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2015年8月22日土曜日

文献紹介 勢力圏の空間分析


平和学では紛争分析のためにさまざまな理論モデルが研究されています。
今回は、その中でも代表的な理論モデルとしてケネス・ボールディングが構築したものを紹介したいと思います。
より大きな軍事力を持つほど、より広い空間を支配することが可能になることが示されています。

文献情報
Boulding, Kenneth E. 1962. Conflict and Defense: A General Theory, New York: Harper and Row.(邦訳『紛争の一般理論』内田忠夫、衛藤瀋吉訳、ダイヤモンド社、1971年)

ここでは国際紛争の分析に注目しますが、もともと著者はあらゆる種類の紛争を分析するための理論モデルを研究していました。
「我々は一国が他国を征服したり、打ち負かすことができる条件を知ることを目指している。これは一企業が別の企業を打ち負かすことができる諸条件の問題と形式的には類似している」
このように、著者は平和学の理論モデルの適用範囲が国家間の紛争だけでなく、企業間の紛争も含まれると考えていたのです。
具体的な理論モデルの内容については次の通りです。
「A、Bにそれぞれ根拠地を持つA、Bの二カ国があると想定する。さしあたり両国の根拠地は平面的なものではなく、むしろ点であると想定するが、この想定はのちに簡単に変更することができる。AB(=s)は両国間の距離である。話を簡単にするために世界はAB線上とその投影部分からのみ成立していると想定する」
これは理論的には狭い一本道を挟んで対峙する国家が互いに部隊を繰り出してその道路を可能な限り長い距離支配しようと争っている状況と同じ想定です。
次にそれぞれの国家が繰り出す部隊の強さについて著者がどのようにモデル化しているのかを見てみます。
「今、一国の国力あるいはもっと単純に勢力と呼ばれる一変数を想定しよう。(中略)それから各国の勢力はその国家の根拠地で極大であると想定する。(中略)さらに我々はAはHEおよびHL線、BはKEおよびKM線に沿って根拠地から離れるにしたがって勢力は低下すると考える。図ではこれらを直線であると想定している。これらの線の勾配を非常に重要な量である勢力喪失勾配(Loss Strength Gradient)と呼ぶことができるだろう。そして、これを我々は略してLSGと呼ぶ」
この理論モデルをグラフ的に表現すると次のようなものになります。
A国とB国の領土紛争を想定した理論モデル。
筆者作成
このグラフから分かるように両国とも根拠地では最大の勢力を発揮できますが、根拠地から遠くなると使用可能な勢力は低下していきます。

A国とB国は同等の勢力を持つため、ちょうど中間地点で領土を分け合うことが示されていますが、もしもA国がB国よりも大きな勢力を持つならば、B国の矢印は相手よりも小さくなるため、AB両国の均衡地点が右方向に移動し、B国の支配領域はそれだけ狭くなってしまうと考えられます。

今回は理論モデルの内容のごく一部しか紹介できていませんが、平和学の理論モデルとして特に重要だと思う部分を紹介しました。
これは戦闘で敗北して相手よりも勢力が小さくなると、それだけ領土を支配することができなくなり、相手に領土を奪われるという因果関係を説明しています。

KT

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