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2015年11月7日土曜日

接近経路で分類できる防御陣地

戦場では任務、地形、敵情等の各種状況によって防御者として敵を迎え撃つという場面が出てきます。
戦術において攻撃よりも防御が一般的に有利に立てる前提条件となるのが、地形地物を活用した陣地構築と部隊配置です。

今回は、特に歩兵中隊(3個小隊と中隊本部を合計して200名弱程度の部隊規模)の観点から、ある接近経路に対して部隊を適切に配置させるために注意すべき事項を説明したいと思います。

接近経路から戦闘陣地の種類が判断できる

あらゆる戦場の地形は五つの観点から分析することができます。
すなわち、任務遂行のために確保が優先される地形である緊要地形、部隊が通過することを妨げる障害、部隊の所在を秘匿する掩蔽、部隊の所在を確認するための監視、緊要地形に向けて前進する上で通過することになる接近経路、これら五つの観点です(詳細は地形分析に関する過去の記事をご参照下さい)。

これら地形分析の中でも陣地防御を指導する上で重要なのが接近経路です。
接近経路を把握すれば、その接近経路に沿って敵が前進してくると予測されますので、それに対して我が部隊をどのように配置することができるのかを判断できるようになります。

以下では選択可能な戦闘陣地の関係を四種類に区別したものを見てみます。

敵の単一の進路に直行する単一の防御陣地
単独の接近経路に対して単独の陣地を構成する場合。
(FM3-21.8: 8-26)より引用。
図で示したように敵の部隊が使用する接近経路に対して良好な視界と射界が得られ、かつ偽装と隠蔽が容易な地形があれば、そこに全ての分隊の火力を指向して強力な弾幕を構成することができるだけでなく、戦局に応じて別の陣地へ移動することさえ可能です。

我が部隊を一カ所に展開して運用することになるので、指揮官にとって部隊の状態を最も掌握しやすい点も利点として挙げられます。

敵の複数の進路に平行する単一の防御陣地
複数の接近経路に対して単一の防御陣地を構築する場合。
(Ibid.: 8-26)より引用。
上図のように、中隊の交戦地域に敵が利用可能な接近経路が複数あり、敵の部隊がどの方向から前進するのか予断を許さない場合があります。
そのような状況では、両方の接近経路に対して広く正面をとった防御陣地を構築しなければなりません。こうすると一正面に対する火力は低下しますが、両方の接近経路に対する射界を確保するために必要な措置と言えます。

ちなみに、図のように敵の進路と並行して占領する陣地は側面陣地と呼びます。これは敵の進路に直行して占領する陣地よりも逆襲に移る際に部隊の機動が阻害されないという利点を持つものと考えられています。
したがって、側面陣地を見れば相手が攻撃的な意図を持っている可能性を考慮しなければなりません。

敵の単一の進路に平行する複数の防御陣地
同一の接近経路に対して複数の戦闘陣地を占領する場合。
(Ibid.: 8-27)より引用。
図のように接近経路に対して平行に占領した防御陣地を選択する場合、防御者にはどのような利点が考えられるでしょうか。

このような配置をとる利点は、接近経路を前進する敵の部隊を十分に隘路に引き入れた後に交戦を開始することができることです。
敵の部隊の前衛を黙って通過させておき、続行する主力が我が方の存在に気付かず戦闘展開もせずに交戦地域に進入してくるようならば、我が部隊は最初の射撃によって敵の部隊に大きな打撃を加えることができるだけでなく、その前衛と後衛を前後に分断することも可能です。

ただし、気を付けなければならないのは陣地を複数に分けて正面を広く取るとしても、中隊の戦力を均等に分けることは避けなければなりません。
主力と支隊の役割を明確に分担しておき、支隊が占領する陣地には敵の前衛を拘束するための戦力を、主力が占領する陣地には敵の主力に打撃を加えるための戦力を用いなければなりません。

敵の複数の進路に平行する複数の防御陣地
複数の接近経路に対して複数の防御陣地を占領する場合。
(Ibid.: 8-27)より引用。
交戦地域の地形によっては敵が利用できる接近経路が複数ありながらも、それが合流している場合があります。
このような状況では、それぞれの敵の部隊が合流することを妨げることが必要となります。そこで敵の進路を封鎖し、その脇道となる場所には地雷原を構成する等の手段がとられることになります。
とはいえ、個々の防御陣地が孤立して敵により撃破される危険が比較的大きくなる配置であることには変わりなく、主力が占領する陣地と支隊が占領する陣地の位置関係については相互に支援できるように注意することが求められます。

戦術の研究では交戦地域における地形の価値を巡って意見が分かれることはそれほど多くありません。しかし、その地形を活用するために部隊をいかに配置すべきかという論点を巡ってはさまざまな考え方があります。
今後、新たな地形を目にした時には、それぞれの視点から最適な戦闘陣地がどのようなものかを思索してみてはどうでしょうか。

KT

参考文献
U.S. Department of the Army. 2007. Field Manual 3-21.8: The Infantry Rifle Platoon and Squad, Washington, D.C.: U.S. Department of the Army.

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