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2015年8月27日木曜日

砂場で戦術を考えてみる


誰でも公園にある砂場で遊んだ経験があると思います。砂を固めて山を作ったり、トンネルを掘る作業はシンプルですが創造性を刺激される遊びです。
しかし、こうした砂場は遊び場として使えるだけでなく、戦術の研究や教育にも活用できる優れた教材でもあるのです。
駐屯地見学などで砂盤演習を見学したことがある人を除けば、そもそも砂盤演習とは何かということも想像しにくいと思います。

今回は、砂盤(sandtable)とは何か、それはどのように行うことができるのかについて簡単に説明したいと思います。

砂盤演習とは何か

戦争を図上で研究する試みは古代にまでさかのぼることができますが、近代以後において砂盤演習が明確に戦術教育に導入されるようになったのは19世紀から20世紀のことでした。
一例として、1920年以降のドイツ軍ではすべての駐屯地に配備されており、1個大隊につき2つの砂盤が戦術の研究、教育で利用されていました。

なぜ、この時期から砂盤が積極的に利用されるようになったかと言えば、それは大量の人員に戦術教育を行う必要が出てきたことと関係しています。
ちょうど20世紀初頭は技術の発達が進み、戦場で発揮される火力が激増した時代です。
そのため、従来までの密集した戦列に基づく戦術は再検討され、第一線で戦う部隊を散開させてより柔軟に行動させる必要があると考えられるようになります。

しかし、そのことは第一線で戦う下級士官、下士官、そして兵卒に戦術的な判断力を持たせることが必要でした。
そこで効果的に戦術を教育するための教材として砂盤が重視されるようになったのです。

砂盤演習の要領
カナダ軍による砂盤演習の準備作業の様子。
ノルマンディー上陸作戦の準備に当たり、ジュノ・ビーチの地形と独軍の防御陣地を再現している。
砂盤演習は基本的に陸軍の分隊、小隊、中隊などの行動を研究するためのものであり、それ以上の規模の部隊であれば砂盤を使う意味はあまりありません。

砂盤の最も重要な特性は地形を立体的に再現することによって、敵と味方がどのような視界、射線をえているのか、どのような地形地物を遮蔽、掩蔽に利用することができるのかを考察するためのものです。より大規模な部隊の戦術でそのような事項は問題とはなりません。

砂盤の大きさや縮尺に特に決まりはありませんが、2メートル×3メートル×20センチ程度の小さ目の砂盤もあれば、上に示した写真のように部隊の集合教育でも使用できるほど大きなものもあります。研究したい戦術や用途に応じて使い分けることが必要です。

砂盤では地形の隆起、道路の位置、陣地の配置などが再現されます。また植生や森林の分布を表現するために緑色の色を砂につけることや、模型を利用することもありますが、細かい地形や地物について表現が難しい場合は省略されることもよくあります。
このような作業では水が入ったスプレーで砂を湿らせることや、地形を削り出すためのパテナイフ、色を付けるためのチョークなどの器材が使用されることがあります。

こうして砂盤に地形が再現されれば、あとは敵と味方の部隊の存在を表す駒と、砂盤に足を入れることなくそれを動かすために使う棒があれば演習をすることができます。

ここでは簡単な一例を示しておきたいと思います。

想定
・任務 第一分隊(分隊長1名、分隊員10名より編成)は小隊の命令によりA丘の陣地を占領するために攻撃を命令された。
・地形 第一分隊の現在地はB丘にあり、A丘までは距離がおよそ200メートルあり、その中間にはところどころに起伏があるも平坦な地域が広がっている。
・敵情 情報によればA丘には3名程度の少数の敵が陣地を占領している。

次に、分隊長と分隊員の所在を表す駒を砂盤のB丘に配置し、敵の勢力についても同様に配置しておきます。
普通の演習と同じように、統裁員の号令によって状況を開始し、各分隊長は分隊員に例えば次のような命令を出し、各自に自分の担当の駒を動かさせます。

統裁員が状況開始を宣言
分隊長「第一分隊、前方200の丘、A丘」
分隊員「確認」
分隊長「分隊攻撃目標、今より攻撃して奪取する」
分隊員全員「了解」
分隊長「第一分隊、前方20堆土まで早駆け」
分隊員全員「(復唱)」
分隊長「前へ」
分隊員全員「前へ」復唱と同時に駒を前進させる
統裁員が第一分隊がB丘よりA丘に向かって直進したことにより、敵に発見され機関銃射撃を受けたという状況を口頭で付与する
分隊員「分隊長、A丘に敵兵を発見」
分隊長「了解、前進を続けよ」

このように演習員は口頭で命令や報告の手順を確認しつつ、砂盤の上で駒を動かすことによって分隊の行動を視覚的に確認することができます。
また演習員の新しい行動に応じて統裁員は新たな状況を付与し、状況を段階的に進めていきます。
言葉だけではイメージしにくいところもあると思いますが、基本的な進め方はこのようなもので、戦車小隊の戦術を研究する場合でも要領は変わりませんが、細かい点は砂盤演習の目的によって柔軟に変えることができます。

砂盤演習について古めかしいや、難しそうだという印象を持つ人もいるかもしれません。
しかし、私に言わせれば砂盤演習は地面と駒に代わる何かがあれば、どこであっても簡単にできるものです。
形式にとらわれず、まずは自分なりに戦場を一つ決めて自分なりの砂盤演習を試み、戦術の再現してみるとよいと思います。
そうすると、戦場で部隊がどのように行動するのか、武器の射程や部隊の隊形について考えることの奥深さが体験できると思います。

KT

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