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2015年8月5日水曜日

米中両国の海上戦力を定量的に比較してみると


昨今の中国脅威論に対する一つの批判として、中国の軍事力を規模だけで評価しすぎではないか、中国の軍事技術の実態を十分に反映していないのではないか、というものがあります。これは注意深く検討すべき見解です。

今回の記事では、対水上戦闘能力に焦点を絞って、中国の海上戦力を米国のそれと比較した場合に、性能にどれほどの相違があるのかを評価してみたいと思います。
ただし、作業量の関係ですべての艦艇を網羅的に取り扱うのではなく、サンプルとなる少数の艦艇を取り上げています。
また、武器装備の性能に技術的検討を加えるのではなく、戦闘能力を表す運用致死指数を用いて定量的に比較したいと思います。

運用致死指数は以前にも説明したことがありますが、今回の計算では戦闘艦艇が対象となるため、射撃管制能力、速力、基準排水量を戦闘力の要素として加えています。今回の分析では次の二つの計算式が基本となります。
ある武器のOLI=(射撃速度/1時間)×1回の射撃の命中数×1回の射撃で戦闘不能になる確率×(1+√射程/100)×正確性×信頼性/交戦する艦隊が展開する空間面積(ここでは3000平方キロメートル単位と想定)
ある艦艇のOLI=(搭載する武器のOLIの合計)×射撃管制能力×速力(ノット単位)×(基準排水量×2)

今回の分析で取り上げる米国の水上艦艇はアーレイバーク級ミサイル駆逐艦とニミッツ級原子力航空母艦です。
アーレイバーク級が搭載している武器は艦対艦ミサイルRGM-84D/F(単体でのOLI換算だと3.03)で合計は8発、ニミッツ級は44機のF/A-18を通じて4発の空対艦ミサイルAGM-84G(単体OLI換算2.43)を一回の交戦で使用できる、と想定します。
以上の想定を踏まえ、さらに各武器と艦艇の性能諸元を計算式に当てはめれば、対水上戦闘におけるアーレイバーク級のOLIは16,932、ニミッツ級は246,538となります。

次に中国の水上艦艇のサンプルとして、旅大型駆逐艦Ⅱ型を取り上げます。
これに搭載された対艦ミサイルがHY-2(OLIで0.41)が6発と想定して、艦艇の性能諸元を計算するとOLIは7,351と分かります。
もう一つの駆逐艦のサンプルとして、旅滬型駆逐艦を見てみると、搭載する艦対艦ミサイルYJ-83(OLIは0.33)が16発で想定した場合の艦艇としてのOLIは9,676です。どちらもアーレイバーグの16,932には追い付かず、両方のOLIを合計しなければ戦闘力で上回りません。

最後に中国の航空母艦も取り上げておきます。
航空母艦のOLIを計算する場合、どのような艦上戦闘機を使用するかが重要なのですが、遼寧の艦上戦闘機J-15は試作機の段階です。そこで、あくまでも参考の想定としてロシア製の艦上戦闘機Su-33を20機搭載し、空対艦仕様のYJ-83(OLIは0.36)を4発使用することができると考えます。
その場合、遼寧のOLIは22,432と分かりますが、ニミッツ級の246,538と比較すると、戦力としての価値で10倍以上の差があるという分析結果になっています。

米中の分かりやすい規模だけで評価するべきではない、という指摘についてはこの分析結果から見て妥当な見方であることが分かります。
各国が保有する艦艇の基準排水量の合計だけで海上戦力を比較するような分析では、米中の間に存在する軍事技術の格差を見過ごす恐れがあります。

とはいっても、この分析は単純な想定に基づく予備的な分析に過ぎません。さらに調査研究を進める必要があります。
今回の分析でも分かるように、米国製のミサイルの威力は中国製のそれをはるかに性能で凌駕しており、そのことが各艦艇の戦闘能力の高さに大きく寄与しています。
これは、中国がこうした技術を取得することに成功さえすれば、それぞれの戦闘艦艇の性能が変わらなくても短期間で戦闘力を改善することができることを意味します。

中国はこれまでにもヨーロッパ方面から技術を取得した事例が複数あるため、日本としてそうした動向について十分に注意を払うべきだと思います。

KT

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