最近人気の記事

2015年10月14日水曜日

COCOAで分かる地形分析


ある戦闘で敵の部隊よりも味方の部隊を有利な態勢で戦わせるためには、その戦場に存在する地形地物を敵よりも活用する技能に長けている必要があります。
戦術の研究では任務遂行にとってその地域の地形地物がどのような影響をもたらすのかを評価することを「地形分析(terrain analysis)」と言います。

今回は、陸上戦闘における地形分析のやり方としてCOCOA分析について説明したいと思います。

COCOAとは、地形分析において考慮すべき五つ事項、緊要地形(Critical terrain)、障害(Obstacle)、掩蔽(Concealment)、監視(Observation)、接近経路(Avenue of approach)の頭文字をとったものです。

・緊要地形は戦術的な価値が大きいと判断される地形のことをいいます。英語ではKey terrainという表現もあります。

主要な道路が集中する場所、河川で渡河が可能な地点、離着陸が可能な飛行場、着上陸が可能な港湾、射撃や監視が容易な場所などが具体例として挙げられます。
ただし、緊要地形と判断された地形は一般に、その獲得の成否がそのまま戦闘の勝敗に直結するような重要度を持つものと考えられることが多いので、やみくもに緊要地形を決めつけることも正しくありません。

・障害は部隊の通過が著しく困難な地形のことをいいます。

一概に障害といっても常に通行が不可能と判断されるわけではありません。
適切な装備と所要の時間があると想定すれば、絶対に通過が不可能という地形は非常に例外的だからです。障害は限られた部隊の能力と時間の制約との関係で判断されるべきものです。
一般的な装備、つまり25キログラムから20キログラムの重量負荷が与えられた兵士がその地形をどの程度の速度で通過することができるかという観点から障害は判断されます。

ちなみに障害はその形態から自然障害と人工障害の二種類に区分され、例えば自然障害には河川や崖等が、人工障害には地雷原、鉄条網等が含まれることも付記しておきます。

・掩蔽は敵の射撃に対する天然または自然の防護のことをいいます。


陸上戦闘では部隊を配置した土地でさまざまな工事を行うことが一般的です。
このような工事は築城(fortification)と呼ばれますが、そこでは掩体の構築、障害の構成、道路の整備などが行われます。
このような築城の結果として構築される掩体の所在やその強度などを判断することが地形分析の問題となります。
掩体というのも耳慣れない用語だと思いますが、一個または複数の装備品を敵の火力から防護するため、またそれら装備品がその場所で使用できるように準備された陣地のことです。

掩体で最も単純なものは二人一組が地面を掘って構築するタコツボ陣地ですが、それだけが掩体ではありません。
防護性能を持つ屋根である掩蓋を取り付けた陣地や、応急築城資材を使用して地上に構築する堡塁等もあるので、地形分析では敵と味方の陣地にどの程度の防護性が備わっているかを判断することが重要となるのです。

・監視はある地点から戦場を監視した際に確保できる視界のことを指しており、射界とも関係する事項です。
起伏の激しい地形では一般に稜線で視界、射界が狭まっています。そのため、高所に位置して視界を確保しなければ敵情を把握することも困難な場合があります。
どの場所からどの地域を監視することができるのかを知ることは、地形における部隊の配置を決定する上で重要なことです。

また起伏の穏やかな平野でも、視界を妨げうる地形要因があります。それが植生であり、その地域に分布する植物の背の高さが特に重要な要因となります。
もしその地域に分布する植物の背の高さが人の背の高さと同じくらいであり、しかも植生の密度も高いと想定すると、そのような地域では歩兵がその存在を相手に秘匿しやすいということになります。
しかし、そのような地域では歩兵よりも背が高い戦車や装甲車の存在を相手に秘匿することはできなくなります。

戦闘では相手に先んじて敵情を知ることが何よりも重要であり、そのためにはこのような監視の容易さという観点から地形を分析する必要が出てくるのです。

・接近経路は戦場で複数の緊要地形の間を結ぶ経路のことをいいます。

軍事上の接近経路は必ずしも陸上道路とは限りませんが、ここでは陸路に限定して説明します。
一般に接近経路の価値は緊要地形との関係という外的要因と、道路それ自体の容量や路面の状態という内的要因から評価することができます。

例えば複数の緊要地形に向かって前進するために、ある特定の幹線道路しか利用できない場合、その幹線道路は最も重要な接近経路と言えます。
しかし、その幹線道路はすでに繰り返し空爆を受けて一部寸断されており、大規模な部隊が通過するためには一部で工事を要する箇所があると確認された場合、その接近経路の戦術的な価値について下方修正しなければなりません。
外的要因と内的要因の両方を総合することで接近経路の価値ははじめて分析可能となるのです。

以上がCOCOA分析の要点であり、これらを一つずつ検討していくと戦術上の地形分析で網羅すべき事項を手早く把握することができます。
地形分析はさまざまな地理の知識を駆使する必要があるので非常に奥が深いのですが、COCOA分析を覚えれば、そのような複雑な分析のテクニックを誰にでも分かりやすい簡単なチェックリストに落とし込むことができますし、限られた時間で状況を判断することにすぐに役立ちます。

普段の通学や通勤で何気なく目にしている地形でも、戦術の観点からきちんと観察すると、地形分析の良い練習になりますし、そのような地形において部隊がどのような行動をとりうるかを考察する能力を向上させることにもつながります。

KT

参考文献
Collins, M. 1998. Military Geography for Professionals and the Public, Washington, D.C.: National Defense University Press.

0 件のコメント:

コメントを投稿