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2015年6月2日火曜日

米陸軍でのレンジャーの歴史とその伝統

陸上自衛隊にレンジャー課程という教育を修了した隊員がいることは日本でもよく知られていると思います。その教育課程は過酷さを極め、修了者は戦闘員として非常に高い技能を持っていると見なされます。しかし、そもそもこの「レンジャー」とは、どのような歴史的な経緯で発展してきたのでしょうか。

今回は米陸軍の歴史において、レンジャーがどのように成立したのかを説明したいと思います。

アメリカ陸軍の歴史におけるレンジャー
17世紀から18世紀の米国では、インディアンと入植者の間で激しい武力衝突が繰り返し起きていました。
生活集落ごとに民兵で編成された市民軍が創設されていましたが、それは常備軍のような部隊行動をとるのではありません。彼らの任務は自らの集落外部の地域の警戒に過ぎませんでした。
レンジャー(ranger)の元になった「range」という英語はこの集落外部に設定された警戒線に由来しています。

米国での陸軍史でレンジャーが戦果を上げるようになるのはフレンチ・インディアン戦争(1755-1763)以降のことです。

当時、英陸軍少佐だったロバート・ロジャース(Robert Rogers)の下に英軍直属の独立部隊としてロジャーズ・レンジャーズと呼ばれる遊撃隊を指揮して戦っています。
ロジャースは1759年にレンジャーに対して徹底させた19か条を記していますが、これらはいずれも常備軍の兵士に要求される事項とは異なっています。

例えば「利用する必要がないチャンスは決して利用するな」、「帰路に同じ道を歩いてはならない。伏撃されないために別の経路をとれ」、「敵が接近する際に立ち上がるな」など、遊撃部隊の隊員として着意すべき事項を示しています。

レンジャーは戦後に解散となりましたが、その後においても、レンジャー部隊はたびたび編成されました。
アメリカ独立戦争が起きると将軍ジョージ・ワシントンは射撃術に優れた小銃手を集めてレンジャー部隊を編成し、南北戦争では南軍のジョン・モスビー(John Mosby)が乗馬能力に優れた兵士で北軍に対するゲリラ戦を仕掛けたことから「灰色の亡霊」と呼ばれました。

第二次世界大戦で確立されたレンジャーの位置付け
しかし、レンジャーが米陸軍で正式な部隊として編成されるのは、第二次世界大戦が勃発した後の1942年のことになります。

当時、陸軍大佐だったウィリアム・ダルビー(William Darby)は遊撃に特化した第一レンジャー大隊の初代大隊長として、英陸軍のコマンド部隊の取り組みを参考としつつ、現代の米陸軍のレンジャー部隊を育成し始めました。
ダルビーが育成したレンジャー部隊の必要性は、第二次世界大戦の経験から広く承認されるようになり、朝鮮戦争では初めて米軍の空挺レンジャー部隊が実戦に投入され、ベトナム戦争では長距離偵察を実施する能力を保有するにまで成長しました。

1987年11月1日、米陸軍にレンジャー訓練旅団(Ranger Training Brigade)が設置され、小規模な地上部隊の戦術の研究と教育を専門とするレンジャー学校が開かれます。ここでは刊行物としてレンジャーの教範が発表されているのですが、その教範の表紙にはロジャースの次の言葉が記されています。
「触れることができるほど近くまで敵をおびき寄せよ。そして、おびき寄せた敵を飛び上がらせた後に、お前の斧で止めをさすのだ」
このロジャーズの言葉はレンジャーの戦術の特徴を巧みに要約したものと言えるでしょう。
隠密裏に行動し、奇襲を仕掛け、反撃の暇もなく敵を仕留めるためのレンジャーの戦闘能力は、現代の戦争においてもその威力を失ってはいません。

KT

参考文献
Bracken, Kyle P. 2013. "Rangers," Piehler, G. K., ed. Encyclopedia of Military Science, London: Sage, 3 vol. pp. 1174-1175.
U.S. Army Infantry School, Ranger Training Brigade. 2011. Ranger Handbook, Fort Benning: U.S. Army.

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