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2015年2月25日水曜日

モーゲンソーが考える国際政治と軍事力

政治学者モーゲンソーは現代の国際関係論の発展に寄与した研究者です。彼は国際法、国際連合、外交などについて数多くの考察を書き残していますが、今回は軍事力をどのように考えていたのかを紹介してみたいと思います。

モーゲンソーの考察では、国家の相対的な勢力関係の優劣から国際関係のパターンを説明することができると考えられています。その理論では軍事力に大きな重要性があることが前提とされています。
「地理、天然資源、工業力などの諸要因が、国家の力にとって実際上の重要性をもっているのは、これらの要因が軍備に関係があるからである。国力が軍備に依存しているということは、あまりにも明白であるので、詳しく論じる必要もなかろう」(モーゲンソー、1998年、129頁)
モーゲンソーは、このように述べることで、軍事力が国際関係における国力の水準を決定する一因であることを強調しました。
まず軍事力の規模の問題について次のような記述が見られます。
「軍事的諸条件からみた国家の力はまた、兵士及び兵器の量と、軍事編成のいろいろな部門間におけるこれら兵士・兵器の配分状況にも依存している」(同上、132頁)
軍事行動の成否は、軍事力の規模ではなく、その効率によって決定されるという考え方もありますが、モーゲンソーはそうした見解をとっていません。高い効率を発揮しながらも人的、物的基盤がわずかな軍事力は脆弱であることが考えられるためです。
「国家は戦争行為の技術革新に対して優れた理解力をもっているかもしれない。国家の軍事指導者は、新しい戦争技術に適した戦略と戦術をたてるのにすぐれているかもしれない。 
だがそうした国家も、もしその全体的な強さとそれを構成する各部分の強さにおいて大きすぎも小さすぎもしない適正規模―それは国家が遂行すべき任務と言う観点からみての話であるが―の軍事編成を整えていないならば、軍事的にしたがって政治的にももろいということになるであろう」(同上、132頁)
当然のことながら、軍事力は適正な規模を整備するだけでは十分ではありません。
モーゲンソーの学説では、軍事技術と軍事的リーダーシップが軍事力の水準を決定すると述べられていますが、ここでは軍事技術の影響に関する記述を見てみたいと思います。
「国家と文明の運命は、しばしば劣勢国が他の方法では埋め合わせることのできない戦争技術の格差によって左右されてきた。ヨーロッパは、15世紀から19世紀にかけての勢力拡張期に、西半球、アフリカ、近東、極東などのそれよりも優れた戦争技術の手段を用いることによって力を行使した。 
14世紀および15世紀に伝統兵器に加えて歩兵、火器、大砲が使われだしたことによって、力の配分において重大な変化が生じたが、敵より早くそれらの兵器を使用した方が有利となった。騎兵と城―これは、その当時までは相手側の直接攻撃から実際上免れていた―に頼りつづけていた封建領主や自由都市は、これらの新兵器がでてきたことによって、いまやその優越的地位が突然にくつがえされたことに気付いたのである」(同上、129-130)
ここでモーゲンソーが言及したのは、軍事史の研究で「軍事革命」と呼ばれる出来事で、戦場での火器の大規模かつ体系的な導入のことです。
中世から近世にかけて軍事技術のトレンドが白兵戦闘から火力戦闘に変化すると、それまでの国際関係における封建領主や都市市民の政治的自律性が大いに損なわれ、そのことが近代という時代の転換を可能にしたという歴史があります。

モーゲンソーの議論が私たちに示していることは、軍事力は国際関係論における重要な論点として真剣に研究する必要があるということであり、しかも単に軍事力が国際関係に与える効果だけを考えるだけでは不十分であることも示唆されています。
なぜなら、軍事技術の歴史からも分かるように、軍事力それ自体が非常に複雑な研究対象であり、それを理解するためには軍事について踏み込んだ研究が求められるためです。

結論としては、国際関係論の文献ではしばしば軍事力についての議論は避けられるか、それとも簡単に済ませられてしまいがちですが、モーゲンソーが軍事力についてかなり踏み込んだ議論を展開していることを考慮しなければなりません。

国際政治を理解するために軍事を知ることができれば、それが勢力均衡、そしてひいては戦争、同盟、国際法、国際組織、そして平和を考察するための確固とした基礎として役立てることができます。

KT

参考文献
モーゲンソー『国際政治 権力と平和』現代平和研究会訳、福村出版、1998年

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