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2015年5月29日金曜日

武器の威力を数値化する方法


戦争を理解するためには、武器の威力を考察することが不可欠です。
文明は長い時間をかけてその時代、その地域に応じた武器を開発し、軍備の中心に据えてきました。しかし、その威力を定量的に考察する方法が考案されるようになったのはごく最近のことです。

今回は、1970年代にデュピュイ(Trevor N. Dupuy)が考案した理論致死指数(theoretical lethality index)という概念を説明し、いくつかの武器の威力を数値的に比較してみたいと思います。

まず理論致死指数は、小銃から核弾頭に至るまで、さまざまな武器の威力を評価する指数であり、特に火力が判断基準になっている指数だと考えて下さい。理論致死指数の計算式は次の通りです。
理論致死指数=射撃速度×威力範囲×殺傷効果×射程要因×正確性×信頼性
・射撃速度 1時間にその武器で連続して射撃が可能な回数(小銃の性能を扱う場合は400発/1分×2で求めます)

・威力範囲 一度の射撃で危害を加えることが可能な人数(これは榴弾砲のよう場合に特に重要な変数です。小銃の場合は1と置きます。)

・殺傷効果 命中した場合の死亡率(小銃の場合は0.8と置きます)

・射程要因 有効射程(メートル単位)を基本とする場合には=1+(√0.001×有効射程)(有効射程が不明の場合は初速と口径から推計する方法を用いますがまた別の計算式になります)

・正確性 その武器が本来の機能を果たした場合に目標に命中する確率(小銃射撃の場合は0.8を置く場合が多いですが、銃の特性により±0.1と修正してもよいと思います。ここは分析者の定性的判断によります)

・信頼性 その武器が本来の機能を果たす確率(この部分は故障率と関係しています。小銃の場合、おおむね0.8を最高値とします)

この計算式を使って、いくつかの小銃の理論致死指数を比較してみましょう。

まず現在の自衛隊の最新式の小銃である89式小銃の致死指数を計算すると、およそ1321と分かります。(以下の計算結果はいずれも四捨五入済み)
64式小銃で同様の計算をしてみると計算結果は791であり、89式が小銃としてより優れていることが分かります。

別の国の小銃に分析の対象を広げてみると、日本の国産小銃の相対的な威力がよりよく分かります。

1947年に配備されたソ連のAK47を見ると致死指数は866であり、64式小銃のほうが後発であるにもかかわらず、依然として技術的には優れていたことが分かります。
しかし、64式小銃はAK47と同一の口径であり、しかも銃口初速で見れば64式小銃のほうが優れています。なぜこのような分析結果になるのかを調べてみると、射撃速度で両者に差がついていることが分かりました。(AK47は最大で600発/毎分、64式は最大で500発/毎分)

次に1960年に配備された米国のM16についても評価してみると、この小銃の致死指数は1344となります。やはり後発である89式小銃よりも、わずかに上回っていることが分かります。
ちなみに、その後に米軍で導入されたM16A1の指数は1483ですので、やはり89式小銃よりも高い指数となっています。

分析してみるとM16の性能で特に重要な要素は射撃速度のように思われます。口径を小さくすると致死指数も低下してしまうのですが、その点については初速を高めることで有効射程を高い水準で保っています。

こうした計算の興味深いところは、歴史上の武器と現代の武器の性能を比較する際にも利用することができる点です。
例えば、1897年に日本陸軍に配備された三十年式歩兵小銃の致死指数は191ですが、1895年に配備されたリー・エンフィールド小銃は221であり、日本と英国の間の小銃の性能には依然として格差があったことが示唆されています。

また、中世から近世にかけて英国で使用されたロングボウとクロスボウの性能を比較してみたいと思います。
ロングボウは射撃速度55発/1時間、威力範囲1名、殺傷能力0.5、有効射程200メートル、正確性0.9、信頼性0.9と想定すると、その理論致死指数は32です。
クロスボウを見てみると射撃速度50、威力範囲1名、殺傷能力、0.5、有効射程230、正確性0.9、信頼性0.9で計算すると、理論致死指数は29に低下しています。
有効射程が多少延伸しても、射撃速度が低下すると技術革新の結果、かえって火力が低下する一例だと言えるでしょう。

もちろん、これらの数値は武器の一面的な評価に過ぎません。
それぞれの武器にはその用途に応じた比較の方法があるので、あくまでもここで取り上げたのは主要な性能を定量化する一つの試み程度のものだと考えればよいと思います。

武器に関する知識は複雑で膨大ですが、こうした評価を用いれば、武器に触れたことがない人々に分かりやすくその武器の威力を説明することができると思います。

KT

補足記事を発表しました。補足 武器の威力を定量的に評価する意義と限界

参考文献
Historical Evaluation and Research Organization. 1964. Historical Trends Related to Weapon Lethality, U.S. Army AD 458 760-3. Washington, D.C.

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