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2015年7月19日日曜日

マキアヴェッリの政治理論における都市の問題

ローマ帝国の首都ローマの中心フォルム・ロマヌム遺跡。
今まさに国家を樹立しようとしている時、指導者が最初に考えるべきは国家の首都たる都市の問題です。
今回、近世の政治哲学者として有名なニッコロ・マキアヴェッリが、この問題についてどのような考察を書き残しているかを紹介したいと思います。

多くの国家の歴史は首都が置かれることによって始まっています。
都市がなければ、その領土を開発して住民を養うことも、またその住民を防衛するための部隊を駐留させることもできません。都市は国家の領土の中でも中心的な役割を果たしています。
(なお、遊牧国家の場合については別の記事で説明したいと思います)

マキアヴェッリはローマ帝国の研究を通じて、その偉大な政治史が都市の起源と深く結びついており、その都市が適切に成長できるかどうかは指導者の政治的手腕によるところが大であると考えていました。
しかし、マキアヴェッリはどのようにしてその指導者の手腕を評価するのでしょうか。
「都市の立地」と「法律の整備」の二点からその指導者の力量がうかがい知れると彼は論じています。

興味深いことにマキアヴェッリは建設する都市の立地を選択する場合、必ずしも不毛な大地が悪いとは限らないと述べています。
なぜかというと、そのような都市に住む人民は生きるために勤勉さと団結を強化しなければならなくなるためです。
それゆえ、国内で政治的な不和や分裂が起こることが稀となるため、もしも指導者が他国を征服する野望がないのであれば、このような立地は統治のしやすいさという意味から言えば、賢明な選択でありうるのです。

同時に、マキアヴェッリはこのような都市は他国から進攻を受ける対象とはなりにくい場所、つまり険しく厳しい立地であることが大前提である、と明言しています。
もしも他国との戦争が避けられない地域に都市を建設するのであれば、都市として戦争に備え、戦力を整えるために、より豊かな土地(例えば河川や海岸に面した平野)に都市を建設せよと指示しています。

しかし、このような立地だと都市の住民は土地の豊かさによって労働を軽んじる怠惰な気風が生まれてしまう危険が指摘されます。
それは結果として都市を防衛すべき兵士の精神、防衛意識を損ねてしまうことにも繋がるため、指導者としては賢明な立法措置によって、厳しく住民を指導しなければならないとマキアヴェッリは考えました。
「法律の規制によって、豊かさがもたらす悪影響を防ぐことができるときのにみ、豊かな地域を選んで都市をつくるのが賢いやり方だと言いたい」
マキアヴェッリはローマがその都市を成長させ、一大帝国にまで発展した最大の要因は、豊かな土地に都市を建設し、しかもそれを厳格な法令に基づいて指導することにより、人民の勤勉さや公共の団結を適切に保持したことであると考えたのです。

生活水準の向上が結果として住民の勤労意欲や団結心を低下させうるかどうか、という論点に関しては議論の余地があると思いますが、マキアヴェッリの都市論は一種の極小国家統治論とも言えるものであり、その立地をめぐる議論を取り上げてみても彼の理想とする興味深い国家像が如実に反映されていることが分かります。

KT

参考文献
マキアヴェリ「政略論 ティトゥス・リウィウス『ローマ史』に基づく論考」『世界の名著マキアヴェリ』会田雄次訳、中央公論社、1966年。特に第一章「都市の起源について」を参照。

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