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2015年1月5日月曜日

日本の安全保障におけるエアパワーの重要性


近代以後の戦争に見られる決定的変化の一つはエアパワーが登場したことです。

今回はミッチェルの議論を中心に、エアパワーが戦略に及ぼした影響を概観し、日本の防衛とどのように関連するかを述べたいと思います。

エアパワーとは「空中で何かを実施することができる能力と定義できるかもしれない。エアパワーは航空機によってあらゆる種類のものをある場所から別の場所に輸送することである」と定義されています(Mitchell 1925: 35)。

エアパワーはその高い運動性を発揮することで、前線の部隊、後方の基地、または両者を結ぶ連絡線に打撃を与えることが可能です。
特に敵の中核地域である首都圏に対して戦略爆撃が成功すれば、戦争の継続それ自体を断念させることも可能だという考えもあります。

もちろん、これは敵の航空勢力を撃滅した後にはじめて可能となる戦略ですが、一度でも航空優勢を確保することができれば、「国家に対する空の包囲により、水上、鉄道、道路を利用して出入国するあらゆる連絡は阻止されるだろう。例えば、生存のため外部と連絡に完全に依存する島国では航空封鎖により短期間で飢餓に陥り、降伏するだろう」と期待されています(Mitchell 1925: 5)。

ここで指摘されている通り、エアパワーが安全保障にとって重要な役割を果たすのは大陸の国家ではなく、むしろ島国だと考えられています。
その理由として島嶼国家の防衛と経済はいずれも海上交通路に大きく依存しているのですが、それらは航空戦力に対して極端に脆弱であることが挙げられます。

恐らく、海洋に囲まれた国家は航空戦力の脅威に対して特に脆弱であるという議論はあまり知られていないのではないかと思います。
日本の安全保障についての議論では、日本は海洋国家であるという前提から、海上勢力の重要性が論じられることもあるのですが、ミッチェルの見解はこの点について批判的です。
「将来、海洋で隔てられている二つの国が戦争をする場合、すべての海上交通路には、敵の潜水艦によって機雷が敷設されるであろう」(源田 2006:141)
「今日の水上艦艇は兵員輸送のためだけに使用されるのであり、また航空母艦は敵国の海岸まで航空機を輸送し、発信させるためだけに行動するのである」(Ibid.: 142)
ミッチェルの見解には確かに論駁の余地もあるのですが、太平洋で通商破壊と航空打撃戦が海上戦闘の重要な局面として浮上することがまだ不明だった1925年に発表された事情を考えれば、洞察力に富んだ分析でした。

ミッチェルが強調したことは、海上戦力の形態が航空戦力の出現により変化を余儀なくされたことを無視したまま海軍の戦略を考察してはいけないという点です。
特に島嶼国家の経済システムを支える交通網が航空戦力で容易に破壊されることを考慮すれば、海洋国家であったとしても安全保障政策の重点を海上戦力から航空戦力に切り替えることも必要であるということです。

エアパワーについては統合運用の観点からまだ論じるべき問題はあるのですが、要約すると、エアパワーの重要性は大陸国家よりも島嶼国家の方が大きく、それは単に海上優勢の喪失につながるだけでなく、陸上戦力の移動を大きく妨げることが言えます。

今年1月は三菱重工業が先進技術実証機の初飛行も予定されており、日本の航空産業にとってみても大きな節目となる年でもありますが、これは日本国民としてエアパワーの重要性を議論する良い機会ではないかと思います。

参考文献
Mitchell, W. 1925. Winged Defense: The Development and Possibilities of Modern Air Power-Economic and Military, New York: Penguin's Sons.(「空軍による防衛、近代エア・パワーの可能性と発展 経済と軍事」、源田孝編著『戦略論体系11 ミッチェル』、芙蓉書房出版、2006年、13-232頁)

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