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2015年8月11日火曜日

文献紹介 非対称戦争とは、戦略理論のアプローチから


戦争は必ずしも弱肉強食の世界ではありません。なぜなら、弱者と思われていた勢力が強者とされていた敵に打ち勝つことがあり得るためです。
私たちは勢力の強弱から戦争の勝敗を予測してしまいがちですが、両者の間にある因果関係はもっと複雑なものであると考えておかなければなりません。

今回は、軍事的に強大な勢力が弱体な勢力に敗北するという非対称紛争(asymmetric conflict)に注目し、これに戦略理論の観点から説明を与えた研究を紹介したいと思います。

文献情報
Arreguin-Toft, Ivan. 2005. How the Weak Win Wars: A Theory of Asymmetric Conflict, Cambridge: Cambridge University Press.

著者は、非対称紛争を説明するためには、戦略を四種類に分類した上で、当事者がどのような戦略を選択するのか、それぞれの戦略の相互作用はどのようなものであるかを分析することが重要であると考えています。

ここで述べられている戦略とは「軍事的、政治的目的を達成するために武力を使用するための行為主体の計画」と定義されています(Arreguin-Toft 2005: 29)。
さらに、この学説で示されている戦略の分類は次の通りです。

・通常攻撃(conventional attack)敵の人口、領土、都市、その他の重要な産業中枢、交通中枢などの価値を支配するため、敵の武力を補足また撃滅しようと武力を使用することです。
・バーバリズム(barbarism)軍事的、政治的目標を達成するために非戦闘員に対する計画的かつ体系的な加害行為であり、強姦、虐殺、拷問などが含まれます
・通常防御(conventional defense)自国の領土、住民、戦略資源などの価値を占領または破壊しようとする敵を撃滅するための武力を使用することです。
・ゲリラ戦(guerrilla warfare)直接的な対決を回避するように訓練された武力を用いながら敵の費用を増加させることを目的とした戦略です(Arreguin-Toft 2005: 30-33)。

この戦略の分類は攻撃―防御という基準と、正規戦と不正規戦という基準の二つに基づいています。もし攻撃者が不正規戦を仕掛けてきたならば戦略の形態はバーバリズムとなり、防御者がこれに対して同様に不正規戦で抵抗すればゲリラ戦が展開されると考えられます。
反対に、攻撃者が正規戦を選択すると通常攻撃、防御者がこれに対抗するため正規戦を選択すると通常防御となります。

ここで著者が強調していることは、攻撃者が正規戦を仕掛けて通常攻撃を実施しているにもかかわらず、防御者の戦略がゲリラ戦の場合です。このような状況において非対称紛争が発生し、軍事力が優勢であっても敗北しやすくなるというのが、この学説の考え方です。

この理論を応用すれば、ベトナムで米国が、アフガニスタンでソ連が敗退した原因を説明することができると著者は述べています。いずれの場合でも、弱者は強者が採用する戦略の前提とする作戦行動から意識的に逸脱するような作戦行動を選択しました。
相手が正規戦を挑んでいれば、不正規戦の態勢をとり、反対であれば正規戦の態勢をとることで、相手が持つ軍事力を効果的に発揮することを妨げたのです。

こうした非対称戦争の研究は中小国が大国との戦争で常に敗北するわけではないということを示しています。
この研究から、結局のところ、強さというものは一通りではないということが分かります。問題なのは、その能力をいつ、どこで、どのように発揮するのか、という戦略に他なりません。

KT

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