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2015年11月27日金曜日

偵察だけが斥候ではない

斥候(patrol)という言葉を聞いたことがある人でも、それを正しく説明することは難しいでしょう。
しばしば誤解されていますが、斥候は必ずしも偵察だけを目標としません。時として斥候は戦うことを主眼とする場合があるのです。
今回は、戦闘斥候を中心に斥候について説明をしてみたいと思います。

戦闘斥候とは何か
一般に斥候とは本隊から独立して行動する1個分隊程度の小さな分遣隊のことですが、その任務は状況によってさまざまに変化します。例えば次のような任務を斥候は遂行する場合があります。
  • 敵情、地形、もしくは地域住民に関する情報資料の収集すること。
  • 敵の部隊との接触を回復すること、または味方の部隊の所在を確認すること。
  • 敵を撃破し、または損害を与えるように交戦すること。
  • 地域住民の信頼を維持または獲得すること。
  • 治安の不安定化を予防すること。
  • 反乱軍または犯罪活動を抑制し、打撃を加えること(FM3-21.8: 9-1-2)
確かに偵察は斥候の任務の一部ではあるのですが、敵との交戦を狙った斥候もあるということがここで示されています。つまり、斥候には戦闘を主眼とするもの、偵察を主眼とするものの二種類に分かれるのです。専門用語だと前者の斥候は戦闘斥候(combat patrol)、後者は偵察斥候(reconnaissance patrol)と呼ばれています(Ibid.: 9-2)。
斥候の行動の一例。
目標に対して最短距離で前進するのではなく、その周囲の状況を調べることができるような経路を前進している。
(FM3-21.8: 9-4)
斥候は本隊から離れて行動しますので、もちろん敵との交戦は望ましい状況ではありません。
しかし、少人数だからこそできる戦法もあるのです。それが襲撃(raid)と伏撃(ambush)の二つです。これらはいずれも奇襲の一種なのですが、その定義は異なります。

襲撃について
襲撃とはその地域を確保して占領すること以外の目標を達成するためにある陣地や施設に対して加えられる奇襲的な攻撃のことを言います(Ibid.: 9-10)。
例えば、敵の倉庫、通信基地等の重要施設を破壊すること、敵に身柄を捕らえられた人質や捕虜を奪回すること、敵の作戦の準備を遅らせること、これらはいずれも襲撃に属する行動であり、戦闘斥候の任務となります。
襲撃を実施要領を示した図。
襲撃を実施するための一連の部隊行動が示されている。
(FM3-12.8: 9-10)
襲撃を実施する場合、(1)斥候長はまず斥候員を目標に向けて前進させなければならず、この図で言うと集合地点(rally point)から敵の施設に向かう矢印がこれに該当します。
(2)斥候員の一部を敵施設の周囲に展開して襲撃する場所を孤立化させます。この際に敵の増援が予想される方向を警戒させておくことが重要となります。
(3)残された斥候員を襲撃する目標の付近に展開して準備を整えさせ、(4)襲撃を実施します。
(5)襲撃を成功させたならば、敵の増援によって捕捉される前に目標地域から退却へと移ります(Ibid.: 9-10)。

伏撃について
伏撃の実施要領の一例。
敵が前進する経路に沿って三カ所に部隊を配置している。
(FM3-12.8: 9-18)
伏撃は移動中ないし一時的に停止した目標に対して援護された陣地から加える奇襲的な攻撃のことを言います。伏撃の目標とするところは敵の部隊を捕捉し、これを撃破してしまうことです。
伏撃の戦術にもさまざまな種類がありますが、ここで示しているのは地域伏撃の要領であり、敵の進路に対して平行の位置に部隊が連続的に配置されていることが分かると思います。
実際には経路の前方と後方にそれぞれ配置された斥候員は敵の部隊を経路の中に閉じ込めることを意図したものであり、最も重要なのはあくまでも中央の部隊です(Ibid.: 9-19)。

考察
これら襲撃、伏撃を成功させるために、あえて戦闘斥候を用いる必要性はどこにあるのでしょうか。
それは、これらの戦法がいずれも奇襲を前提とするためです。大隊や中隊等の規模の部隊で実施しようとしても、すぐ部隊行動の兆候が大きくなり、敵に察知されやすくなってしまうので、奇襲の効果が低下するという問題が出てくるのです。

襲撃や伏撃が成功すると少数の部隊でも敵に打撃を加えることが可能なのですが、本隊の支援を受けず敵の第一線の付近で活動するためには、斥候長に十分な統率力が備わっているだけでなく、高度な戦術的能力を持っていることも必要であることは言うまでもありません。

KT

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参考文献
U.S. Department of the Army. 2007. Field Manual 3-21.8: The Infantry Rifle Platoon and Squad, Washington, D.C.: U.S. Department of the Army.

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