホプキンソン-クランツ相似則で取り扱われている要素。
距離はその爆発で圧力が作用する距離の値を、重量は爆発する爆発物の全重量の値をとる。
比例定数は爆発で生じる加圧がどの程度であれば許容範囲であるかによって変更できる。
この計算式の具体的な使用法としては、例えば爆弾をXトンだけ弾薬庫に貯蔵する場合、弾薬庫の広さや壁の強度をどの程度にすれば安全を保つことができるのかを考える際に、この計算をします。
また、戦場で弾薬をどこに集積するべきかを考える際に、遠すぎると補給で不便ですが、近すぎると射手の安全が確保できません。したがって、この計算を行っておくと、ある弾薬の集積場所で爆発事故が発生した場合に射手が安全な距離を保つために必要な距離を見積ることもできます。

まず1トンのTNTの殺傷範囲を計算してみる
問題は、ホプキンソン-クランツ相似則を用いて、TNT1トンがどれだけの殺傷範囲を持っているのかを明らかにすることです。

まず殺傷範囲を考える時にどの程度の加圧をもって死者や負傷者が発生する領域と見なすべきかを決める必要があります。
ここでは1000キログラムのTNTが100メートル先にまで衝撃波が到達するという想定(100/1000^(1/3)=10)で計算していきたいと思います。

この場合、1トン=1000キログラムのTNTを爆発させるとすると、その威力が及ぶ距離は

10×1000(kg)^(1/3)=100(㎡)

となりますので、この100メートルを半径として円の面積を求めると

100^2×3.14=31400

したがって、1トンのTNTは31400平方メートルの空間を占める目標を殺傷する能力があるという答えになります。大雑把に考えると、1平方メートル当たり1名の間隔で兵士が密集していた時に、この一回の爆発で31400名の損害が発生することを意味しています。

別の数値で計算した結果をまとめると次の図のようになります。
縦軸が殺傷範囲(㎡)の値で、横軸が弾薬重量(kg)の値。

分析は以上となりますが、今回の計算はあくまでもホプキンソン-クランツ相似則に依拠したものに過ぎず、爆薬の地上からの位置、反射波の影響、気象の条件等によって爆発はさまざまな影響を受けるという点に十分ご留意下さい。

終わりに
現代の武器、特に核兵器の威力はあまりに大きいため、それを使用した場合にどれほどの威力が発揮されるのか、具体的なイメージに結びつけて理解することが非常に難しくなっています。武器を取り扱った経験がなければ尚更です。

TNT換算されている核出力のデータからそれがどの程度の殺傷能力を持つのかを考えることができれば、その武器に対する理解はより深まることでしょう。
特にその核兵器の威力範囲に注目してTNTの値を見ていくと、限られた範囲だけを攻撃するための戦術核兵器の役割や運用を空間的に考えることができるようになります。
厳密さに問題もあるのですが、今回のホプキンソン-クランツ相似則を用いれば、さまざまな武器の威力を解釈する上で手がかりとなると思います。

KT

参考文献等
United Nations Office for Disarmament Affairs. 2015. International Ammunition Technical Guideline, 2nd edition, New York: United Nations.
弾薬管理の文献。保安距離の計算を目的として、2頁にホプキンス-クランツ相似則のことが述べられている。

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